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閑話〜会員ナンバー10000

そんな役回り過ぎたソーイの為のご褒美話です。

10歳、まだまだ親の加護の元で生きて行くのが当たり前の少年がギルドの門を叩く。


稀有な先天性スキルの為に村の者から距離を置かれ、親からも腫物を扱うように育てられている事を幼い頃から感じ取っていた。


そんな少年が、活動できる最年少で冒険者の世界に身を投じたのは必然的なものであった。


活動を始めて1年はスキルの事もありソロでの活動をこなしていた彼も、周りとの交友関係も深まり何度かパーティーを組んだ事もあった。


しかし、少年の戦闘の姿に恐怖を感じる者、暴走時に怪我をさせてしまう事等続ける事半年、彼はまたソロ活動に戻る。


時に化け物の様に見られ、時に軽蔑の視線を向けられる事に疲れた少年は、何時しか人との距離を取り、引っ込み思案な性格にも拍車がかかる事となった。


「フゥ、フゥ...リャーー。」


息を荒らげ力に任せた暴力で、オークの群を駆逐していく少年、その姿は赤く染まった肌と滲み出る怒りでオーク達を圧倒する。


この近辺では中堅クラスの冒険者が少なく、オークに群で遭遇するこの狩場は人気もなく、少年にとっては絶好の場所となっている。


そんな彼を森の木々の隙間を通して見据える視線があった。


「ねぇ、すっごい子が居るんだけど。」


ショートボブの緑の髪、胸元だけを覆うトップス、その上を皮鎧で覆い、下は短パンと軽装の女が弓を引き、オークの脳天に矢を射ながら視線に映った少年に意識を向け、戦闘を中断する。


「なになに、どんな子?」


前衛にバフをかけ終えて余力が出来た小柄な付与術士の少女が興味津々に彼女へ駆け寄る。


こちらは幼さが残る顔立ちで、見た目も小柄だが他のメンバーと1つしか歳が変わらない、明るく活発的である事が行動から見て取れる。


「凄いわねぇ、オークさんが次々宙を舞っちゃってるわぁ。」


豊かに実った胸の膨らみに杖を沈ませ抱き抱える白魔士の女が。おっとりとした緊張感のない口調で、戦闘開始時から眺めていた光景を口にする。


彼女の明後日の方向を見ながらじっと見つめる姿に気付き、弓使いの女が少年に気づいたのだった。


「なぁ!お前らよ。今戦闘中だって事忘れてねぇだろうな。」


1人大剣を軽く振るい回し、前衛でただひたすら迫るオークを蹴散らしている褐色の大剣使いが苛立ちを隠さずに後衛組へと声を轟かせる。


「ほら、また一撃で吹っ飛ばした、あの細腕でどうやって...」


弓使いの女が、遠く見える少年の姿をじっと見つめ分析しながら考える。


「ねぇ、それよりあの剣おかしくない?何で吹っ飛ぶの?普通あぁなるんじゃないの?」


3人のサボりの怒りを糧に、バフで底上げされた筋力で最後の1匹を脳天から一刀する赤髪の大剣使いを指さす。


頭上から筋を作り、左右へ真っ二つに体を崩すオークの姿と少年が吹き飛ばし血飛沫をあげて潰れるオークを見比べ疑問を口にする。


「おめぇらな、大概にしろよ、こちとら何時も先頭で命張ってんだ、俺が死んだらお前らもゲームオーバーだって事忘れんなよ。」


オークの血に塗れ、長く伸びた赤髪のくせっ毛を気にも止めず、豪快に大剣肩に担いで仁王立ちしながら3人を睨む褐色の大剣使い。


「大丈夫よぉ、私達の頼れる前衛があの程度で倒されるはずないじゃない。はい、クリア。」


白魔士の彼女が軽く唱える魔法により、赤濡れとなっていた体の汚れが消え去る。


「んっ、あぁ、ありゃ暴走少年じゃねぇか、刃を潰した剣を使ってるって話だぞ、暴走鬼だなぁ、恐れられるわけだぜ。」


「暴走鬼かぁ、赤い肌に鬼の形相、ぴったりじゃない、1つの作ってみようよ。」


大剣使いが言ったフレーズがお気に召したのか、付与術士の少女が即席の詩歌を歌い始める。


その歌を繋いで歌うように4人がそれぞれ続きの詩歌を歌って1つの歌を作っていく。


吟遊詩人が歌うような語り部ではなく、ポップな歌い方はこの世界では聞く事のない異世界の音楽に似ていた。


群れの集団を蹴散らし、興奮の冷めない少年はその歌に彼女らの気配を察し、衝動のままに暴力を振るう為向かう。


楽しげに自らを題材とした詩歌を歌う少女達を目に入れた瞬間、彼の体が動きを止める。


理性を失っている筈の少年をも魅了する4人の少女の舞と歌、トラウマとなっている人の叫び、嫌悪の眼差しでしか収まった事のないスキル。


初めての解かれ方に少年は衝撃を受けたのであった。


あれから3年、自分を御せるパーティーに加入し、西支部から東支部へ移動した少年は、彼女達のファン第1号として日々応援を続けている。


「よぉ、ボウ、今回は悪かったな、今日はお前の為に歌ってやるから元気出せよな。」


気さくに縮こまっている少年に肩を回し、健康的でボリュームもありハリのある胸を押し付け、話しかける姉貴的存在ラーダ。


「ソーイちゃんは私達にとっては特別だからねぇ。」


あどけなさと可愛らしい印象が冒険者達にも人気なラーファが、1人落ち込むテーブルの少年を対面から明るい笑顔で見つめる。


「今の私達があるのはソーイちゃんのおかげだものねぇ、しっかり元気になって貰わないとぉ。」


両手の皿にありったけ載せた料理をテーブルへ置いて、上品に食べ始め、みるみる皿をからにしていくフェーテルが食べながら話しかける。


「フェーテル、行儀悪いよ。まっ、あたしらからの昇級祝いだ、個人向けのライブは今まであんたしかした事ないんだから機嫌なおせよな。」


いつも通り肌の面積の多い薄着のティっテが、彼の髪をわしゃわしゃ撫でる。


「えっ...えぇー!ラ、ラリスタ。」


彼へのサプライズと労い、罪悪感からナーネルが呼んだ彼女らが彼の周りを囲む。


「驚いたかよ、俺らのファン1号が苦渋を飲んで頑張ったんだ、祝いに来ないとバチが当たるぜ。」


憂鬱過ぎて死人面だったソーイの表情がみるみる瞳を輝かせ生気を纏う。


「そう言えばさ、ファンクラブ作ったのはソーイちゃんなのに、何で番号は10000なのぉ?」


常々疑問に思っていた疑問をラーファが口にした。


「それは...願掛け、ラリスタの歌が広がりますようにって、叶ったのに、僕は行けなかった...」


思い出せばまた陰りを見せる表情、その言葉を聞いた4人が互いを見返し、そしてソーイへ4つの視線が注がれる。


「こいつわ。」


「お姉さん、泣いちゃいそうだわぁ。」


「闘技場、埋めつくしちゃったんだよ!ソーイちゃんの願掛けのおかげだったんだね。」


「これは、あたしら祝いだけじゃなく感謝も込めて歌わないとね。」


ソーイに、普段見せない照れた表情で、各々の反応を見せる。


「今日はソーイの為に歌うんだし、しっかり聞きなよ。」


彼を元気づける為。


感謝の気持ちを伝える為。


彼女達は歌う、自分達をひたすらに応援してくれた少年を題材にした、暴走鬼の歌の続きを、成長した少年を褒め称える歌を夜の街に奏でる。

この流れでラリスタの話書くとキャラ振れしなさそう

でも、時系列がちぐはぐになるから断念するしかないんですよね

ままならない

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