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180 突然のつむじ風(4)

「さすがルヴァ様、だろ?」


 ルヴァが馬車の端を蹴り外へ飛び出す。

「!?」


 一瞬、飛び降りたのかとヒヤヒヤした。

 しかし相手は風の精霊。そんなわけはない。

 風の精霊はすぐに馬車の外から顔を出した。


 浮いてる……?


 いや、ルヴァは飛んでいるんだ。

 後ろ向きに、馬車と同じ速度で。


 驚いていると、ルヴァは手で“こっちへ来いよ”と合図をする。


「いや、俺人間だし」


「さすがルヴァ様、だろ?」


 ルヴァは、もう一度、そのセリフを口にした。

 つまり、俺も風の力を使えって事だ。


 短剣を、構える。


 外を眺める。


 ふと、流れていく地面と、思った以上に綺麗に動いているハネツキオオトカゲの足が見えた。


 いや。

 いやいやいや。これは馬車に轢かれる。

 じゃなくても、放り出されただけで、大怪我でもしそうじゃないか。


「ルヴァ?」


 つい、『本当にこれをするのか?』の意味で疑問系になる。


 ルヴァが、ぐるりと逆さまからユキナリの顔を覗いた。

「なんだよ、その呼びかけじゃ、風は応えないぞ。風に乗れ、ユキナリ」


「風に?」


 言いながら思う。

 だよなぁ、やっぱそういう意味だよなぁ。


「ユキナリ」

 ルヴァの顔が真剣になった。

「お前の行く場所はそっちじゃない」


「え?」

 地面から顔をあげる。

 ルヴァは、ぐるりと一回転してみせた。あるで、あの空を指し示すように。


「お前が行くのは、あの空だろ?行くべき場所を見ろ」


 ああ、そうか。

 下ばかり見ているから、下へ落ちてしまうんだ。


「ああ……。俺が行くべき場所は、上だ」


 空を見る。

 青い空が見えた。

 真っ白な雲が浮かんだ、晴れた空だった。


「風に乗れ」


「ああ。全てを見下ろす風の精霊ルヴァ」


 短剣が青く光る。風の壁が現れる。

 ルヴァがニヤリとする。

「いいねぇ」


 短剣を手放す事がないように、強く握りしめた。


「俺を空へ、連れて行け」


 ドウッ…………!!


 凄まじい風が巻き起こる。

 風に乗っている、というより風に押し流されていると言ったほうがずっと近い。


「うわわわわわわわわ」


「ユキナリ……!」

 ハニトラが、慌ててユキナリが飛んでいった空を眺めた。


 ユキナリは、かろうじて馬車から離れずにいるものの、あっちへこっちへと空中を飛び回った。

 ルヴァは、すっ飛んでいくユキナリを眺め、ニヤニヤと頷く。

「練習してコントロール出来るようにならないとな」


「じゃあ、風の威力が強いのって……、コントロールできなくて暴発してるって事なのか?」


「それもある」


 ユキナリは、コントロールを気にかけながら念じてみる。

 ゴウッと押し流されるのと、ふわりと空中で止まるのを何度か繰り返し、なんとかゆったりと止まるようになっていった。


「キュ〜イ!」

 ハネツキオオトカゲが興奮するように甲高く鳴いた。

風の威力は凄まじいものです。練習はまだ必要ですが、使い勝手は良さそうなのが風ですね。

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