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東支部のフェスティバル(後編)6

 ボス討伐、ダンジョンブレイクに置いて唯一、沈静化する方法がこれである。


 ただ、能力も向上し、並の強さではなく、溢れ出てくるモンスターを相手にしながらダンジョンへ潜ることはほぼ不可能だ。


 出てくるまで待つしかないが、その前に大量に溢れ出したモンスターを、食い止める事に手一杯でなかなか上手くはいかない。


 この為例年はS級が単独撃破を行っているのだが、あいにく今回は彼らはいない。


 それを補う為の作戦が、遊撃部隊の結成に繋がった。


「黒蝶二つ目クリア。」


「青薔薇次のダンジョンへ向かう。」


「焔、A級ダンジョン沈静化。」


 次々と上がる報告を耳にし、東の者がその都度歓声をあげていく。


 そんな中、ロンドだけは険しい顔を崩さず、順調過ぎる流れに違和感を感じていた。


「すまない、全く変わった事はないの各遊撃隊に問うてくれないか?」


「異変らしきものは無いと、何か問題があるのですか?」


 通信担当の低ランクの少女がロンドに疑問の返答を伝え、順調そのものの作戦に彼の疑問に疑問を重ねて問いただす。


「何もないに越したことはない、ただここ最近ダンジョン自体おかしなところが目立ったからな、トラブルがあればすぐに伝えて……」


「黒蝶から連絡、すぐに物資の補給をとの事です!」


 ロンドの言葉を遮り早速トラブルが起こったようだった。


 ロンドはすぐに地図と向き合い、報告のあった地点を調べる。


 黒蝶はB級ダンジョンとA級ダンジョンが点在する区域を広範囲に駆け巡っていた。


 すぐ様、待機していたアキラを彼らの元へと向かわせ、ロンドの指示で焔グループに援護へ向かうように伝える通信班。


 最後の最後でダンジョンの悪戯が始まった。


 そろそろ日が変わろうとする頃合い、既に12時間という長い時間に疲労も溜まり、防衛に徹する中にも少なからず重傷者もではじめている。


 皆既魔食が完全に太陽を飲み込む頃合い、夜になりその姿は見えないものの、凶暴性が増すモンスターを見れば想像がつく。


 最後の踏ん張り所、ここで使わずしてどこで使う、ロンドはとっておきの秘策を使う合図を送った。


 彼の合図と共に城壁へ、四色のライトが四人の女性を照らし出す。


「おい、ラリスタじゃねぇか、なんでここにいんだ?」


「本部が許可するなんて、どんな交渉したんだよ。」


「さすが、知将、とんでもねぇ事しやがるぜ。」


 本部へと移動になったラリスタ、彼女らが魔食日にトロイヤには普段いない。


 数日をかけて全ての国を周りライブを行い、人々の不安を取り除く依頼に出ている頃だった。


 そんな彼女らを銭がば上層部が手放すはずは無く、その姿を見た冒険者達が目を疑う。


 この日の為にロンドが用意した秘策があった。


「ラリスタファンクラブには感謝だな、しっかり歌を届けてくれよ。」


 彼女達を視線に捉えロンドが囁く、彼女達がもたらす恩恵を視野に入れ、未来を見据え呟く。


「はぁ、始まっちゃったじゃないか、音声だけとか許せない、さっさと終わらす……おぉぉぉ!」


 音声が彼の持つ端末から流れる。


 その声を聞いた瞬間ソーイの雰囲気が一変し、彼の目は何を犠牲にしようと推しの為に命をかけるオタクのものになる。


 ロンドとの約束は二つ、ラリスタのライブを行うかわりにやる気を出せ、ノルマをこなすまでは戻ることの禁止。


 ソーイ達のノルマは中級者以上の者が良く探索するダンジョンの密集地帯である。


 C級クラスは全て片付けており、残すはB級とA級、ただ、恐怖を与える事を畏怖するソーイの悪い癖が出てしまい、思うように進んでいなかった。


 それもロンドは見越していたのだが。


「あれが最強のルーキーか。」


「私達と同い年の頃には二つ名があったんだよね。」


「暴走鬼、確かにありゃすげぇわ。」


 進行が遅れた為に集ってしまった二体のB級、一体のA級ボス、それを赤い肌に染まった十五歳の少年が、一撃の元に撲殺している光景に唖然とする二人。


「まぁ、理性がないのが欠点だけど、これからは使えそうね。」


 完全に理性を無くす事で凄まじい力を手に入れるソーイのスキル、しかし、今回は明確な目的の元で使用されている。


 そして、彼の端末から流れる声に、目的さえとげれば理性を取り戻し、何時もの姿に戻った。


「終わった、僕行くから、後宜しく。」


 それだけ告げれば一目散に本部の方へと走り去るソーイ。


「後って、もう殆ど終わってるけれど……」


 クレーターが所々に作られた戦場、ボスの無惨な姿と、それに巻き込まれたモンスターの屍を残し彼は行ってしまう。


 残された者達は一瞬で走り去る彼を見送った後、瀕死状態のモンスターの群れにとどめを刺す作業に入るのだった。



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