171 初デートってやつ(2)
店内では、煌びやかなガラスケースの中に、商品がめいっぱい詰まっていた。
キャンディ、クッキー、チョコレート。マカロンの様に丸いお菓子や、鈴カステラの様な焼き菓子も詰まっている。
店の半分はどうやらカフェになっているようだ。
思っていたよりは女子っぽさは薄く、男性のみの客もちらほらと見かける。
沢山のお菓子に囲まれ、ニコニコしているハニトラを見る。
デート、なんだから、ここはやっぱりカフェでお茶した方がいいのか?
「あ、ハニトラ?」
「ん?」
あれとそれと、と既に山の様な注文を始めていたハニトラに声をかける。
「カフェの方でちょっとお茶していくか?」
……思ったより、緊張するな、これ。
ハニトラが、キョトン、とカフェの方を見る。
「うん」
と、悪くない返事が返ってきたので、二人でお茶にする事にした。
目の前には、紅茶と、ハニトラが追加で買ったクッキーやチョコレート。それに、カフェ限定のカップケーキがある。
カップケーキの上には、オシャレにもオレンジらしき柑橘系の果物が乗っているものやら、イチゴらしき果物が飾られているものやら、多種多様に数種類ある。
「かわいい」
ハニトラが、ニコニコとしながら、カップケーキを眺めた。
大きな窓から入ってくる陽の光に照らされたハニトラは、毛の先から爪の先まで、儚さと有り余る元気さとが同居する笑顔を見せる。
なめらかな滑りそうなまつ毛が揺れ、
「これ、食べていい?」
少し紅潮した顔で尋ねて来る。
「いいよ」
と返事をすると、遠慮なしに一気に2個3個。
その姿があまりにも面白くて、「ふふっ」とつい笑ってしまう。
ハニトラは、「ん?」という顔をしながらも、4つ目を口に入れる動作を止める事はしない。
よく食べる、な。
ここに誘ったの、失敗じゃないよな?反応良さそうだし。
とはいえ、こういう時、何を話せばいいんだ?
ハニトラと改めて話す事なんてないぞ?
デート、デート……。デートとは?
悶々としていると、ハニトラが怪訝な顔を見せる。
「食べないの?」
「あ、ああ」
それもそうだとカップケーキに手を伸ばす。
確かに甘すぎないカップケーキは舌触りも良く、いくつでもいけそうだ。
お茶をクピクピと飲むと、ハニトラの碧い瞳がこちらを向いていた。
ドキリとする。
これは、恋愛的なドキドキではなくて、驚いた時のドッキリだ。
なぜならハニトラの目が、こちらの顔を窺う時の目だったから。
「……どした?」
「今日のユキナリ、ちょっと変」
「え、そかな」
なんて言いつつ、どこか緊張している事には自分でも気がついている。
「面白い話とか、なくてさ」
つい、考えてしまうんだ。
あの男の時はどうだったんだろうな、なんて。
どんな話をしながら、何時間もずっと遊んでたんだろうな、なんて。
デートはうまくいくのでしょうか。