04 クレムリンの刺客(上)
■冒険者クラン『王鳳ノ因果』 クランマスター ローゼン・ハイエンス
私は今、リオンを連れ立って夜の王都を歩いている。彼の妹を回収するためだ。
そう、何を隠そう、リオンには5歳になる可愛い妹(決して、作者の趣向では……)がいるのだ。
そんな幼い妹を、リオンは、一人ぼっちで置いてきたという。
居ても立ってもおられず、着いてきてしまった。
執務室での初邂逅の後、リオンには、試用期間を設け冒険者としての適正をみる、と伝えた。加入の是非は、その結果次第だ、と。
リオンは「頑張りますっ! 」と意気込んでいた。
それから、ステータス解読に時間を要した。
私が文字を書きリオンに確認することを繰り返し、なんとか解読できた。
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名前 リオン
職業 冒険者
冒険者ランク F
スキル【黄色い声援】
Lv.1
HP(体力):100
SP(技力):500
STR(筋力):75
END(耐久力):90
AGI(速度):150
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原作通り、リオンはユニークスキル【黄色い声援】を持っていた。
その他のステータスについては、レベル相応といったところか。スキル使用に必要なSP値だけ突出している。やはり、バフ系のスキルでの後方支援が、彼本来の戦い方なのだろう。
「ここです」
ステータスについて思いを馳せていると、先をいくリオンが振り返った。リオンたちが住んでいる、スラム街らしい。
ここまで大通りから逸れた裏通りを歩いてきたが、その先はさらに細い路地が続いていた。
雨よけのために、張られたボロボロの布。
その下でボロ布を敷き虚ろな目で座り込む老人。酒に酔いつぶれて、寝込んでいる若者。
通りにはゴミが散乱し悪臭が立ち込め、鼻がもげそうだった。
私が描写した筈のスラム街は、現実には、私の想像を遥かに超える有様だった。
リオンは、お構い無しにズンズン進んでいく。
複雑に入り組んだ道を抜けると、ボロボロの廃屋に行き当たった。軽く蹴れば吹き飛びそうな扉が、気休め程度に閉めてある。
「マァ、帰ったよ。開けてくれ」
リオンが囁いた。
中で妹のマリアが待っているようだ。
人が動く気配がした。
「退けっ! 」
鋭い殺気を感じた私は、リオンを突き飛ばした。
ゴッ!!
その瞬間、扉が吹き飛び勢いよく炎が吹き出してきた。
咄嗟に剣を構え刀身で防ごうと試みる。
「ぐっ!!」
ガランガランガラン、ガラーーンッ!
勢いを増した炎の風圧に、私は、構えた剣ごと後方へ吹き飛ばされていた。