199 魔女退治(3)
ナーナが女王になった。
衣装はそのまま。ただ、女王の証として、頭に小さな冠をかぶる。
審査員にしては小さな少年から、ナーナは頭を下げ、冠を被せてもらう。
それは、土、水、火、風の四属性の装飾が付いた金の冠だった。
冠を被ったナーナに、
「うおおおおおおおおお!!!!」
という大歓声が起こる。
それは、どの属性かなど関係なく、全ての人間が全ての幸せを願う歓声だった。
輝く月や星は、この祭りを祝福しているように見えた。
空気は涼しくなっていたとはいえ、暑すぎず寒すぎず、酒を酌み交わす夜としては最適な夜だった。
夜、日付が変わる頃。
女王を中心に祭りは始まる。
朝になれば、精霊達が教会に篭り、壁を補強する。
そういう祭りに、なるはずだった。
最初にそれに気付いたのは、土属性の教会だった。
土の地域が、騒がしくなった。
「大変だ!」
「みんな、話を聞け!」
「逃げろ!」
それは、祭りの騒ぎとは程遠い、悪い空気を帯びていた。
「…………なんだ?」
「まさか……魔女が……?」
信じられないけれど、サラが『魔女は祭りを楽しみにしている』という情報を口にした時から、ユキナリ達はみんな、そんな事が起こるのを予感していた。
そんな事、起こって欲しくない。起こるべきじゃない。起こるわけがない。と、心の中で言い聞かせながら、みんなどこか心の中で、『魔女』という言葉を忘れられずにいたのだ。
緊急事態を悟ったユキナリ一行は、それぞれ戦闘態勢を取る。
「ナーナ!」
サラが叫ぶ。
ナーナは魔女に捕えられていた事がある。
命を狙われるとしたら、ナーナだろうと予想がついた。
「ナーナを守るわ!」
叫んだサラを抱き抱え、ルヴァが飛び上がる。
「ナーナ!」
サラが、ナーナに手を差し伸べ、そばに降り立つ。
周りは、むやみやたらに大騒ぎだった。
「教会が倒れたらしい」
「橋が落ちたんだ」
「馬車が燃えてる」
憶測と想像が飛び交い、どれを信じていいのかわからない。
土の教会に続き、ドッと騒ぎになったのは風の教会だった。
「……大軍が、この街にやってきているらしい」
風の声を聞いたルヴァが、サラに呟いた。
「魔女……なの……?」
「……だろうな」
ユキナリ一行は、ルヴァとサラがナーナにたどり着いた事を確認すると、一つに固まった。
イリスの魔法で、全員分の丸く作られた足場が浮き上がる。
「全てを巻き込む風の精霊ルヴァよ、俺に力を貸してくれ……!」
ユキナリの風の力を使い、イリスが作った足場はポンと上へ浮き上がる。
「どっちだ……?」
街は、大混乱を極めていた。
誰もが異変に気づき、何処かへ逃げようとする者、泣き叫ぶ者、動けなくなった者、様々だった。
風の教会の次に動いたのは水の教会だ。
ウンダが運んでいると思しき水の塊が、あちらこちらへ動き回り、皆を誘導しようとしていた。
最後に、動いたのは火の教会だった。
敵を探りにいくように、首都から炎の道が走った。
ユキナリ達一行は、火が走る先を見据えた。
「あの先に……魔女が居るっていうのか……?」
さて、次回は魔女が登場するのでしょうか……。