21 銀髪の女の子(2)
「あのっ!説明!説明するから、それ、隠してくれるかな!?」
と、真っ赤になりながら真横を向く。
流石にこの状態はパンチ力が激しい。
女の子は、
「ん?」
と言うだけで、動こうとはしなかった。
あ、服!服がないと困るよな。
紙袋から、買ってきた服を取り出し、横を向いたままベッドへにじり寄り、服を置く。
「これは……?」
「それ、君用に買ってきたものだから。ちゃんと綺麗だから。それ、着てもらえるかな」
「……私のために」
「そう!」
正直、裸の女の子と話していると思うと冷や汗が出る。
見ないよう、後ろを向いて床の上で正座した。
背後で、ゴソゴソと衣擦れの音がする。
これを着ても下着はつけていない、靴は履いてないなんて事は考えない様にしないといけない。
考えない考えない考えない考えない。
そうだ。
白いワンピースだけだとどんな風に……。
考えない考えない考えない考えない。
音が静まった頃、声をかける。
「着れた?」
すると、後ろから、
「うん」
と可愛らしい声がした。
くるりと振り向く。
そこには、頭ひとつ分背の低い、思った以上に可愛らしい女の子がいた。
銀髪の先は、妙にピコピコしている。少し変わった癖っ毛の持ち主だ。
間近で見ると、青い瞳がよく映える。
ふわりと軽いのに、どこか力強さのある笑顔。
「え、と……」
そう、こういう時は。
「似合ってるよ」
慣れない褒め言葉を口にした。
「ありがとう」
見惚れても仕方ないと思えるくらいに美少女だった。
「あっ……、でも私、お金……」
女の子が、困った様に身体中を見渡す。
まあ、そりゃあ無いだろう。
あの格好でお金持ってますなんて言われる方が、一体何処に!?と不審に思うというものだ。
「いいよ別に、これくらい」
いいもの見せて貰ったしな。
さっきのベッドの上での女の子の姿を思い出しながらそう思う。
「ありがとう。大事にするね」
女の子は、目を潤ませながら、服を掴んだ。まるで、抱きしめるみたいに。
……こんなに喜んでもらえるなら、もっとお金出してもよかったかもな。
そして、ハッとして、取り繕うように会話を続ける。
「君、さ。ダンジョンの石の箱の中に入って眠ってたんだ。大きな倉庫みたいな洞窟のダンジョンなんだけど、記憶にある?」
「えっと……」
記憶が混濁しているのか、考えながら女の子が口を開いた。
「誰かに捕まったところまでは、覚えてる。それからずっと、狭くて、暗くて、苦しくて」
「苦しい?」
「息が、出来なくて」
そうか、そんな狭いところだと、酸欠にもなるよな。
「そこからは、わかんない」
途方に暮れた瞳が、ユキナリを覗いた。
つまり、誘拐されてあの中に入れられたって事か。
“ずっと”なんていう言葉を使うくらいだから、この町から遠く離れた所で誘拐されていても不思議はない。
「ここは、ローパの町。聞き覚えは?」
尋ねると、女の子は黙って首を横に振る。
家が遠いかもしれない、無一文の女の子、か。
大変な事になりそう、か?
それでも、ここで放り出すわけにもいかなかった。
「帰らないと……」
と少し青ざめた様子で女の子が呟く。
これはもう、しばらく一緒にいる覚悟をしないといけないかもしれないな。
……この子が嫌がらない場合に限るけど。
「とりあえず、今サンドイッチしかないんだけど、よかったら食べなよ。無理ならお粥でも貰ってくるけど」
小さな丸テーブルの皿を示す。
「ありがとうっ」
嬉しそうな顔でそう言うと、女の子は、ガバッと一気に着ていた服を脱いだ。
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また、ぽよん、と胸が飛び出す。
素っ裸に逆戻りだった。
「は!?」
ヒロインがやっと服を……………………着てないな!?