東支部の不文律3
「あっ、本当にシャーシャさんも居た、おはようございます。」
訓練場に辿り着いたカルトが焔の三人に礼儀正しく挨拶を交わす。
「あぁ、おはよう、カルト。」
「おはよう。」
「おはよう、私が居たら不都合でもあるのかな?」
彼の挨拶に各々が挨拶を返すが、シャーシャだけは言いように威圧感を出しながら問いを返す。
「ご、誤解ですよ、ナーネルさんがシャーシャさんがいると思うから訓練してもらってはって話をしてたんで、言った通りだなと。」
気に触る事を言ってしまったのかと、すぐ様理由を述べる彼は困った顔をしながら少し後退る。
「シャーシャに訓練してもらうって、カルトは支部長に訓練を受けに行ったんじゃなかったのか?」
「そうなんですけどね、今、師匠旅行に行ってるらしくて。」
カルトの言葉を聞いたオーレンが顔を青ざめさせる。
「……、なぁ、カルト、支部長はいつ帰ってくるって?」
「えっ?オーレンさんもそんなに気になるんですか?話聞いてた人達も慌ててましたけど、そんなに重要な事なんですか?」
「シャーシャ、取り敢えずレリラを確保、絶対に何もさせるな、絶対だ。」
「了解よ、ロトン、東門を出ていないか確認は頼むわね、私はホームを見てくるから。」
「任せろ、まだ出ていない事を祈るしかないな。」
簡単に打ち合わせすれば、シャーシャとロトンの二人が足早にその場を去っていく。
何が何だか分からない少年三人は、呆然と眺めている事しか出来なかった。
「何があったんだよ、カルト」
「いや、俺にもさっぱりなんだけど……師匠が居ないのが問題みたい。」
理由を知っていそうなオーレンは青い顔をしながらぶつぶつ何かを言っていて、少年三人はそれを眺めているしかない。
「くそっ、駄目だあれだけはもう嫌だぞ、頼むからいらん事するなよ。」
一人百面相しているオーレンが、落ち着くのに数分間、落ち着きを取り戻した後も不安でそわそわしている彼の異様な姿に三人の疑問は膨らむばかりだった。
「すまん、取り乱し過ぎたな。」
「ホント、何があるんですか?そんな顔してるの見たことないですよ俺。」
フォート彼から剣を習っている分共にいる時間も長い、そんな彼がここまで動揺している所を見たのは、今日が初めてだった。
「支部長が居ないってことは副支部長であるナーネルさんが今、東支部のトップだ。」
「えっ?ナーネルさん受付だったんじゃ?」
「フォート、ナーネルさんは受付業務以外も色々やってるぞ、書類整理とかも、お前達は受付でしか見た事ないけど。」
「そう、だから報告なんかもナーネルさんが見るって事だ。」
「オーレン、問題発生だ、レリラとパルレは既に門を出ていた。」
肝心な話が始まろうとした所で横槍が入る。
ロトンの慌てようから彼らは非常に不味い状態である事だけは理解出来る。
「まじか、すまん、俺はすぐにおわなけりゃならない、、今日の訓練は切り上げだ。」
「そんな、まだ準備運動しかしてないっすよ。」
「わりぃな、その代わり明日からは当分付きっきりで見てやるから勘弁してくれ。」
オーレンが眼前に両手を合唱させ、フォートとフットに誤りを入れてからロトンと共に東門の方へ掛けていく。
「仕方ない、自主練でもするしかないか。」
「僕、お腹すいたよ。」
「フット朝飯食ってたよ、なおかわりしながら、またデブるぞ。」
「筋肉には栄養が不可欠なんだよ、ロトンさんも言ってた。」
「少し体動かしてからクリアとフルーネの方に行くか、昼は一緒にって言ってたしな。」
筋肉バカになりつつあるフットはさておき、何もせずに無駄に訓練場にいるのも勿体ないので、三人は取り敢えず出来る訓練をする事にした。
途中シャーシャが二人が既にホームに居ないことを伝えに来たが、オーレンとロトンが既に門を出て追った事を伝えると全速力で後を追っていった。
「ほんと、なんであんなに慌てる必要があるんだろな。」
「謎だな、青薔薇の皆さんなら知ってるかな?アキラさんは情報にも詳しいし。」
「じゃあ向こう行こうよ、アキラさんのお菓子食べれるかもしれないし。」
フットの食い意地もそろそろ限界のようで、二人も彼の提案には心が揺れたのか同意する。
まだ成人も迎えていない子供、お菓子という単語はまだまだ弱かった。
三人はフルーネが何時も使う、魔法障壁の張られた訓練施設へと向かうことにした。