148 森の道(2)
幸いな事に、家々は厳重に鍵がかかっているでもなく、むしろ鍵などついてない家の方が多かった。
まあ、ほとんど客など入って来ないような森の事だ。村のオークしかいない状況なら、鍵など必要ないというのが現状なのだろう。
そして更に、家の中には誰も居ない事の方が多かった。もちろん、家の中に居ない事もないが、どうやら外で大勢で働いたり、洗濯や食事作りをする時間のようだ。
仕方なく、こそこそと歩いて行く。
「中心地から離れているからか、まだオークの数は少ないな」
家の陰から陰へ。
ユキナリが先頭に立ち、周りにオークがいないのを慎重に確認してから、手であとのメンバーを招く。
オークのサイズがでかい分、きっと足も速いだろう。
踏み潰されては困るのだ。
「もっとオークが大きければ、逆に見つかりづらかったかもしれないけどな」
残念ながら、目に留まりやすい大きさだ。
「オークが多くなってきた……」
ハニトラが、後ろを警戒しながら言う。
家の陰から、顔を出そうとした時だった。
ユキナリの足に、地震のような揺れが響く。
「右から、来る……!」
小さくなってやり過ごせるならいい。
けど……!
慌てて、中に誰も居ない事を確認した傍にあった扉から中に入った。
音が出ないようにしながら、馬車を押し込む。
ユキナリよりも大きな子供をやり過ごす。
子供が扉の前を通る時、ドスドスドスドス!と地面が揺れた。
「ふぅ……」
家の中を改めて見る。
そこは、どうやら台所のようだ。
といっても、テーブルですらユキナリの頭より上なものだから、どういう場所なのか把握は仕切れなかった。
ハニトラが、ぴょんぴょんとテーブルの上が見える高さまでジャンプする。
奥の方には、別の部屋へ続く扉のような物が見えた。
……外の様子を窺って、また外へ出たほうがいいだろうか。
それとも、この家の中を通るか……。
「この家に、何か使えるものでもあればな……」
なんて、一人ごちる。
その声が聞こえたらしいハニトラが、
「これはどうかな」
なんて、部屋の隅から何か持ってきた。
それは、小さな樽のようなものだった。小さな……といっても、人間が使う大きな樽より更に大きいだろうか。
食料でも保存しておくのだろう。
部屋の隅に並んでたそれは、既に使い切ったものなのだろう、蓋が開き、中は空っぽだ。
それが丁度5つ……。
ん?
「いや、これをどうするって?」
そう言うと、まさかの予想通り、ハニトラが樽を被ってみせた。
「こうやって歩くと、私達は見えないから、バレないよ!?」
「いやいやいやいや、そんなわけないだろ」
そう言ってスルーしようとしたその時だった。
奥の部屋から、オークが入ってくる。
「しま……った……!」
慌ててユキナリが、全員に樽の中へ入れとジェスチャーで伝えた。
そこに、動く樽が5つ、完成した瞬間だった。
ハニトラは、脚力がすごいわけではなく、足を刃物にして曲げ、その勢いで跳んでいます。