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特S級の指名依頼4

 西側門を出ればトートレス王国、フーラン魔法国家に続く街道が伸びている。


 今回の依頼は、両国へ別れるY字の街道に挟まれた山岳地帯の1つの山が目的の場所だ。


 西側は要所要所に高ランクのモンスターが出没する地域が点在しており、今回の山岳地帯もその一つである。


 貴重な鉱石の取れる洞窟が広がるアーロム洞窟、鉱石資源が豊富であり、稼ぐにはもってこいの場所であるが、ゴーレムや軍隊ネズミと言った手強い相手が出没する。


 中でも希少種のミスリルゴーレムと出会った場合、ギルドは逃げる事を推奨している。


 狭い洞窟内で、物理、魔法ともに抵抗力が高く、長期戦を覚悟しなければならない相手と戦うのはリスクが高く、欲を出した冒険者は、周りを他のモンスターに囲まれ命を落とす事となる。


 その洞窟の上に存在するいくつかの山々が連なる山岳地帯、殆どが山肌の地表が見えており、鳥類モンスターと爬虫類モンスターの縄張りとなっている。


 中央に位置する3つの山々、フォントム山にはワイバーン、タリック山にはロックバード、コネロル山にはサラマンモドキと単体ではB級扱いのモンスターが群生している。


 隠れる場所もなく、各モンスターが群れで存在する3つの山は、脅威度はランク指定になっており、わざわざ危険を犯し其方へ狩りに行く者はいない。


 その3つを囲うようにそびえ立つ山に、群れを追われたはぐれモンスターが根城にしており、主な狩場はその4つの山で行われている。


 今回目的のグリフォンが住み着いた山も、その中の1つであり、トートレス王国側に位置する山である。


 馬車で2日掛かる距離に位置し、緑も多く森がなだらかな中腹に生い茂り、B級冒険者が好んで狩場にしている場所である。


 西門に集まったシュウと奥サマーズの合計7名、今からそこへ向かうというのに、全員野宿用品すら持たず、馬車の姿も見当たらない。


 西門を潜り通り過ぎる他の者たちが彼らの出で立ちを横目で見ながら過ぎていく。


 この世界では浮きまくりなスーツ姿のシュウ、少し後ろには、街で見かける店の女主人達がフライパンやらおたまを、冒険者の防具に身を包み持っているのだから気になるだろう。


 彼らの歪さを突っ込んでいても終わりは見えない、スルーしておくのが得策である。


 そんな不思議集団は何をしているかというと、足を待っている。


 「おや、来たようだね、あの黒光りするフォルムはやはり美しい。」


 太陽光の光を反射し黒い影が彼の方へと高速で近づいて来ては、爆風を西門出口で巻き起こし、門番達の警戒心を一気に引き上げる。


 収まった砂埃の中から、巨大な鳥型のモンスターが4羽現れる。


 ブラックリップバード、黒蝶真珠(ブラックリップパール)の様な光沢のある黒い羽根からそう呼ばれる様になったモンスター。


 別名をブラックコットンバードとも呼び、魔力により硬質化した羽が数十枚集まり1枚の巨大な羽根となっており、聖属性魔法により魔力が中和されると柔らかな綿の様に膨れ上がる。


 その羽根は女神の寝床とも呼ばれ、最上級の寝具とされている。


 聖属性さえ使えれば問題の防御力を大幅に軽減出来、討伐が安易な割に素材が効果という事もあり、乱獲が進み今では絶滅されたとさえ言われているモンスターである。


 「やぁ、ミス、レティー、遥々呼び出してすまなかったね。」


 「ピュー、ピョー。」


 シュウの挨拶に先頭に立つ、一際大きな一羽が笛を奏でるような鳴き声で応える。


 「ミスターレティオはお留守番かな?子供達も大きくなったね。」


 久しぶりの再会に彼の顔に自身の頬を擦り寄せるレティー、彼女の頭を優しく包み込み抱きしめ抱擁するシュウ。


 「今回は僕達をトートの山まで乗せてって貰いたいのだが良いだろうか?」


 「ピュッ、ピュー。」


 乗せることを喜ぶように鳴き声を鳴らす彼女へ感謝するシュウ。


 彼の女性に対する態度は、人間であろうとモンスターであろうと変わらない。


 女性として扱われる事が少なくなってしまう、奥様が彼に夢中になるのはそういった紳士的な態度が理由なのだ。


 「お騒がせしたね、問題は無い、僕のテイムモンスターだ。それではお仕事頑張ってくれ、門兵殿。」


 レティーに跨り圧倒された門兵達へ労いの言葉を零すシュウ。


 他の子供達にも奥サマーズのメンバーが2人ずつ乗った所で、4羽のブラックリップバードは豪快に羽を羽ばたかせ上空へと舞う。


 巨大な黒い鳥が西へ飛んでいく姿はトレイヤの街中からも良く見え、西の冒険者支部が一時慌ただしくなった事は、当の本人達が知る所ではなかった。

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