13 武器がないと始まらない(1)
宿代が一泊銅貨5枚。
とりあえず、二泊分を払って、部屋を確保する。
おかみさんの話では、翌日分の宿代を払っておいてくれれば、部屋はそのままにしておくから、という事だった。
昼食を食べに出ようと思ったけれど、おかみさんの計らいで、昼食をご馳走になる。
カウンターの奥の、どう見ても宿屋の人間が食事をする居間のようなところへ通され、ラップサンドをいただいた。
中は、人参のような野菜に、ウインナーだ。
午後も遅くなって、武器屋へ出かけた。
…………少し行ったり来たりしてみて思うけど、やっぱり冒険者ギルドのあたりは治安が悪そうだな。
長閑な田舎町の様相だったところが、ある一画を過ぎると途端に飲み屋やら武器屋やら、怪しい店が見えて来る。
そんな武器屋の中でも、『初心者歓迎!』なんていう文句の小さな看板が表に出ている、小さな武器屋を選んだ。
ショーウィンドウのようなものはないので、ちょっと緊張しながらもドアを開ける。
木製のドアは小さな鐘付きで、カランカランと音を立てた。
店内は、意外とさっぱりしていた。
想像上の武器屋っていうと、治安の悪そうな店員が、ごちゃごちゃした店内で剣だの槍だの売ってる店だ。
けれど、その店は、武器がグチャッと置いてあるなんて事はなくて、どれも綺麗に棚に飾ってあった。剣、槍、斧、盾。
小綺麗だけど、ちょっと高そうだよな。
キョロキョロと見渡すが、値札のようなものはない。
入る店間違えたな、と思い、出て行こうとしたその時。
「いらっしゃいませ〜」
とヒョロヒョロした声が店の奥から聞こえた。
仕方なく、足を止め、後ろを振り返る。
そこには、ゴツいエプロンをかけたクシャクシャの髪の男性がこちらを覗いていた。
「え、と」
何か言おうとすると、その男性は慌てたように、
「何かご入用でしょうか?」
とカウンターの裏から出てきた。
「あ、冒険者になりたてで、何か武器が欲しくて」
「なるほどなるほど。専用の武器はありますか?」
「それが……何もかも初めてで」
「お〜」
店員さんは、嫌な顔ひとつせず、武器と俺を交互に眺めた。
何かの寸法を測っているのか、手を空中に差し出して、指で何か測っている様子だ。
「剣なんてどうでしょう?これなんてオススメなんですが」
と、店員さんが、細身の剣を出してくる。
受け取ると、スッと持ち上げられるほど軽かった。
「す……ご…………」
手に馴染む。
確かにこの剣なら、俺でも振るえる気がする。
ここで、これください、なんて言えたら楽なのだが。
ここで言える事は一つしかない。
「これ……いくらですか?」
すると、にっこりとした店員さんが言う。
「金貨、1枚です」
あ〜〜〜〜〜〜………………。
なるほどね。
なるほどなるほど。
弓は鍛冶屋さんではなく、弓作り専門の職人が作るので、ここには置いてありません。