123 想いは形にして(3)
そんなわけで、4人で前に立った屋敷は、思った以上に大きな石がゴロゴロとした屋敷だった。
門の入口に、申し訳程度に『ジャンの工房』と書かれた看板がかかっている。
ちょっとした豪邸だと思える屋敷ではあるのだが、数ヶ月手入れをしていないらしき庭は、この頃の暖かさで深い茂みとなり、モンスターが出てきてもおかしくない様な場所になっていた。
そして、その茂みが生い茂っている中に、未完成だったり割れていたりする石像が所々に転がっている。その数、数十といったところだろうか。
「ここ……だよな」
疑ってかかってしまうが、看板に『ジャン』と書いてある以上、疑いようがない。
門は開いておらず、かと言って鍵がかかっているわけでもない。インターホンの類があるわけでもないから……。
ここは、手で開けて勝手に入っていけってことか?
ギ、ギギ……。
一体どれだけ手入れしていないのか、門は少し歪んでいるようで、動かすと嫌な音を立てた。
「すみませーん」
声をかける。
あの、屋敷の扉に入っていってしまっていいのだろうか。
そこまでの間に石像がゴロゴロと転がっているのが少し怖い。
かろうじて石像は左右に分けられているから、なんとか間を縫って屋敷まで行く事は可能のようだけれど。
「仕方ない、行くか」
そこで、
「はい」
と意思表示をしたのは、意外にもイリスだった。
いつもは黙り込んでいることが多かった。
今回ばかりは、イリスも気になるということか。
……これで、全く手掛かりがなかったら……イリスは大丈夫なんだろうか、なんて、余計な心配をして。
4人で門をくぐった。
石畳の通路は、隙間から雑草が飛び出し所々割れて、穴があいている。
慎重に歩いている間に、通り過ぎていく石像を眺める。
まるで、それは人間のようだった。
流れるような長い髪。
ワンピースのような服。
キリリとした顔。
そして気付く。
「これ……どれも同じ人間の石像なんだな」
そこで、石像を逐一見上げ、同じように気付いたイリスが、同意の言葉を口にした。
「そうですね。どれも同じ女性です」
つまり、そのジャンって奴は、この女性が上手く作れず、引きこもってるってワケか。
こんな所に一人で。
近付けば、曇ったいくつもの窓と、荒れた煉瓦の外壁が見えた。
あの窓から見る景色は、一体どのようなものなのだろう。
「すみませーん!」
声量を上げ、声を掛ける。
けれど、何度声を掛けても一向に誰も出てくる気配のない静まり返りようで、痺れを切らしたユキナリは、恐る恐る玄関の扉に手を掛けた。
ギギ……。
扉には、鍵はかかっていなかった。
店舗であろう広い空間には、灯りひとつ、灯ってはいなかった。
イリスもかわいいですよね!