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165 運命の出会いじゃあるまいし(4)

 そこから4時間後。

 俺達は結局、その男性の赤い屋根の家にお世話になっていた。


 窓からは、“庭”というより公園と言った方が適切なんじゃないかと思える噴水とガゼボのある“庭”が見える。

 その覗いている窓だって枠が装飾入りの金縁だし、その脇には細かい絵が描いてある皿が飾ってある。

 天井も煌びやかな金色。

 出された真っ白な皿の上の肉には、この世界ではお目にかかった事がない上品なソースがかかる。


 貴族、なんてものがこの世界にあるなら、きっとこんな生活をしてるだろう、なんて思えた。


 そしてそこの年若い主が、ハニトラと結婚したがっている。


 俺だってこんな場所に来たくはなかったが、宿を何軒回っても、一部屋すら空いている宿がなかったのだ。


 こんな大きな町なのに。

 いや、こんな大きな町だから、か。


 あと2週間ほどで祭が始まる事もあり、人はいっぱいで、宿の空き室などそうそう見つかるはずもなかった。


 数時間歩き回った後、結局マルの、

「先ほどの方のお家でいいんじゃありませんこと?歩きまわって悪目立ちするのも好ましいことではありませんもの」

 なんていう言葉で決まってしまったのだった。


 …………大丈夫、だよな?

 ハッキリと断っていたし。


 ハニトラの方をチラリと見てみるが、肉を食べたあとの皿に残ったソースがどうしても気になるらしく、指先でソースを掬おうかどうか本気で思案している。

 結婚についてどうかなんて、考えている様子もない。

 ……あの現実味の薄さで、結婚なんて、ありえないよな。


 かといって、安心していていいとも思ってない。

 あの気軽さで、「いいよ」なんて、言い出しかねないじゃないか。


 …………。


 いや、安心てなんだよ。


 安心て。




 この家の主であるリノウンと名乗る男性は、自ら俺達の部屋へ案内してくれた。

「こちらが、ユキナリさんの部屋です」

 入ってみると、食事をした部屋同様、金や銀の装飾が満載だ。

 何より、部屋の奥側に置かれたキングサイズよりも大きそうな天蓋付きベッドはかなりのものだった。


「すご……」


 その時だった。

 当たり前のように部屋に入って来ようとするハニトラを、リノウンが止めたのは。


「どうして?」

 ハニトラが肩に置かれた手を振り払う。


「それぞれの部屋をご用意していますからね。冒険者の方々はひとつの部屋で眠るのが当たり前だというのは承知しています。けれど、ここは私の自宅だ。フッ…………、ひとつの部屋に寝たからといって、金の節約にはなりませんよ」


 ハニトラが不愉快そうな顔をする。

「でも私、この人と婚約してるから」


「まさか他人の家で、お盛んにも……するわけにもいかないでしょう」


 冒険者が部屋を同じくするのは、安全の為であって金の為じゃないんだが。


 ここで口論しても仕方がないだろう。


「たまにはいいんじゃないか?また後で落ち合おう」


 ユキナリがそう言うと、ハニトラは口を思い切りへの字に曲げた。

まだしばらくリノウンとは関わりそうですね!

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