モンスターハウスの掃討戦3
「おいっ、C級以上はまだ動かないのかよ。」
「そうだな、結構劣勢な気もするんだが…」
例えスライムとはいえこの数、それも上位種である軍隊の様な数の相手を前にD級冒険者だけでは体力の消耗も激しい。
しかし、後方に控える冒険者達は未だに動く気配がなかった。
「そろそろ、俺もバテてきたぜ。」
大剣使いの一撃の威力はなかなかなものだが、今相手にしているスライム騎士等はそれなりに防御力があるものの、彼の攻撃は過剰ダメージでもある。
その分、一振一振に使う体力も大きく、見るからに体力の消耗も激しいようだった。
「くそっ、息が切れてきやがったぜ。」
肩で息をし、呼吸を荒くしながらも、無数に迫るスライム騎士へ目掛け大剣を持ち上げては振り下ろすを繰り返す。
そんな時彼の体が光に包まれる。
「これは…」
「支援部隊の回復か、ありがたい、これでまだまだやれそうだな。」
それなりにある距離を超えて厳選に戦う者達に癒しと支援魔法がかかる。
この距離で支援出来る使い手は早々居ないのだが、東の冒険者はそこら辺がかなりチートレベルな者が多い。
「よし、D級は左右へ転身、C級B級突撃、D級魔法使いはマナ回復後にD級部隊の援護に回ってくれ。」
スライム騎士と魔術スライムの先に新たに見える上位種を確認後、オーレンの声が空間に響き渡る。
大剣使いや槍使い達の間を駆け抜ける学ラン部隊、C.D級部隊の大半は冒走族クランに属している。
その為、絵面は場違いなものである。
ヤンキールックの学ランを着たいい歳の男女が、テンション高めに叫びながらスライム達を蹴散らす、想像せずともカオスである。
「いや、やっぱり東支部は色物なんだな。」
「連携や行動が一流なだけギャップがすげぇぜ。」
余力が出てきた分他に視線をやる余裕が出来た2人も、その情景に圧倒されながら見守る。
圧倒的なスビードで敵陣の真ん中を貫き、瞬く間に後方へと道を作る冒走族のクランメンバー。
その先に一際巨大なスライムが姿を現す。
「グラトニースライム…」
「あんなのまで居るのかよ。そこらのモンスターより危険な部類だろ。」
開けた道の先、そこには黒の巨体を震わせ、這いずる度に仲間のスライムも飲み込み歩く災害と言われるA級指定のグラトニースライムが3体。
冒険者の中に動揺が走る。
予想以上の戦力、ギルドの予想を遥かに超えるスピードで状況が悪化して居る事は明白であった。
「流石に俺達だけであれは対処出来るか…」
オーレンの顔にも不安の表情が過ぎる。
A級冒険者パーティーは焔しか参戦していない。
個人ランクがA級の者も数人、実力的にそれに近いもの達も数人いるが、それでも対応するには戦力が足りない程の相手。
オーレンの考えでは戦力不足、用意していた切り札を使うべきか迷い後方に続々集まる人影の中を覗く。
しかし、その瞬間、前方で黒い影が壁と壁を横切る、2つの黒いオーラを纏った投げナイフを残し。
その影は一瞬だけ姿を現しただけだが、2体のグラトニースライムを投げナイフ1つで瞬く間に討伐してしまう。
その姿を捉えたのは実力者だけ、それも一瞬認識出来た程度であった。
「あんな手練誰が送り込んだんだよ。」
A級パーティーがフルパーティーで相手取る敵を瞬殺した何か、それが出来るとすればS級レベルの実力者であろうが、彼らのメンバーにそんな者はいなかった筈である。
「考えるだけ無駄だ。取り敢えずあと一体倒すぞ。前衛は畳かけろ、後衛は支援、留めは魔法職の集中砲火。」
流石にA級パーティーのリーダー、切り替え早く指示を出し残った一体を全員に指示を出し戦闘を開始する。
グラトニースライム討伐で気をつけなければならない事、それは触れないという事だ。
触れた先から食い散らかすグラトニースライムは物理で倒す事はほぼ不可能。
エンチャント攻撃等で軽減出来るが、巨体によりダメージを与える事は出来ない。
先程の投げナイフの異常性がよくわかる。
前衛職は風のエンチャントを受けて一撃離脱でグラトニースライムの体を削っていく。
黒い体で光る赤い核が段々とその姿を顕にしていく。
そこへ、炎や氷の矢を作り出した魔法部隊が同時に集中砲火し、グラトニースライムの核が粉砕される。
「おいっ、見えたかあれ?」
「俺に聞くなよ、気づいた時にはグラトニースライムが2体朽ち果てていく瞬間だったんだからよ。」
遠目に見ていた大剣持ちと槍使いの2人。
何が起こって2体が瞬殺されたのかも分からないまま、突如湧き上がる後方へ視線を向ける。
そこには数百の一般人やら冒険者が集まり戦いを観戦していた。
「あれなんだろうな。」
「俺に聞かれても分からねぇぜ。」
ご最もと槍使いも考える事を辞めた、未だに残るスライムも大半が片付き、AからC級の者も掃討に加わった為みるみる数を減らしていく。
粗方片付いた所で後方の支援部隊から叫びが上がる。
彼らに皆の視線が惹き付けられるが、すぐ様見据える方向へと視線を移すこととなる。
巨大な空洞を揺るがしながら這いずる音に引かれ。