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姫様、初めてのダンジョン6

 2日目は森林地帯の探索。


 初日に出会ったスカイウルフが主な群れの集まりでもあったらしく、少数の接敵はあったものの順調に探索は進む。


 残念ながらポータルを見つける事は出来ず、拠点にした湖へと戻り探索を終える事となる。


 3日目は前日話し合った結果、隆起した岩場が続く荒野地帯の探索を行う事となり、拠点を片付け一同は荒野を目指す。


 所々に窪地や丘のある不毛の荒野、見通しは悪く足場も悪い人間には動き辛いフィールド。


 「クリア様はリリアナと共にホーライの上での移動でお願いします。」


 流石に成長途中の二人には厳しい足場となっている為、クリアとリリアナは徒歩での移動は困難。


 彼女も足でまといになる事が分かっているので、エリアナの案に素直に首を縦に振る。


 「ここはロックリザード、三色鳥が主なモンスターとなっています、特に三色鳥は私達とは相性が悪く、タチアナ殿の魔法だよりとなるのでお願いします。」


 「んっ……任された。」


 上空を見ればちらほらと滑空する姿が見受けられる三色鳥。


 飛行モンスターは攻撃手段が限られ、今いるメンバーではタチアナだけが頼りとなる。


 「ロックリザードは私達が、丸い岩を見かけたら用心してください、擬態の可能性がありますので。」


 そう言いながら、ゴツゴツしたただの岩にしか見えない丸みを帯びた、岩に向かい拳を打ち付ける彼女。


 岩だと思っていた物は体を海老反りに折り曲げ、前方の岩肌へと打ち付けられる。


 アルマジロに似た、背中の鱗が岩の様なロックリザードが、呻き声を挙げ地面を転がる。


 「動きは遅いですが、擬態での不意打ち、見た目通りのタフさが厄介な相手で、土魔法のロックバレットを使用します。」


 「殺気に敏感なんで、擬態時は攻撃する迄殺気を消すのがコツだな、剣で戦うなら足か顎下を狙う事をおすすめしますよ。」


 痛みに仰向けで足をバタつかせる相手の上へ跳躍し、両刀で顎下の首筋貫いた羅神がエリアナに向かってレクチャーする。


 「背中を両断しては駄目なのか?」


 「おすすめはしません、剣が痛みますし、さっきのは春蘭の気闘拳と馬鹿力があってこそなので……グフッ」


 エリアナの問い掛けに答えた羅神だったが、余計な言葉を口走った為に腹を抑えながら地に伏せる事となる。


 「さぁ、行きましょう、出来れば明日までに調べて終えてしまいたいので。」



 春蘭が手を払いながら、地に伏す羅神を尻目に先を施す。


 「口は災いの元とはよく言ったものですわ、乙女心を勉強する事をおすすめ致しますわ。」


 「ご忠告……感謝致します、クリア様。」


 皆が通り過ぎる中、ホーライの後ろに股がったまま、通りすがりに腹を抑えたまま立ち上がる彼に言葉をかける。


 丘を下り窪地の広場をを進み、時折上空から急降下してきては爪を頭上で走らせる三色鳥をタチアナが落雷魔法で撃破する。


 そうこうしている間に日は傾き、目的の場所が見えて来る。


 「あそこが今日の野営地です、冒険者が用意した洞窟なのですが、広さは十分あるので快適に過ごせると思います。」


 前を行く想遊が指を指し示す方向には、小高い丘の麓に人為的に作られた洞窟が見えた。


 「急ぎましょう、魔力の放出が始まる前に中へ入らないと三色鳥が群がって来ますから。」


 春蘭の言葉と共に全員が洞窟へ向かって走り出し、たどり着けばアキラが入口へ例の石像を置いて入口を塞いだ。


 「やっぱりこれは便利ですね、強襲の心配が無いだけでゆっくり体を休められるし。」


 「持ち運び出来ないと使えないのが難点だけど、やっぱりアキラさん欲しい。」


 冒険者にとって休息を取らなければない数日の依頼は、寝る時まで気を張り続け無ければならない。


 その為今回の依頼でアキラの活躍は相当なものである、妬ましそうに彼を見つめる羅神と想遊。


 その視線を遮るように、彼の前で手を広げるタチアナが睨みを効かせる。


 「あげません。」


 溜息を着き、野営の準備を始める二人を見ながらアキラが苦笑いを浮かべている。


 「桃華さん、貴女に聞いてみたい事がありますの。」


 彼等の野営する度に見る光景等気にもとめず、クリアが桃華の隣へ赴き問いかける。


 「な、何でしょうかクリア様。」


 急に声を掛けられ緊張気味に少し震えた声で答える彼女、敢えてスルーしながら、クリアは言葉を続ける。


 「私祈祷術に興味がありますの、詳しく教えて下さりませんか?」


 「祈祷術ですか?」


 「はいですの、魔力は多いらしいのだけれど、魔力運用が出来ないらしくて、祈祷術は魔力を運用はしていませんわよね?」


 自分の欠点を言うようで恥ずかしそうに小声で呟くように話すクリア。


 「魔力道障害なんですねクリア様、確かに祈祷術は契約した神に魔力を捧げて行使するので、魔力を放出したりかけ巡らせる必要は無いですね。」


 魔力道障害とは魔力を使用する際に通す道の事で、ごく稀に魔力道が細く、魔術に必要な魔力運用が正常に行えず魔法が使えない病気である。


 「それはやはり、それなりの才能が必要なのでしょうか?」


 「才能があって困るものでは無いですね、私の神楽闘舞は魔力を捧げる量を増やす事も出来ますし、でも、祈祷術に必要なのは神との契約でしょうか。」


 「神との契約?」


 「神に気に入られると言った方が良いかもしれません、気に入って頂いた神が祈りに応え、魔力を貢物に能力の一端を使ってくれるみたいな感じです。」


 黒蝶の出身地で知られているだけで祈祷術を使える者は少ない、しかし、居ない訳でもないので桃華はクリアへ術の詳細を話し始める。


 「神に気に入られる、それはどんな神でもということですか?」


 「明確に説明出来ないのですけれど、多分、どんな神でも力を貸してくれるなら使用可能になると思いますよ。微妙に能力は違いますけど。」


 「私冒険者になりたいのですわ。」


 「その為にこの依頼を出されたのですよね。」


 覇気を感じさせる勢いで宣言するクリアに対し、桃華は少し気圧されながら言葉を返していく。


 「その為に必要な力をつけられるなら、神に気に入られてみせますわ、なので私に祈祷術を教えて下さらない!」


 「依頼後になりますけれど、依頼としてならお受けしますよ。しっかり依頼料は貰いますけど。」


 「ありがたいですわ、では、依頼達成後また指名依頼で出させて頂きますね。」


 「はい、クリア様ならきっと使える様になる気がします。」


 クリアの新たな目標が出来、冒険者としてのスタートラインに経った日。


 その夜は、ダンジョン内とは思えない明るい声が反響し、辺りにこだまさせ夜は更けていく。

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