03 主人公登場
■冒険者クラン『王鳳ノ因果』 クランマスター ローゼン・ハイエンス
「お願いします。どうかっ、どうかこの俺を冒険者クラン『王鳳ノ因果』に入れてください」
デスクの向こう側で、リオンが頭を下げている。
「ここを断られたら、他に行き場所がありません。雑用でも何でもします。だから、どうかお願いします」
無言の私に、リオンが焦ったように言い募る。
『うるさいっ! 貴様のようなものを雇うつもりはない。私は忙しいっ! とっとと、去れっ!!』
そんなセリフが頭を過ぎった。ローゼンならば、きっとそう言う。
そもそも、執務室に通すワケもない。
原作では、最初の邂逅を、待ち伏せしていたリオンに、クランから出てきたローゼンが捕まる所から始めたはずだ。
「君の事情はわかった。しかし、君を雇うためには、情報が必要だ」
「あっ!
リオンといいます。15歳です。昨日冒険者になりました」
リオンが、慌てて自己紹介をする。
「……リオンくん。君のステータスは? 」
「ステータス? なんですか、それは? 」
リオンが、きょとんとした表情で言う。
冒険者ギルドで登録時に説明されたハズの情報を、聞き漏らしたようだ。もしくは、受付嬢の判断で省略されたのかもしれない。
「……口で説明するよりも、実際に見てもらった方が早いだろう。『ステータスオープン』と、唱えてみてくれ…………あ」
プンっ。
─────────────────────
名前 ローゼン・ハイエンス
職業 クランマスター
冒険者ランク A
スキル【書籍化】
Lv.72
HP(体力):4500
SP(技力):2000
STR(筋力):4800
END(耐久力):3800
AGI(速度):5200
─────────────────────
効果音と共に、眼前に、水色に光るパネルが出現した。ステータスが表記されている。
これが出来るのは、この世界で主人公ただ一人の筈なのだが…………私にもできた。転生チートというヤツだろうか。
「ステータスオープン。
わっ、わぁっ!! 何か出てきたっ!! 」
リオンが、叫んだ。
パネルの呼び出しに成功したようだ。
「そこに何と書いてある? 」
「……」
私の問いかけに、リオンが困った様な顔をする。
「なんだ?
『王鳳ノ因果』に入りたければ、そこにある情報は教えてもらうぞ。パーティを組んで戦うこともある。連携を図る為にもステータスの開示は必須だ」
「……あの、何か書いてあるのは分かりますが、俺には読めません」
「…………」
私は自らを恨んだ。
主人公の出自をスラム街の設定にした、自らを。