東支部のフェスティバル(前編)3
「ロンド、すまない、今回はうちはそこまで戦力を裂くことも出来ず、私達含めB級三パーティーだけしか来られなかった。」
「危険も多いしぃ、今回は数千年に一度の稀な魔食日だ、何処も不安なんだろ、別に俺に言わなくてもそういうのは支部長にでも言えばいいだろ。」
同じテーブルにつくのはピエロのメンバーとラシェリラ、双璧の蒼穹の他メンバーはもうひとつのテーブルへ着いていた。
ロンドの強がりな嘘は誰にも納得して貰えず、不貞腐れた彼は、オフモードで不機嫌になっていた。
「大体あんたの分かりやすい嘘が行けないんでしょ、周りに当たるのやめてくれない?さも不機嫌ですって顔で話すとか。」
「分かりやす過ぎ何です、もっと上手い嘘考えれば良いのに、ラシェリラさんは心配しただけなんですから、大人気ない事しないでくださいよリーダー。」
「煩いな、お前らもっと歳上を敬えよ、ズカズカ文句ばっかり良いやがって。」
「すまない、こういう場ならばお前が指揮をとるのだろう?ならばお前にも謝る必要があるかと思ったんだが……」
完全にオフモードのロンドは、仮装に身を包むだけのおっさんにしか見えない、そんな彼をメンバーの二人は大人気ないと呆れるばかり。
いまいち状況を飲み込めていない、ラシェリラに至っては全く違う方向でロンドの機嫌を更に損ねる言葉を発している。
「おっ、ロンド、今回こそは陣頭に立ってくれるのかよ。」
「まじか?今回は余裕じゃねえか、こりゃ今回の討伐は楽にやれそうだ。」
「勝手に言ってんじゃね、俺はしねぇよ、指揮なら支部長がとるだろうが、俺がとってもついてくるやつもいねぇ。」
ラシェリラの言葉を聞いた冒険者が、ロンドが遂に重い腰をあげたのかと勘違いし、肩を叩き声を掛ける。
その言葉が周りへ広がり、他の冒険者も勝手なことを好き勝手に口にしだすが、更に不機嫌になっていく彼からは一蹴する言葉が紡がれる。
「なっ、取らないって、お前が参謀しないなんて嘘だろ?あれだけの力を持ってるんだ、何を言っている。」
「お前が何を言っている、俺は二度と参謀紛いの事はしない、勘違いさせるようなことを言うな。」
「まだ、引きずったままなのか、あれはあいつらの落ち度だ、お前がやっていた事が悪い訳では無い。」
「しつこいぞ、気にもして……」
デーブルを叩き立ち上がろうとし、声を張り上げようとした彼の視線の先無視出来ない顔ぶれが映り言葉が止まる。
「おいおい、噂通り道化が道化師になってんじゃないっすか。」
「あははは、笑える、仮装パーティーでも行くのかしら、ホント注目を集めたい目立ちたがり屋なのね。」
支部に足を踏み入れた神速のメンバー、彼らは入ってくるなり目立つ姿のロンドを見つけ、ガジル、シャラの二人が酒場に響く声で声を荒らげる。
明らかな挑発行為に、受付嬢が二階へ報告に向かう。
四人から抜け出しランドが彼の後ろに立ち、肩を叩きながら声を掛ける。
「よぉ、久しぶりだな、口だけ男、今度は顔芸か?冒険者辞めて芸人にでもなったのかと思っちまったぜ。」
「……黙れ、何しに来たんだ。」
「おいおい、ご挨拶だな、元パーティーメンバーにその言いぐさはないんじゃないか、せっかく、支援に来てやったのによ、Sランクパーティー神速様がよ。」
「そうか、そりゃ良かったよ、実力者がいれば討伐もはかどるってものだ。」
絶えず上から目線のランドに無関心を装い、言葉を返す彼の冷たい態度に場の空気がピリピリしだし、酒場の賑わいもおのずと静けさが伝染する。
「そうだな、お前達よりは遥かに役に立つ、仮装男、酒グルいにガキじゃぁ、邪魔にしかならないだろうし。」
「ちょっと、あんたさっきから煩いわよ。」
「僕も気分が悪いです、いい加減にしてくれません?」
「ランド、そこまでだ、場を乱すなら帰ったらどうなんだ。」
彼の態度に痺れを切らし、テーブルについていたメンバーも黙って見守るにも限界がくる。
マーティンとソーイは自身へも喧嘩を売られたのだから、険しい表情で仁王立ちする傲慢そうな男を睨みあげている。
「なんだ、仲良しごっこが好きなラシェリラじゃないか、確か西の応援だったか?大変だな、東が不甲斐ないばかりに手伝わされるとはな。」
「お前言葉には……」
ラシェリラが言い返す前に酒場全体が殺気に包まれ、
場の異様な空気に彼女の言葉も途中で詰まる。
ロンドが相手にしようとしなかった理由、虎の尻尾を踏ませないために冷めた対応をしていたが裏目に出てしまった。
一触即発の雰囲気漂う酒場、流石の神速のメンバーも濃密な殺気に当てられて沈黙せざるおえない。
「おいおい、冒険者が街で暴れないでくれよ、俺の仕事が増えるんだから。」
そこへ頼りない救世主が現れる。
そう言えば告知忘れていました、今回の前後半の2部で完結とさせていただきます、あと少しですがお付き合いお願いします。