ラリスタの温泉ライブ
クイーンスライムの体液がそこら中に飛び散った掃討戦。
残存のスライムも滞りなく討伐されたが、辺り一面白い液体で目も当てられない状況と化していた。
「ふふん、見なさい、私の完璧な手加減を。」
「なぁにが手加減だこの馬鹿やろう。この状況どうしてくれるんだ。」
白い液体で身体中を白く染めるレリラ、誇らしげに胸を張る彼女にオーレンの拳が頭に落ちる。
ドロっとした白い液体に塗れて居ようとも、彼女にはお色気の雰囲気は無いのであった。
「痛いわね、何よ、結果が全てでしょ。」
「この惨状を見ても言えるお前に感服すら覚える。」
辺りの状況を見ながら頭を抱えるオーレン。
そんな彼が見る景色は困ったものであった。
「あらあらあらぁ、大変なぁ、事になっちゃったわねぇ。」
「ドッロドロだよ。フェーテルゥ、クリアかけてぇ。」
「これが爆裂焔の血染めの原因か…」
ラリスタのメンバーは白い体液の水溜まりに尻餅をつき、白く染まる身体にこびりついた液体を振り払おうと手で払い退ける。
しかし、粘性の強い液体は払おうとした手にまとわりつくと糸を伸ばして剥がれてくれない。
フェーテルに関しては胸元から覗く谷間に流れ落ちていく様が男心を擽る。
白濁塗れの女性陣がそこら中に存在する異様なダンジョン、その光景は男達にとってはご褒美だったかもしれない。
ただ、邪な思考を巡らせた者には各々のパーティーメンバーからの制裁が待っているのだが、今はまだパラダイスを楽しんでいる。
「まぁまぁ、レリラちゃんのおかげで事なきを得たんだし、そう怒らない、怒らない。」
「すみません、うちの爆弾魔がご迷惑を、メルディーさんは無事だったんですね。」
「うん、少し飛び跳ねたのが足にかかった位だったよ。」
1番近くにいた筈の彼女だったが、迫り来る体液を一太刀で切り伏せ、ぶっかかる事は避けたのだった。
ただ、飛び跳ねた白い液体が彼女の股下にかかり、今も健康的な太腿を垂れ流れて妙な想像を掻き立てられる状態になっている。
最前線にいたソーイとラーダだが、メルディーの一太刀で方向を変えた液体に飲まれ、少し後方へと流されていた。
オーレンが流されなかったのは、想像していた通りの結果が起こった為に耐えられたのであろう。
流された先には髪も服も所々に汚されたラーダと、そのラーダの張りの良い胸に顔面を押し付けるソーイの姿。
ソーイはあまりの刺激に狂人化は解け、目を回しながら意識を失っているようだ。
「おいっ、ソーイ、どうした、何処か頭でも打ったのか。おい、大丈夫か?」
ラーダが彼の様子に心配し、肩を大きく揺すり、意識のないソーイの体が揺さぶられる。
彼が自身のせいで幸せそうな顔を浮かべながら気を失っているとは微塵も理解してはいない。
「どうするんだこの惨状、これじゃ、この後が大変だろう。」
「な、何よ、大丈夫よ。ここは温泉ダンジョンじゃない、このまま続行よ続行。」
そもそも、このダンジョンの異変に対処する為、集まった冒険者の殆どはある目的の為に依頼を受けている。
ラリスタが依頼を受けたのもその為。
彼女達のファンクラブ会員が、イベントの為に急いぎ解決したのだから、こんな状況になったとて諦める人間はほとんど居ないだろう。
巻き込まれたパーティーメンバーはなんの事か分からないかもしれないが…
「仕方ない、トーテムのメンバーは資材の確認を、大道具を持ち込み次の階層に向かってくれ。」
フルプレートメイルに身を包むトーテム、彼等は鎧さえ脱げば体液を除去でき、すぐにでも作業に取り掛れる為先行してもらう事にする。
「他、施設班は階段横に更衣室を仮設、その他物品の提供場所も準備してくれ。」
オーレンの声に何人が疲れた身体を奮い立たせる。
立つのもやっとだった彼等だが、これから行われるイベントに誰もが闘志を燃やす。
退避していた人間も早々に、広くなった4階層に再び集まり、資材の運搬、店を広げ出す者等が現れてくる。
「なぁ、何が始まるんだ?」
「さぁ、分からないな。さっきより殺伐としてる奴も居るんけど、どうなってんだろうな。」
取り残さるのは何も知らずに参加した冒険者、周りの異常に高まる熱気は先程よりも鬼気迫るものがあり、討伐に参加した槍使いと大剣持ちも困惑している。
「知らないのか、兄ちゃん達。」
そんな彼等に声を掛けるのは、風呂敷を引いた地面に品物を並べる1人の商人。
「祭りだよ、祭り、ライブっちゅう祭りが開かれるんだ。あんたらもどうだい?今なら入場に必要なチケットも一緒に購入で割引しとくよ。」
そう言って、商人は店頭に並ぶ商品を2人に進めるのだった。