132 5人パーティー(6)
別のグループのメンバーが、モグラをロープで縛っていく。
「終わったんだな……」
地面に残った血は、地面が吸い込んでいく。
なんだか力が抜けた。
ユキナリのパーティーは、気を失った女性を連れ、そのまま鉱山を出ることになった。
トカゲが女性を運んでくれる。
ダンジョンも、安全ばっかじゃないよな、やっぱ。
町の冒険者ギルドに女性を預ける。
「トカゲ、おまえ強いな」
労うように頭を撫でると、
「キュ〜ゥ〜!」
と、嬉しそうな声が返ってきた。
「次はもっと、開けたところで気晴らしするか」
「キュ〜ゥ〜」
ハネツキオオトカゲが喜んだ声を出した瞬間、
ボッボッボッボッボ!
トカゲの口から丸い炎が連なって出てきた。
「うっわ」
危ういところで避ける。
小さい、とはいえ、拳一つ分はある炎の塊だ。空中で消えるにしても、危険極まりない。
「き、気をつけろよなぁ」
「キュ〜ィ……」
どうやら、自分では、まだうまくコントロール出来ていないようだ。
そこで、
「お疲れ」
と、声が掛かった。
振り返ると、ダンジョンに居た冒険者の一人だ。こちらもモグラに飛び掛かっていった一人で、剣も防具も汚れている。
「お疲れ」
疲れた時の笑顔を返す。
すると、相手も疲れた笑顔になった。
「打ち上げしようぜ。あとの2グループも、モグラどうにかしたら、ここに来るだろ」
「あ〜……」
後ろを振り返る。
あまりにも、リスクが大きかった。
珍しい魔物連れ。そして、トカゲ連れ。食事をしないゴーレムに、異性から嫌われる俺ときたもんだ。
「遠慮しとくよ」
苦笑する。
「気にする事ない」
その隣に来たのは、戦闘の時に前へ出た斧の男だった。
「お前達が居なかったら、俺達も危なかった。共に窮地を乗り越えた仲だろ。変な事を言う奴は、俺が叩きのめしてやるよ」
「それは……」
後ろを振り返る。
ハニトラやマルは、お腹が空いているのか、テーブルに並べられた肉に釘付けだ。ユキナリの脇に居るトカゲも話は聞いていたはずなのに機嫌がいい。
イリスは……、
「イリスはどうだ?」
イリスは、流石に直接聞かなくては表情が読めない。
「情報収集が出来そうですし、私は大丈夫です」
「そうか」
心配事は尽きないものの、打ち上げに参加する事にした。
テーブルは、グループ毎に分かれていた。
これはこれで一安心か。
俺が……、こいつらを守らないとな。
決心する。
グループが全て集まり、打ち上げはすぐに始まった。
打ち上げに誘ってきた男が立ち上がり、
「俺達の勝利だ!」
と声をあげる。
それぞれのグループのリーダーらしき者達が、一人ずつ挨拶をしていく。
「で、ここのリーダーは誰なんだ?」
最後に、うちのパーティーが挨拶する番だ。
……メンバーの誰であっても、矢面に立たせるつもりはなかった。
「俺だ」
ユキナリが、躊躇なく立ち上がる。
緊張したのも、一瞬だった。
「なーかなかやるじゃないか!全員すごかったぞ!」
という斧の男の言葉がまるで合図だったように、ガーン!とそれぞれがジョッキを合わせ、乾杯していく。
「そうだそうだ」
「お嬢ちゃんのジャンプ!あれどーなってんだ」
「そこのハネツキオオトカゲも、すごい力だよなぁ」
そこからは我慢していたものが弾け、すっかり大騒ぎだ。
ユキナリの一行は、それぞれ顔を見合わせる。
「ふっ」
と、ユキナリはなんだか笑えてきた。
テーブルに乗りかかるようにしていたハネツキオオトカゲが、
「キュイ?」
と首を傾げる。
ハニトラ、マル、イリス、それにハネツキオオトカゲ。
なかなかいいメンバーじゃないか。
「出会えた事に感謝を」
ユキナリがジョッキを掲げると、5人でジョッキを打ち合わせた。
なかなかいい5人組だよって事で〜!