101 魔法というもの(1)
「人数が増えたわけだが」
今日は、トカゲも含め、5人で顔を突き合わせている。
トカゲがいるので室内というわけにもいかず、町から離れた森の中での話だ。
「さすがに戦ったこともなくこのまま首都に向かうのはきびしいと思うんだ」
「確かに、そうですわね」
「イリスの魔法、見ておきたい!」
というわけで、イリスとトカゲには、技を見せてもらうことになった
「炎!」
イリスが言葉を放つと、それに応えるように杖から炎が発生する。
「おー」
と歓声があがった。
「それはつまり、精霊を介さずに出している炎なんですのね?」
マルの質問に、
「はい」
イリスが答える。
「マナを変換し、力に変えています。炎のように見えるのは、この世界の精霊の力のように見えたほうが怪しまれないからで、実際には、ただの力。幻想の炎です」
「じゃあ、モノは出せないということ?」
「ええ。ずっと残るようなものは、出すことができません」
「それにしたって……攻撃力はあるのよね?」
「もちろん。逆に回復させる事も可能です」
マルが目を見張る。
精霊の力自体、俺には常識から外れたことなので、それがどれほどすごいことなのか想像もできなかった。
できなかったが、すごいことのようだ。
つまり、精霊の力はその精霊が司るもの、そのものを出す力で、魔法は空気中のマナをその場で使う力、ってこと、か。
「ハネツキオオトカゲは、なにができますの?」
マルが、トカゲに目をやる。
トカゲは、鼻を「ふんす!」と鳴らしつつ、その尻尾をブンブン!と振った。
どうやら、その尻尾パンチが出来るってことのようだ。
「何か吹っ飛ばせるもの……」
ユキナリが、キョロキョロと辺りを見回す。
残念ながら、場所を草原のど真ん中にしてしまったせいで、叩いて良さそうなものはなかった。
「森にでも行って……」
言いかけたところで。
「私!」
とハニトラが飛び出してくる。
ハニトラが、尻尾に向かって突進していく。
さすがにそれはないだろ!?
止めようと飛び込んでいくと、俺の方があのでかい尻尾に思いっきりヒットした。
「うおっ……!」
強い衝撃。
スローモーションのような景色の中で、驚いたハネツキオオトカゲの顔と、トカゲに蹴らせてみようと自らの刃で切り落とした自分の腕を持ったハニトラのあっけに取られた顔が見えた。
嘘だろ………………。
ズドドドドドドド……!
ユキナリが空中を舞い、すごい音を立てて、地面に投げ出される。
土の上だったおかげか、それ程も衝撃を受けずに済んだ。
これ……土の加護持ってなかったらどうなってたんだ……?
「いてててて」
「あ……、回復しますね」
イリスが杖で俺の上に光のシャワーを降らせる。
思わぬところでイリスの回復魔法も見れてしまったが……。
ちょっと腑に落ちない部分もあるユキナリなのだった。
新しい仲間たちも強そうですね!