表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/230

106 旅路(2)

「家族……とか、友達とかは?」


「母はいる」


 その言葉はなんだかつっけんどんだった。

 なんだか……故郷の話をしたくない、みたいな。

 それは、父親に関する事なんだろうか。それとも。


「けど、」

 ハニトラのまつ毛が伏せられる。

「心配はしてる」


「心配?」


「あの人達は、人間の前に出ないの。種族も生活している場所も、人間には出来るだけ明かさない。私が誘拐される事になったなら、村になにかあったのかも。母が……心配。それに、村のみんなも」


 ハニトラは泣きそうだった。


「家族だもんな」


 そう呟いた俺の言葉を、ハニトラは否定した。

 小さな声で。


「家族じゃない」


「え?」


「言葉を交わした事もない。だた、一緒に居ただけ。同じ種族だから」


「……そう、なのか?」


「けど、気になるの。同じ種族だから。母の家族だから。どれだけ私とは関係なくても」


「そ、か」


 それで……。

 それで、黙って居なくなったら、それもハニトラを一人にするかもしれないって事か。


 黙って枝を拾う。

 細いもの。太いもの。

 できるだけ乾いているものを。


 パキリ、と枝の折れる音が響く。




 二人で枝をテキパキと拾っていく。

 ユキナリのそばで、ガサリ……、と木の陰から音がした。

 ドキリ、とする。


「何か、いるか……?」


 この世界には、あまり小さな生き物はいない。

 小さな虫や、小さな動物は見たことがなかった。

 ただのウサギやリスであっても。


 だからそこに何かが居るんじゃないかないかなんて、警戒する事は怠っていた。


 ズ……。


 出てきたのは、ヘビだった。

 それほど大きくはない。


 けれど……、その攻撃的な目で、安心してはいけない事を知る。


 とりあえず短剣を手にする。


「精霊モスよ。俺達を守ってくれ」

 短剣が、薄青く光る。


 これくらい、大丈夫だ。俺一人でなんとかできる。

 一つ息を整え、ヘビと対峙する。


 グワッと飛びかかってきたヘビを、土の盾で叩き落とした。

 そのまま、短剣を振るう。

 水竜の鱗から出来た刃は、空中にいるヘビすらも一刀両断にした。


 よし……!


「ユキナリ、大丈夫!?」

 ハニトラが飛んでくる。

「大丈夫だよ」

 少し誇らしげに返事をする。


 それは、気の緩みだった。


 グワ……ッ!


 と死角から飛んできたのは、さっき戦っていたヘビとは、別の個体のヘビだった。


「まだいたのか……!?」


 短剣で叩き落とすのはそれほど遅くなかった。

 むしろ、悪くない対応だったと言えるだろう。


 けれど、その拍子に、ユキナリは左足のバランスを崩した。


「ユキナリ……!」


 そして運の悪い事に、足を滑らせた先は崖だった。


「な……っ!」


 なんでこんなところに崖があるんだよ……!


 ガ……!ガガガガ……!


 と、崩れた足場の岩と一緒に、ユキナリは滑り落ちていった。

これでもユキナリくん、強くなってきた方なんですよ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ユキナリ「土の精霊モスよ! 斜面を緩やかにしてください!」 ザーッ(楽勝で崖をスライディング滑走するユキナリ) ハニトラ「なんか楽しそう」
土の精霊様の加護があるんだし、少々の崖くらい だ、ダイジョウブだと信じたい。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ