12 冒険者ギルド(3)
「では、登録料銀貨5枚となります」
と、ダニエルが笑顔を向ける。
銀貨、か。
神官からは、かなり重いお金の袋をもらった。
銀貨が8枚に銅貨が20枚。
そこから、馬車に乗るのに銅貨が4枚。冒険者登録に銀貨が5枚。
残りは、銀貨が3枚に銅貨が16枚。
それがどれだけの価値のものかはわからないけれど、それがそれなりな金額なんじゃないかと予想はついた。
まず、銅貨より銀貨の方が価値が高いだろう。
そして、その銅貨にしても、4時間の馬車、冒険者の登録の事を思えば、100円200円みたいな価値ではないと、体感で思う。
500円玉より小さいけれど、分厚く、重い銅貨だ。
お金を払うと、ダニエルは、頼りがいのある笑顔で、
「なんでも相談してくださいね」
と、サムズアップした。
真っ白な歯が、キラリと光る。
「じゃあ、まず相談があるんですけど」
と、ダニエルの顔を窺う。
「『白樺亭』っていう宿の場所が知りたいんですけど」
実は、神官に宿の紹介までしてもらっていた。
なんでも、村の人達は、この町に来ると大体その宿に泊まるらしい。神官の知り合いが経営している宿という事だった。
「ああ、白樺亭ですね。ここから徒歩だと10分くらい掛かりますかね」
と、地図を書いてくれる。
もらった地図は、イラストがふんだんに使われ、思いの外見やすい。
「ありがとうございます」
「いえいえ。ダンジョンに入る時は、必ず声を掛けてくださいね」
「ダンジョンに誰が入ったか確認する為ですか?」
「そうですね。大抵の方は、そのついでに出来る依頼も受けていきますね」
「依頼、ですか?」
「はい。あちらの掲示板に、受けたい依頼があれば、依頼書を掲示板から取って、カウンターへお願いしますね」
どうやら、カウンターの横で大勢の人が壁に向かっている場所は、ダンジョンに関する依頼書が貼ってある掲示板という事らしかった。その隣がパーティー募集掲示板だ。
ざっと見ていくと、この町の特徴らしく、やはり服の材料を取ってきて欲しいという依頼が多いようだった。
主に、織物の原料になる植物と、ボタンの原料になる魔物の牙の採取が主流だ。
パーティーを募集すれば、冒険も楽になるのでは、なんて思ったけれど、流石に中級ダンジョンがメインの町だけあって、初心者ダンジョンへのパーティー募集は皆無だった。
……まあ、入れてもらっても、戦えないんじゃな…………。
ため息を吐きながら、俺は、白樺亭へと向かう。
白樺亭は、その町の逆側。
長閑な宿屋街にある。そこは、健全で小さな宿屋が立ち並んでいる地域だ。
やはり、商業がメインなだけあって、服を買いに来るお客さんが多いらしい。
白樺亭はそんな宿屋の奥まったところにある、客室6部屋の小さな民宿だ。
少し小さな部屋には、小さなベッドが一つ。
窓の外には、宿の裏の小さな庭が見えるくらい。
とはいえ、居心地は悪いわけではなくて、むしろよく掃除された部屋は居心地がよかった。
ダニエルは、どちらかといえば、ジムのインストラクターでもやってそうな雰囲気です。
頼りがいがある!