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姫様、初めてのダンジョン2

 1日悩んだ結果、青蓮華パーティーと黒蝶(こくちょう)パーティーが依頼を請負う事となった。


 焔に当初依頼を出す予定だったのだが、彼らは先週の終わりからダンジョンへ潜ったままであった為、都合がつかず黒蝶が第3候補として依頼される事となった。


 青蓮華のメンバーは元々貴族出身であり、メンバー全員が礼儀作法に精通している事もあり、C級パーティーではあるが今回の依頼に声が掛かった。


 もう1つのパーティー、こちらは実力的に選ばれたメンバーであり、B級パーティーとして実績もある黒蝶。


 リーダーの春蘭(シュンラン)、職業はモンク、長い黒髪を背後で一括りに纏め、黒を基調とし右胸に薔薇の留め具があしらわれたシーレン(見た目チャイナドレス)と呼ばれる服をを着こなす。


 想遊(ソーユ)、こちらも職業はモンクであるが、春蘭が攻撃特化ならば、こちらは回避特価のタンクの役割を担う。


 小柄な見た目で頭に纏めた2つのお団子髪が可愛らしい女性、桃色のシーレンを着こなしている。


 羅神(ラシェン)、二刀の刀を使う剣士職、胸をさらけ出すように道着を身に着け、長身の礼儀正しい青年、線の細い見た目ではあるが鍛えられた身体をしており、細マッチョな男。


 桃華(トーカ)、祈祷という祈る事で奇跡を起こす回復職、巫女服を来ており、両サイドに伸びる細いツインテールのウェーブがかったヘアスタイルが特徴だ。


 黒蝶は南方の国出身で、礼節や礼儀を重んじる武闘が盛んな国の出身であり、東支部でもまだまともな部類の冒険者なので今回選ばれる事となった。


 彼らにも問題はあるのだが、ストレラが考えられる中ではかなりまともな人選が出来たと思っている。


 「黒蝶のリーダーを務める春蘭と申します、今回は宜しくお願いします。」


 フレメラスダンジョン入口、護衛も兼ねてここまで同行していた姫様と青薔薇、そこへ黒蝶のメンバーが合流し、春蘭が両手を眼前で握り頭を下げ、独特な挨拶する。


 「これはご丁寧に、アーメス王国第3王女、クリア・フォン・アーメスですわ。」


 依頼に東支部を訪れたようなお姫様スタイルではなく、軽装、ミニスカート、腰には彼女でも使いやすいショートソードが下げられた冒険者スタイルになっている。


 クリアは春蘭の挨拶に、スカートの裾を軽く摘み見事なお辞儀で応えるが、流石お姫様、冒険者スタイルであっても滲み出る高貴なオーラが漂う。


 クリアの装備に関してはストレラが用意した物、メルディーのお下がりではあるのだが、その簡素な見た目の割に性能は相当な物となっている。


 「私達黒蝶は礼節に関しては叩き込まれておりますが、宮廷の様な礼儀作法は疎いところもあります、御無礼もあると思いますがお許しください。」


 「構わないですわ、ゆくゆくは同じ冒険者となる身の上、畏まらず普通に接して頂いて結構なのですわ。」


 王族である相手にフレンドリーに接する等到底無理な話ではあるのだが、クリアは相手を見下す事もなく、対等な立場、寧ろ相手を敬う態度で春蘭に接する。


 「私は青薔薇のリーダー、エリアナだ、今回は宜しく頼む。」


 「青薔薇の赤き騎士か、噂は聞いている。かなりの実力をお持ちだとか、こちらこそ宜しく頼みます。」


 クリアの挨拶が終われば、背後で控えていたエリアナが春蘭の前たち手を差し出す。


 春蘭もその手を握り挨拶を交わすが、その目は相手の実力を値踏みする様にエリアナに注がれる。


 それから挨拶も程々に、依頼内容の確認の為に席が用意される。


 「まぁ、やっぱりアキラさんのお茶は美味しいですわね。」


 ダンジョン入口となっている廃れた神殿跡地の広場、その瓦礫が広がる石畳の広場はちょっとしたお茶会場となっていた。


 周りの景色とは不釣り合いなシルクのテーブルクロスが敷かれたテーブルが3つ、上等なティーセットと茶菓子が用意されたテーブルでそれぞれのメンバーがお茶を楽しんでいる。


 クリアのおつきが同行していない理由かここにあった。


 前日の夜、依頼に伴いアキラは1つの高級宿に呼び出された。


 お付の2人を連れて行かないために内々にクリアがストレラに頼んだ策、身の回りの世話を出来る者を用意する事。


 納得するだけの人材が、冒険者にいる筈が無いと踏んでいた2人のお付、クリアがそんな2人に賭けを申し出た。


 認める者がいればその者に任せ、2人は街で留守番するという内容だ。


 ストレラから聞いていた通り、優秀な実力を持つアキラの従者スキルはクリアでさえ感嘆する程の能力であり、それを見せられた2人は約束通り留守番する事になった。


 「それでは内容の確認なのですが、我々は姫様の護衛をしつつダンジョンの探索をすると言う事で宜しいでしょうか?」


 「クリアです、命を預け合うのが冒険者なのでしょう?私も仲間として扱って頂きたいですわ。」


 「し、しかし。」


 エリアナはこれでも一国の騎士団を率いる長である。


 それが少女の戯れだと言われていようとも、騎士としての心持ち、騎士道を重んじるプライドがある。


 「硬いですね、エリアナ殿。どうであれ私達は今は冒険者、依頼主の要望には応えねばならない。しかし、冒険者にもルールがあります、依頼者である貴方様を同列にする事は出来ませんのでクリア様と呼ばせて頂きたい、これでも御容赦願いませんか。」


 「そうですか、仕事としての区切りは付けなければならないのですね。では、それで許しましょう。」


 春蘭からの軽い擁護がありながらエリアナは話を進める。


 「それではクリア様、依頼内容の方は他にご要望がありますか?」


 「そうね、出来るならば進める所まで進みたいわ、あなた達の依頼の様子を見てみたいし、戦闘も多く見させて頂きたいのですわ。」


 「フレメラスは深さより広さが有名なダンジョンです、5日であれば私達ならば半分の5階層には到達出来るでしょう。」


 「1日、1階層のペースなのね。」


 クリアの言葉に少し思案の間があり、春蘭が私達を強調しながら普段の推定進行度を口にする。


 「クリア様、黒蝶パーティーならばの話です、情報等のかっては春蘭さん達がいますけれど、ランクの劣る我らは更に遅くなりますし、クリア様を護衛しながらと言うともっと時間が掛かります。」


 エリアナが春蘭の言葉の意味をそのまま受け取るクリアへ補足として細かく説明を付け足す。


 「では、今の状況ならばどの位ですか?」


 「私達黒蝶は個々で行動が出来る為特殊なので、団体で考えると1階層を隅から隅迄探索するだけで精一杯かと思います。」


 広大なフィールド系ダンジョンでは黒蝶は分散し次の階層への入口を探す、毎度ダンジョンの気まぐれで変化する入口はどうしても探索しなければ見つからない為、彼らはこの手段を取っている。


 「ただし、運良くすぐに次の階層へ行ければ2階層も探索出来るとは思います。」


 「初めてのダンジョンだと冒険者はどうするのかしら?」


 クリアの疑問に、エリアナが答える。


 「我らであれば階層全体をマッピングします、フィールドは階層ポータルは移動しますが、地形等は変化しませんので地図を自分達で作った方が次へ繋がりますので。」


 「私達も同じですね、情報は冒険者の生命線でもありますし。」


 「では、1階層の地図を作りましょう、先人に従うのが冒険者として生きて行くために必要な事と、ストレラ様も言っていましたわ。」


 昔聞いた冒険者の話の中に出てきた彼の言葉を思い出し、クリアは無茶をせず出来る限りの体験をする事に決める。


 全てが決まれば後はダンジョンに潜るだけ、事前の相談を終えたクリアはダンジョンへ初めて挑むのだった。



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