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東支部のフェスティバル(後編)7

「くっ、此処で化物揃いのおでましとはね。」


「流石にキツイぞ、焔の加勢があった所で此方は殆ど物資が足りねぇ。」


「私達の手に終える相手じゃないよ、桃華がいないんじゃバフが足りない。」


 焔の加勢が着いた頃には、一気に迫ったモンスターの群れに囲まれていた黒蝶、彼らの助けで窮地は脱したものの、範囲殲滅力にかける彼らでは今の状況は厳しいものだった。


 焔の方もレリラが居ないため、殲滅力に関しては半減している。


「今は耐えろ、もうすぐ参謀さんが起死回生の一手を打ってくれるさ。」


「うぐぅぅ、僕じゃ持たないよぉ。」


 フットの叫びが戦場を駆け巡る。


 よく食べよく鍛えられてきた彼は、並のタンク以上の実力を備えてはいたが、格上ばかりの敵にフォローはあるものの徐々に抑え込めなくなっていた。


「お待たせしました、皆さんお疲れでしょう、アイテム配るので順番に休憩入れてくださいね。」


 空から降ってきたと思えばフットの背後で一回転、落下の衝撃を緩和したアキラが声を大にして皆に告げる。


「フット君頑張ったね、取り敢えず引きつけは僕がやるから一度下がって。」


「アキラさん……何処から?でも助かった。」


 グリフォンがアキラを運んできたのだが、用が終わればすぐに街へ引き返していた。


 戦いはしないと約束でシュウから借りていたのでお約束ごめんである。


 フットと交代したアキラは皆の近くに寄ってはアイテムを遠距離で渡し、群れて攻撃を繰り出すモンスター達をひらりひらりと交わしながら挑発アイテムを使い引きつける。


「あれ、出来るか?」


「無理だよ、二体位なら見極めも出来るけど、あんな回避普通無理だよ。」


 アキラの以上な回避に黒蝶のメンバーも呆気に取られて気が散ってしまう。


「おい、今は集中だ、ピンチには変わりないんだからな。」


 サイクロプスの棍棒をいなし、目に一撃を入れて止めを刺しながら黒蝶へ声をかける。


「取り敢えず立て直しよ、ローテーションで傷を癒すわよ。」


「おぉ。」


「分かったよ。」


 黒蝶のメンバーも今一度気を引き締め、疲れた体を癒す為一人ずつ戦線を離れ休む。


「おっと、忘れてた、とっておきですよ。」


 手に持ったアイテムをアキラが空へ投げる。


 メガホン型の魔道具に小さな羽が生えたモノであるが、空中で留まればそこからラリスタの歌が聞こえてくる。


「ラリスタの歌の応援か、こりゃもうひと頑張り出来そうたぜ。」


 オーレンが最後のB級ダンジョンのボスを討ち取り、聞こえてきた歌にテンションが上がる。


「それだけじゃないわ、なんだか体が軽い、これならやれるわ。」


 ラリスタの歌に付与魔法を載せる、ロンドが考えたもうひとつの秘策。


 これに関しては他の場所に寄ったアキラによって、南も北もその恩恵を得ている。


 動きの良くなった黒蝶も数のいるモンスター達を次々と倒して行く。


「すげぇ、俺もあんな風になれるのかな。」


「あぁ?何言ってんだよてめぇ、慣れるかじゃねぇ、なるって豪語すんのが男ってもんだろ。」


「そうっすよね、やってみせるっす。」


 後方で奮起する彼らを見ていたフォートも、気合いが入ったようで、弱りきったモンスターに止めをさしながら頷く。


 B級ダンジョンが沈静化した事と、ラリスタの歌のバフのおかげで戦況はこちらに傾いて来た。


 だが、未だA級二体のボス級がモンスターの後ろで不気味に佇んでいる。


「あいつら攻めて来ないな。」


「私達の疲労待ちってとこかしら、流石にこのクラスを相手にしてたら持たないだろうし。」


「私もそろそろ限界だよ、呼べる子はもうほとんど居ないし……」


 精霊召喚は限りがある、パルレもそろそろ戦線から離脱する意図を告げる。


「かといって攻める事も出来ないか、手一杯だしな。」


「遠距離不足が過ぎるわよ、どうにも出来ないじゃない。」


 余裕は出来てきたものの、ボスを倒すまで続くモンスターの増援、キリがない戦いになれば不利であり、今この瞬間にケリをつけたい。


「仕方ない、俺が特攻かけるか。」


「馬鹿を言うな、特攻等死にに行くだけだ、タチアナ、援護だ。」


 後方からの声、無数の氷の刃が広がるモンスター達へ降り注ぐ。


「青薔薇か、という事はロトンも。」


「しっかり来てるぞ、シャーシャ、俺が前に出る、後ろへ下がれ。」


「時間を稼げ、ボスはこちらで仕留める。」


 良く通る勇ましい声を上げエリアナが全員を鼓舞する。


「落ち着いてゆっくり魔力を練って安定させる。」


「フルーネ、気を張りすぎだって、ちゃんと俺も抑え込むから、しっかり魔法の構築に専念しろって。」


 叫ぶエリアナの傍らでは集中して二本の矢に魔法を込める作業をするフルーネと、魔力で魔法を矢に留める為に包み込むカルトの姿があった。


「大丈夫……、貴女なら、出来る……」


 フルーネの肩に手を添え、魔法の発動過程を見守り、リリアナが彼女に安心を与える。


「出来た、外さないでよカルト。」


「おう、任しとけ、しっかり当ててやるよ。」


 魔力で魔法を矢に止め、更に距離のある相手二体に狙いを定め集中力を使う作業。


 一息入れ大きく息を吐いて、カルトが弓の狙いを定める。


「やっちゃえ、カルトー。」


 フルーネの叫びとともに矢が放たれる。


 グランドゴーレム、ギカントスパイダーの二体のA級ボス目掛け矢は一直線に飛んでいく。


 グランドゴーレムは矢が突き刺さるが、ギカントスパイダーは一瞬反応し矢が逸れる。


 だが、魔力操作をカルトが解いた瞬間、通り過ぎる矢から無数のかまいたちが辺りに撒き散らかされた。


 二体の体はかまいたちに切り刻まれ、その身を塵と化す。


「ふぅ、焦った、やっぱり安定してなかったな。」


 カルトの魔力操作は抑え込むので精一杯、フルーネも魔法を集約、安定させる技量は課題が残っていた。


 そのおかげで、魔法の暴発が起こり、敵を仕留められたのは運が良かったと言える。


「フルーネ……帰ったら特訓……」


「えっ?そ、そんな、頑張ったのにぃ。」


「カルト少年、君もだ、この場面で確実に当てられなければな。」


「あっ、やっぱりですか……」


 大混戦からのどんでん返しは、ロンドの思惑通りカルトの一撃がひっくり返す事となった。


 そして、残ったモンスターを片付ける頃には空は白く明るみ始めていたのだった。

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