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東支部のフェスティバル(後編)4

大変お待たせしました、なかなか筆が進まずにまたまた更新に時間がかかり申し訳ない。

 後に血の魔王の仕業と言われる血染めの平原が誕生した頃、西と北の連合軍の面々は驚愕の光景に呆然と立ち尽くしていた。


 東の副ギルド長であるナーネルから増援として紹介された黒影のマント男。


 何やら恐ろしいオーラを感じる全身タイツのヤバそうな仮面男だったが、実力は相当なものだった。


 自分達の影を引き抜いたかと思えば、その影を連れて最前線を駆け巡る、後からついて行くもいけどもいけども追いつけず、屍と化したモンスターが所々に倒れている。


 防衛は冒走族、クランリーダー以下5名の教練グループが担当してくれるという事だったが、それでは守り切れないと叫んだのはラシェリラだった。


 守りの要であるタンクからすれば、僅か一パーティーで防衛など無謀でしかなかったからであるが、問題ない、我らはどうせ待機しているだけだと一蹴。


 ナーネルからの後押しもあり、納得はできなかったものの、納得するしか道はなかった。


 しかし、始まって見れば初撃の街周辺の雑魚モンスターは彼らが追っている間に壊滅。


 やっと追いついたと思えば、数百の屍の絨毯が荒野に敷かれ、影が力尽きたからとまた自分達の影を引き連れ走り去られ追いかけっこが始まる。


 何もしてない筈の自分達が傷ついている事に気づいた頃には、小規模のダンジョンのいくつかが沈静化されていた。


「はぁ、はぁ、なんなんですか貴方は、bランクと説明を受けて降りましたが、規格外過ぎます。」


「おいっ、なんで俺たち傷だらけになるんだよ。」


 隣で見える血の雨を眺め、頭を抱えて蹲る仮面男にやっと再び追いつき、ラシェリラは不審すぎる相手に自分の疑問を投げかけ、他パーティーは傷ついて行く自分たちの謎に怒りを顕にする。


「すまない、説明を忘れてたな。」


 怒りを顕にしている冒険者達の傷を見て、今更思い出した様で、やらかしたと体で表現したいのだろうか、フルフェイスの仮面の額をこついて茶目っ気を出そうとする。


「シャドードッペルは人の影を使役出来るんだが、デメリットとして能力の引き出しに応じて本体にダメージが出てしまうんだよな。」


 勝手に能力を同意なしに使っておきながら、重要な事を今更、さらっと話す仮面男。


 あっけらかんと重大な事実を彼らに何事も無いように話すが、それを聞いて黙っていられる者はいなかった。


 一瞬にしての罵詈雑言(ばりぞうごん)の嵐が仮面男へと投げつけられる。


「まぁ、待て……ちゃんと軽傷ですむ程度でしか抜き取りはしてない。最初に配ったマジックバックの中には回復アイテムも豊富に入ってる。」


「それで許されると思うな、こんなの倫理に反するだろ。」


「そうだ、そうだ。」


 仮面男、(中身は知っての通りストレラ)からしてみればこれくらいで納得しないのは分かっている。


「その配布物は私個人の物だ、終わった後には残りは君達の物にしていい、因みにマジックバックはダンジョン物だ。」


 彼の一言に全ての者が言葉の欧州をピタリと辞める。


 その理由こそダンジョン物のマジックバック、巷で売られるマジックバックもなかなか高価な物であるが、中級者には必須アイテムである。


 魔法付与により空間拡張、重量軽減が施された既製品は魔道具としても一級品であり、手に入れるには一般人の1年分の生活費でも足りない。


 それなりに実入りの良い中級者でも数ヶ月の稼ぎが必要となる代物ではある。


 しかし、ダンジョン物となれば話は違ってくる。


 既製品と違う所はただ1つ、空間内の時間停止、時間を操る魔法だけはそう易々と付与出来ず、その価値は計り知れない。


 ダンジョンでもごく稀に上級ダンジョンで見つかるが、利便性と貴重価値を考えれば、市場に出回る事は皆無である。


 出回った所で値段はどれだけ積み上げられる可分からないので、彼らが持つ事は運が良くて一人いるかいないかかもしれない。


 そんな売れば一財産築ける物を、あっさり贈与すると言ってのける仮面男、実際彼はその価値をちゃんと理解はしていなかった。


 彼の嫁から要らないと送られてくるマジックバックの数々は、彼のギルド倉庫に有り余っており、既製品の金額がその価値だと思っていた。


 その為、デメリットに見合う価値はあるだろうと言う感覚しかないのだ。


 仮面男からすれば、有り余ってるマジックバックの数十個等、冒険者達の店を空にする飲み代よりも安上がりだと思っていたりする。


「疑っているのか?俺は約束は守る、本物だぞ。」


「希少過ぎて皆、判断が出来んのだろ。」


 半信半疑な冒険者達、目の前に立つ怪しい格好の仮面男の言葉だ、嘘かもという思考が少なからずあるのだろう。


 しかし、既製品でもマジックバックは高級品、自分の命に危険が無いのなら手に入れておきたい、そんな思いと天秤にかけていた。


 そこへラシェリラが助け舟を出す。


「この男は嘘は言っていないだろう、知人がひとつ持っていたが付与陣が何処にもない。」


 彼女の言葉に全員が手持ちのマジックバックを調べ始め、確認を取れば歓声をあげる。


 労力は影の提供と少量の傷の受け入れ、それだけで、誰もが欲しがるアイテムを手に入れる事になるのだ、彼らの昂りは相当の物だろう。


 この後の攻略は協力を得られた事に迅速に速やかに進む。


 彼らが任された地域は数より質のダンジョンが多く、今の時間になればその殆どのダンジョンボスが外まで現れていた。


 現れたダンジョンボスを討伐してしまえばダンジョンが沈静化する為、この地域には一人の強者がいれば問題ない事をナーネルは知っている。


 彼らが任されたのも、仮面男一人つければ問題ないと踏んでの事だったが、ラシェリラに浮かんだ疑問だけは膨れ上がる事となった。

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