147 森の道(1)
気を取り直す。
ザクザクと、森の道を歩いた。
木々が立ち込める森だが、不思議な事にどこも明るい。
木漏れ日が眩しいくらいに光なのだ。
揺れる木漏れ日の中で、小さな花達がポコポコと花を咲かせている。
木々の中だというのに、多種多様な花畑のようになっており、どこか異世界の様な雰囲気を感じる。
……魔物の世界ってのは、こういうところなのか。
木もどこか、光っているというかツルツルしているというか、まるで磨き上げた様な様相で、確かにこれならアクセサリーにするにもちょうどいいと思えた。
「そういえばオークってどんな魔物なんだ?」
振り返ると、マルがまだ、俺が叫んだ事に対して眉を寄せていた。
…………もう忘れてくれ。
「えーと……、そうですわね。大きい、ですかしら」
「ゴーレムくらいか?」
「いいえ。それほどではないですわ。けれど、大きな種族の住処なのですもの戦闘向きではありませんの。隠れて進む、が基本でしてよ」
「隠れて進む、な」
言いながら、パーティーメンバーの方を眺める。
いや、この人数と馬車。隠れて歩くなんて無理じゃないか?
まあ、ゴーレムより小さいなら、なんとかなる、か?
そんな風に、呑気に構えてしまっていた。
それから程なくして、ユキナリは一つのことに気付く。
……なんだ?地面、揺れてないか?
地震?それにしては、少し長い様な……。
なんて、思った事は、すぐに原因が判明した。
目の前に広がったのは、大きな村だった。
町というには森に馴染んでいる。集落と呼ぶにはしっかりとした家が立ち過ぎている。
それは、村としか言いようのない場所だった。
家々が立ち並ぶ。
小川の様なところで、沢山のオークが洗濯をしているのが見える。
地面に木の棒で絵を描き、子供達が遊んでいる。
肉を吊った軒下では、肉を炙る七輪の様なものが置いてある。
そこでは、生活が形成されていた。
これが…………魔物……?
俺は……、魔物というものを甘く見ていたのだろうか。
まるで、ゲームの中に出てくるモンスターみたいに。
けど、そうだよな。
ハニトラやマルを盗み見る。
言葉を話せる、文字も読める。知識としても申し分ないのに、野生動物の様な暮らしばかりしているわけないじゃないか。
そしてその村の驚くべきは、何より、大きかったのである。
流石、オークとでも言うべきか。
家々はでかく、オーク達もでかい。
子供でやっと3メートルほどだろうか。大人で5メートルといったところ。
まるで、俺達が犬猫のような気分だ。
確かに横に大きくはない分、あの巨大ゴーレムほど大きくは見えないが……。
マルの奴……同じぐらい大きいじゃないか。
地震だと思ったものも、オークの足音や、子供が跳ねる時の振動……。
この村を……見つからない様に通り過ぎるのか……?
「迂回は?」
「……オーク自体が大きくて、村もそれに比例して大きいのですわ。迂回すると道を見失いますの」
なんてこった……。
さて、通り抜けるだけのミッション、うまくいくのか……?