クラン【冒走族】の新人教育2
カルト少年、彼だけは皆が寝静まった後にも自主訓練を行っていた。
そもそも、今回集められた少年少女は冒険者登録を終えた直後、意気揚々と依頼を受け、その最中魔物との戦闘を行った結果、命の危険に襲われた者達であった。
冒走族とは、ギルド創設時冒険者の規律を正し、死亡率を下げる為に結成された不死の紅蓮隊、その構成メンバーの下部組織であった。
彼等は各ギルドに散らばり初心者を影から守り、時に手助けし、冒険者の育成を担って居たのだが、時を重ね冒険者達の為の学園の設立、最低年齢ギルド内での引き上げが出来るようになり、その姿を消して言っていた。
東支部だけは従来の最低年齢そのままに、様々な制約を求めなかった為、残った組織が独立クランとして唯一の冒走族となっていたのだ。
東支部の死亡率の低さは、この冒走族の存在が大きい、ただ、本来初心の頃に打ちのめされ、消えていくはずのアクの強い者達が存続する為、問題児とされる変わり者の冒険者が増える弊害の要因も担っていた。
カルト少年も冒険者に夢を持ち、自分の力を過信し登録初日、モンスター討伐に走り出した1人である。
最初は順調に依頼のラビットフットを各個撃破していた彼、自信が確信に変わり、複数のラビットフットに狙いを定め狩りを開始した。
だが、弓での個人戦闘の経験の浅い彼では、複数相手となると勝手の違いに、一気に形成は不利になる。
狩猟の心へを父親から叩き込まれていたカルト少年、彼の戦闘スタンスは初撃を外さない、弱った所に止めを刺すという反撃を考慮しないものだった。
複数相手にはそれが通用するはずも無く、ラビットフットからの反撃に不意を疲れ、動揺が生まれ、その後は、ラビットフットの強靭な脚力から繰り出される足蹴りに、なすすべもなく痛めつけられる。
この時には団員からの防御魔法による、支援を受けていた彼は打撲程度ですんでおり、彼等の助けが入り何を逃れた。
カルト少年にとっては余りにも屈辱だったかもしれない、助けに入った者達の服装は夢見た冒険者達とは掛け離れた古いヤンキールック、口調を悪くするのが癖になっている彼等の言葉は、彼の自尊心を痛く傷つけたのかもしれない。
そして連れてこられたこの教育施設、有無を言わさず訓練に参加させられた彼は多いに反発したが、脱走の再三の失敗に現状に至るのだった。
「カルト、今日もやっているのか、体を壊す、その辺にしておけ。」
彼の行動を把握している総長が、背後から弓を的に射る彼へ声をかける。
「俺は早く冒険者として活動したいんだよ、あんな無様な事には次はならねぇ。」
12の少年が現実を理解するにはまだ幼すぎる、彼の夢を追い求める姿勢こそが年相応ではあるのだが、冒険者にとってそれは死に直結する危うさでしかない。
「後少しだけ付き合え、お前の弓はその歳にしちゃぁ1級品だが、弓の特性を理解しないとやっていけやしない。」
「知ってるさ、弓は射程を活かした不意をつく事に、接近戦に対する不利をどう軽減するか、大事なんだろ、ヤーさんが口酸っぱく毎度毎度言うんだ、耳にタコだよ。」
何だかんだと言いながらも、彼等の訓練が自分の糧となる事を理解し始めた彼も、真面目に取り組んではいる。
「なら、お前に足りないものはなんだ。」
「パーティーだって言いたいんだろ、でも、俺は1人で充分だ。」
他の新人は皆同郷のパーティーを組んで冒険者になった者達、彼だけがソロで行動していたが、やはり馴れ合う彼等の姿はプライドが許さない。
「俺は凄い冒険者になるんだ!強弓の探索者みたいな。」
「Sランクのドーテルか、あれは規格外だ、パーティー活動が主体だが、ソロで行動している方が都合がいい時だけ1人で依頼を受けているだけだ。」
「何でだよ、弓1つでモンスターの群れも殲滅出来るんだ、パーティーなんて組む必要ないだろ。」
自分の知らない物語の英雄が、本来パーティーを組んでいた等知らない彼、理想が崩れる事に納得出来ずに声を荒らげる。
「読者を楽しめせる書き手の都合でソロの武勇伝ばかり書かれている、彼自身はパーティーでこそ弓の力を最大限に活かせると言ってるらしいぞ。」
「なんだよ、弓だって凄いって認めさせる為には、目立たないといけないんだ、ソロじゃないと目立たないじゃないか。」
彼の姿を見守る総長は心意気は買っている、少年の歳でこの練度まで、弓の技術をここまで高めているという事事態、尋常ならざる努力が必要であり、弓に対する彼の強い意志を汲み取ることが出来る。
「何故そこまで目立ちたい、お前は目立たなくとも冒険者として大成する事は出来るはずだぞ。」
「親父を馬鹿にされたんだ…弓を使うなんて臆病者狩人だって…」
(熱い、熱すぎるぞカルト、お前のその優しい親孝行、俺は感動した)
表情や態度には出ない総長だが、内心の熱い男魂を持つ純粋の熱血漢であった。
「3日後お前達は此処を離れる事になる、それまでは此処で基礎を学べ、だがひとつ、俺からドーテルの強さの秘密を教えてやろう。」
夜の訓練場を照らす月明かりの下、カルト少年の心意気に打たれた彼、自分の知る、少年の英雄についての秘密を語るのであった。
休みが減って執筆が進みません。
休みでスパートかける予定が全く進められず目標の2話完結までは行けそうにないですね。!