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静かにしろよ、ハニー・トラップ!  作者: 大天使ミコエル


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209/230

209 ゴーレムを追って(1)

 ゴーレムの道は、あり得ないほど真っ直ぐだった。

 山があっても。川があっても。

 目的の場所へ行く為には、これ以外の道はあり得ないとでも言うように。


 その時点で、嫌な予感はした。


 けれど、目的地がそれほど首都から近いわけはなく、この国には人や魔物が点在して暮らしていた。


「…………」


 ゴーレムまでもう一息というところで、その匂いを感じ、誰もが口を閉ざした。

 物が焼ける匂い。肉が焼ける匂い。

 ゾッとする。


 案の定、ゴーレム達は、人家があっても町があっても、何があってもそのまま突き進んでいるのだ。

 どうにも出来なかった者達が、踏み潰され、焼かれ、大変な惨状になっていた。


「こんなの……いけません」

 口を開いたのはイリスだった。

 ゴーレムの群れを見据えている。

 震えているのか……。

「あれでも……」

 震える声。泣きそうな声だった。

「あれでもあのゴーレム達は、イリスの弟達なんです。全く違う存在だなんて思えません。会話なんて出来なくても。意識なんて無くても。あれは、イリスの弟達なんです」


「そうだよな……」


 そこまでは考えてやれなかったな……。


 ユキナリは立ち上がる。

「じゃあ、止めに行くか」

 短剣を手に取る。


「はい」

 イリスが、足場の速度を速めた。


 ゴーレムの集団の前へ出る。


「全てを守る土の精霊モスよ。分厚い壁を作ってくれ」


 短剣が青く光る。


「けど、どうしますか?イリスの力でもあの数十は居るゴーレムを壊すのは……」


「すぐに壊す必要はない。今は、足留めだけしておく」


 幸い、町らしい町を抜けた先に待っているのは、広い岩場だった。

 ゴーレムは真っ直ぐに歩く。

 何があっても、きっと迂回はしないだろう。


「あそこに穴をあけよう」

「穴、ですか」

「そうだ。出来るだけ深いやつをな。イリス、出来るか?」


「はい。イリスにやらせてください」


 決意の声だ。


 ユキナリは、サポートできるように短剣を構えておく。


 ドン……!


 それはそれは、大きな音だった。

 ただ、土も岩も抉られ、奈落に落ちてしまうのではないかと思えるほど大きな穴だった。


「え…………」


 魔法を使った勢いでイリスが地面に転がる。

 それを助ける為その穴の縁に降り立ったユキナリだったが、あまりに予想外とも言える大きな穴の存在に、言葉をなくしてしまった。

 浮かんでいる足場の上では、マルが目を輝かせ、トカゲの口は驚きで四角くなった。


「すごいな……」


 そんな大穴を開けたイリス自身も、その穴の大きさに驚いたらしかった。


「はい。イリスも……すごいと思います」




 予想通りだった。

 あまりに予想通りすぎて、悲しみまでが頭をもたげた。


 考える力を持たない、命令された事のみを遂行するよう作られたゴーレム達は、イリスの作った大穴に当たり前のように飲み込まれていった。

 飲み込まれたゴーレム達は、その穴から姿を現す事はなかった。


 イリスは、悲しみに暮れていた。


 弟達を弟達のために、死に追いやらねばならなかった。


 全てを見送ったあと、イリスはそっと呟いた。


「……居ませんでしたね」


 そう。

 居なかったのだ。

 魔女らしきあの少女も。

 ハニトラを踏み潰したあの巨大なゴーレムも。

さて。ある程度は片付いたでしょうか。ラストへGOGO!

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