東支部のフェスティバル(後編)5
「さて、これで大部分は片付いた訳だが、ここからが正念場だ。」
東門を出て広がる森の直前に構えられた陣営、集められたのは理不尽な力に対しても対処が可能なパーティー。
青薔薇、ピエロ、黒蝶、焔、 そして、何故か集められた一閃一矢の新米パーティーである。
「あのぉ、一つ質問良いですか?」
「構わない、どうしたカルト少年。」
「俺達、場違いなんですけど……」
東の冒険者の中でもランクは兎も角、実力だけならトップクラスと言われるメンバーが揃う中、明らかに相応しくない自分達が呼ばれた事がどうにも理解出来ていない少年少女。
「君達には分散してこの四バーティーに入ってもらう。」
「……えっ!」
ダウンしているクリア以外の五人は声を揃え声を上げる。
「いやいやいや、俺達が入ったって足でまといになるだけだぜ、実践が大事だってオーレンのあんちゃんも言ってたじゃないか。」
「それに私達ひよっこもひよっこだし。」
「君達とは付き合いがあるものが多いからな、即席よりも連携も取りやすい、何よりカルトの火力が必要になるだろう、お前の師匠はあぁ見えて凄い人だからな。」
気づいている者は気づいているという事だろう、ロンドがカルトの技を使うのを見逃して居るはずもないのだが、掃討戦でやらかしているとはストレラ自身も気づいてはいない事だろう。
「今回はアキラには抜けてもらう為青薔薇にはロトンが入ってくれ、変わりにフットが焔のタンクだ。」
「えぇ!僕?そんな自信ないよぉ。」
「フォローはしてやる、終わったらたらふく食わせてやるから頑張れよ。」
「大丈夫、僕頑張る……食べ放題でお願いしますよ。」
情けない声を上げたと思えば、オーレンの言葉にコロりと態度を変えるフット、流石に扱い方を心得ている。
ただ、ロトンは哀れな視線を向ける、それは愚策だと、同じ手を使った事のあるからこそ、弟子の底無しの胃袋の代償も知っているのだ。
「黒蝶にはフォート、彼らのうち漏らしのトドメを指すことだけ考えろ。」
「おぉ、おぉ、お前には俺らも着く事になってるからよ、気をわずやれや。」
「あっ、了解っす。」
スピードと一撃必殺の強みのある黒蝶には、フォートと初心者の味方冒走族初心者見守り隊の三名(カルトがお世話になったあの方達)が配置される。
フォートもお世話になった経験がある為か顔が引きつってはいるが、彼だけを除け者にする訳にも行けない為の策である。
「フルーネとカルトはうちに入ってもらう、俺が動けないからな、ソーイだけではマーティンを守る人間がいないからな。」
「まぁ、大丈夫なんだけど、私達のパーティー物理に対しては問題ないけど。効かない相手にはとことん相性悪いから、よろしくね。」
大人しくうなづいているソーイを気にせず、酒瓶片手に軽く手を挙げて揺らすマーティンが、カルトとフルーネに声をかける。
「よろしくお願いします。」
カルトが頭を下げ、フルーネは何処か不安を拭えないでいる。
「大丈夫だ、あぁ見えてあいつは面倒見もいい、気楽に指示に従っていればそうそう危ない目には合わない。」
ロンドがフルーネの頭に大きな掌を置いて声をかけ、信頼を置いている様子にフルーネは杖を握って覚悟を決める。
「では、配置は言っておいた通りに、他の者は血の海と化した平原の奥で防衛網を張ってくれ、雑魚の処理は任せておく。」
話を聞いていた一人の冒険者がロンドの言葉を伝えるべく、拠点となっているテントの外ペと、その言葉伝えに出ていく。
数時間の光のささない時間帯、皆既魔食まっただかになったコロ、一番の山場に、それぞれに別れ、ロンドの参謀としての大一番の幕が上がる。
――――
その頃の南の神速たちは乱戦につぐ乱戦に疲弊仕切っていた。
「くそ、こうも数が多いと進みも出来ねぇ。」
「その前に、これじゃ死んじゃうわよ。」
「どうしたもんすかね、交代制でなんとか凌いでますけど、耐えるのが精一杯ですぜ。」
「くそっ、あいつらあんな化け物まで用意してやがって、元々賞賛があったのかよ。」
天を赤く染めた雨、レリラの魔法はこちらでもざわめきが少なくはなかった。
その後、危機感を持ったモンスターが南側へと方向を変え、大量に押し寄せたのが今の現状の発端であった。
「爆裂焔の魔法使いだな、単体魔法だと聞いていたが……いつの間に広域殲滅魔法まで作りあげたのか。」
「もうあいつらの事は良い、どうせ、あんな逆殺出来るようなキチガイどうしようもねぇ。」
「じゃあ、撤退するの?」
「いや、意地は見せるぞ、一度半数を下がらせろ、わざわざけしかけといて、これ以上汚名はかぶれねぇ。」
ランドの目に闘志が宿り、それぞれに動き出す南の者たち、推し推せる大群と向き合う覚悟を決めた彼らが進化を発揮するのは、もう間もなくであった。