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187 魔女の行く先(2)

 鬱蒼とした森の中に潜んだ。

 火を起こすのも躊躇ったけれど、サラが煙を出さずに肉を焼いてくれたので、困る事はなかった。


 夜中もあまりよくは眠れず、森の中で、裸のハニトラとマルと3人で、じっと先を見据え座っていた。


 いいかげん、ぼんやりとした気持ちだけでは、どうにもならない事に気付いていた。


 近付いてくる足音に耳を澄ます。


 目の前に、炎が近付いてくる。


 サラ。


 この世界の火の精霊だ。


 衣装は同じ。さっきまで一緒に居たはずなのに、サラの表情は、初めて会ったみたいだった。

 透き通るような、自分が貫かれるような、透明な目。


「心は決まったようね」


 何処からともなく、声が聞こえた。

 確かにそれは目の前のサラから聞こえるのに、音は森の中に響いて、不思議な音に聞こえた。

 それは、脳に直接響いているような、それでいてどこか遠くで鳴っているような音だった。


 サラは静かだった。


 それは炎のように。


 静かで、それなのに存在感があった。

 少し動けば、全てを飲み尽くす予感がある。

 まさに炎。


 一瞬、何を言われているのか分からずに戸惑う。

 けれど、それは今、俺が考えている事なのだと思い当たった。


 立ち上がり、正面を向く。


「ああ」


 両脇にいる二人に視線をやる。

 そのただならぬ雰囲気に、二人とも押し黙ってしまっていた。


「俺はもう、呪いを解いてもらおうなんて生ぬるいことは言わない」


 サラが、にこやかに笑う。


「魔女を殺す」


 ハニトラとマルがハッとする。


 無理だと悟っていた。

 対話で呪いを解いてもらって、自分の世界へ戻してもらおうなんて。

 魔女の話を聞き、魔女の匂いのするところまでやって来て、やっとそう言う事が出来た。


 そんな気楽な冒険ではないと知っていたはずだけれど、出来るだけそんな考えから逃げたかったのは本当だ。

 人を殺そうなんて、思うだけでもゾッとする。

 それが、どれだけ人を殺して来た者であっても、だ。


 少なくとも、俺が暮らして来た世界はそうだったから。


「うん」

 ハニトラが、決心した目を見せた。

 マルは、少し怯えた目をしていた。

 ハニトラは思い切りがいい。マルは威勢はいいが、怖がりなところがある。


 それでも、言わなければいけない事は同じだった。


「二人とも」


 改めて、二人に向き合う。


「最後まで、俺について来てくれないか」


 ハニトラの瞳が、強い光を帯びて潤む。

 マルは、ハッとした顔をした。


「もちろん」

 右手に、ハニトラが左手を繋ぐ。


「連れて行ってくださいますのね」

 左手に、マルの肉球が乗る。


 最後に、サラがユキナリの腰に手を回す。

「あなたは私を助けに来てくれた。私はあなたを信じることにしたわ。この炎で、世界を燃やして、ユキナリ」


「ああ、よろしくな」

何より、ルヴァが風の力を与えた事がサラの中で大きな事なはずです。

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― 新着の感想 ―
サラ「まずは遠赤外線で肉を焼く練習よ!」 ユキナリ「煙も炎もあがりまくりなんだが?!」 サラ「向かい合わせの掌の真ん中あたりに、熱が集中する部分ができるって想像してみて」 ユキナリ「……!(キュイイイ…
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