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血管の中が沸騰するような異常な事態──

 何度も駄女神に話しかけているのに返事がない──


 くそっ──! 駄目だ──! でも──


 不思議とぼくの足は自然と少女を助けに向かおうとする──


『止まりなさい──コウジ──! 危険です──!』


 遅れて飛び出てジャジャジャジャーン!

 駄女神ちゃ〜ん!


『遅いよ──! おい──! 駄女神──! あなたさっき──こっちに危険はないって言ってたよね──!? 普通に──人が襲われてるじゃないか──!』


 やっぱり──この女神は駄目な女神なのか──?


『はい、いいました──。彼らの狙いはあなたではなくあの少女です──。あなたが黙ってそのまま、まーっすぐに進みつづけていれば彼らは追っては来ません……。なのにあなたが自ら関わろうとしているから……。はぁ……』

 

 いやいやいやっ──! それじゃあまるで──今のあの子の状況は──前世のぼくと一緒じゃないか──! 

 みんなでひとりに──よってたかって──!


『なんだよ──! それじゃあ──何? これからもぼくは──目の前で人が殺されてるのを──見てみぬ振りして──自分だけ楽しく生きていればいいっていうのかよ──!?』


 そんなの絶対に無理だ──!


「そんなんで──楽しい異世界生活なんて──! ぼくにはできないよっ──!!」

 

『ちょ──! ちょっと──コウジ──! 声──!!』


 あっ──! しまった──! つい心の声が口に───!


『……しかたないですね……。できればあなたにはもう──危険などひとつもない幸せな人生を、寿命で死ぬその瞬間まで──ずーっと、歩みつづけて欲しかったのですが……』


 ヤバいっ──! ひとりこっちに近づいてくる──!


『そんならおめえー! オラと一緒にいっちょやってみっか──!? あなたに危険があればわたしが教えますから──あなたは先ほど伝えた──神具の力を──コーウジさんみせてあげなさい──!』


 は──!


 いいぜぇー来いよ──! 殺ってやるよぉ──!

 あいつら全員──ハジケ殺す──!!!!


「なんだ〜? お前……? このガキィ──おかしな格好しやがって……! おい小僧──! 丸腰でひとりで何してる〜? 状況が見てわからねぇのか──? 馬鹿が──! お頭〜おかしな格好したガキが近くに隠れていましたぜぇ〜!?」


 近づいてきた男はひとり──手には剣──頭領らしき男は少女の目前──同じく剣か……。残りのふたりは死体の掃除……? いや──死体を漁ってんのか──!? ゲスどもめ──!


「なんだっ──!? こっちはお取り込み中のいい所なんだ……! ガキひとり──てめぇがとっとと片付けろぅ──!」


 さぁ……来いよっ──! 試してやるっ──!


 ひとつめの力──まずはお前からだ──!


「ヘイヘイ……。あーめんどくせーなーッ! たくっ……! 仕事を増やしやがってよぉ〜! 死ぃ〜ねぇ〜や〜! クソぉ〜ガぁキゃ──!!!!」


 モテたい──


「ねぇ……? 君──死んでくれるかい──?」 


 男は恍惚の表情を浮かべぼくを見つめる──


「はい──」


 男は自らの剣で首を切った──

 即死だ──


 なぜだろう……人を殺したのに全然──罪の意識を感じない──

 ぼく自身がこういう奴らのせいで死んじゃったからかな……?


 まったく──なんにも感じない──


「うわっ──! っと……危なっ──!」


 急にぴゅーぴゅー血が……! 服に散っちゃうよ──


 こっちは全身まっ白なんだからさ──

 女神の力できれいになるって言ってもやっぱり気持ち悪い……。



「へっ? おっ……おいっ! お前ぇ……なっ? 何したんだぁっ! おいお前ぇら! そいつを此方に近づけるんじゃねぇ!」


 うん大丈夫だ……使える──


次はふたり──今度は趣向を変えて──


 まとまって固まり剣をかまえた死体漁りのふたりにぼくは──ゆっくりと近づく──


 モテたい──


「ねぇ──君と君……同時に死んでよ──」


 ふたりの男は互いに剣を突き刺し合い──

 死んだ──

 抱き合うようにもたれ──芸術的な作品に仕上がった──


「うん──! やっぱり複数人でも余裕だ──」


『コウジ──! 伏せて──!』


 突然──! 一発の発砲音が鳴る──


 立ち上がって音のした方向を見ると頭領が硝煙が上がる銃を手にしている。


 助かった──

 駄女神のほうも大丈夫そうだ──


「おっ……お前……なっ……! なんなんだぁ──!? なぜ避けれた──!? 気づいて……見てなかったじゃないか──!」


 撃てる弾は一発か……? よし……なら奴はふたつめの力の実験台だ──


 ぼくは胸の第二ボタンを外し、拳の中に握りしめる──


「おっ……お前──! 素手だと──!? 舐めやがって──! ふっ……ふざけんじゃねー! ウォらぁ──!」


 無防備に近づいた僕の頭上に、頭領の剣が振りおろされる!


「無駄ァァァッ──!」


 振り上げたぼくの右拳が黄金の光を放ち──振りおろされる刃を粉微塵に砕いた──!


 それは一瞬──


 剣の刃は鉄粉へ変わり、男の手の中には柄の鉄屑だけが残った──


「ばっ……ばっ……ばっ……バケモノ〜!」


 物質はクリア──あとは──


「バケモノ……? こんなに人を傷付けて──あんた──どの口が言ってる……」

 

 ぼくは腰を抜かし怯える頭領の肩に触れる──


 すると、頭領の全身は急速に膨張していき──


 眼球が飛び出て頭が弾け──! 


 腹が裂け臓物を撒き散らし──! 


 四肢は千切れ血飛沫を噴きながら挽き肉のように弾け飛ぶ──!!!!


 あたりには血の雨が降り、その海の中に爪と歯と毛だけを残し、糞尿と血の匂いが充満している──


 その断末魔はいっとき──森の中にこだました──


 あとは……最後の能力だけど……。


「あっ、あなたナニ──!? なんなの──?」


 少女がぼくを見て怯える──


 どうやら片腕を切られて失い、両足の腱も切られている。


「大丈夫だよ……。ぼくは君の味方だ……。怯えないで……。怪我してるね……。君を助けたいんだ……」


 彼女は先程の凄惨な光景を目撃したためか恐怖に縛られた表情をしている──


 う〜ん……こんな状態じゃやりづらいな……。

 こういうやり方は好きじゃないんだけど仕方ないか……。


「今から一瞬──ぼくのことを好きになって貰うよ……」


 モテたい……


 少女は恍惚の表情を浮かべてぼくに見惚れる……。


「少しの間──おとなしくしててね……」

「はい……」


「愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない──」


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