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異世界人のポーター3

少し仕事の兼ね合いで遅れがちになっているこの頃、読者の皆さんお待たせしてすみません。

 彰がラクシリオン家に客人として招かれてから数ヶ月、あれからお嬢様に気に入られ侍従になったりと色々な事があった。


 こちらの生活にも慣れ、お嬢様方に振り回される日々を送る彼。


 「アキラ、ティータイムにするからお茶の用意をしてくれ。」


 首にかける通信石から声が聞こえる。


 声の主の要望に即座に今までやっていた掃除を切り上げ、呼ばれた相手の所へと歩みを進める。


 「エリアナ様、お待たせしました。」


 「遅い、何をしていた。」


 切れ長の目、赤い肩まで伸びる髪、凛とした貴族のお嬢様が腕を組み、待たせられた不満を口にする。


 エリアナ・フォン・ラクシリオン、ラクシリオン家長女であり、彼女自身が設立した赤蓮華と言う騎士団を率いる17歳の少女。


 アキラの事は弟の様に思っているが、ラクシリオン家長女としての振る舞いを心掛けて来た為、侍従である彰に強く当たる事が多い。


 彼女の中で彰の評価は弟以上なのだが、彼女も彰もその事に気づく事はない。


 「いえ、掃除中だったので、これでも急いだつもりなんですけど。」


 「お前は私達の専属侍従だ、他の仕事は他の者に任せろと言っているだろう。」


 「いやいや、僕も使用人なので、手が空いている時はお手伝いしないとですし。」


 「それで遅れていては言語道断じゃないか。」


 ご最もであるが、特別扱いをされては居心地が悪い、彰の性分なので本人にその意思がなくとも手伝いを申し出でしまうのだ。


 「ほら、レナイドルさんだって、あれこれとこなしているじゃないですか。」


 「彼は父の従者であるが執事長だ。多忙ではあるが全て完璧にこなしている。」


 「仰る通りです…僕も完璧にこなすせるよう精進します。」


 彼女なりの無理をするなとの温床なのだが、もっと励めと彼は捉えたようである。


 自身の心情とは真逆の結論に至る彰、そんな彼に呆れはするものの、そんな所が好感を持てるリゼだった。


 エリアナにお茶を出した後、次へ呼ばれたお嬢様の所へと足を向ける彰。


 彼女の部屋に着き扉をノックする。


 「タチアナお嬢様、アキラが参りました。」


 「んっ…入って。」


 タチアナ・フォン・ラクシリオン、この家の次女で空色の瞳を持ち、青いショートボブ、魔法の才が特出しておりこの国では有名や魔法学園を16という若さで今年卒業する事が決まっている。


 「えと、なんのようでしょうか?」


 「…。もう昼を過ぎている…」


 「そうですね、良い天気なので、散歩なんかしたら気持ちいいと思いますよ。」


 「そう、散歩。」


 (んっ、タチアナ様は言葉が足りないんだよな。初めてあった日は一言も話して貰えなかったけど、大分マシになった方か)


 姉妹に隠れ、目を合わせもしてくれなかった彼女を思い出しながら一喜一憂する彰だったが、それよりも忘れていた事を思い出す。


 「はっ、す、すす、すみません、散歩の約束朝でした…待ってましたか…?」


 最後に呟かれた言葉に思い出した約束、朝起きたら散歩に付き合うと、昨日の約束を思い出し青ざめる。


 「大丈夫…待ってない。」


 「いや、でも外套…」


 「待って、ない。」


 頑なに否定するタチアナ。


 彼女、今日は日の出もまだの時間から、乳姉妹である御側付きのリシャと用意して待っていた。


 そう、今の今まで待っているほどに、淡い恋心を彰に抱いているが、それを彰が知る由もない。


 「タチアナ様、良ければ僕が世話した庭の花が咲いたので見に行きませんか?」


 流石に待っていた相手に、今から行きましょうと言える程豪胆ではない彼、他の理由を作り誘い直す事にする。


 「花…見たい…」


 少し頭のくせっ毛が跳ねる、彼女の機嫌が伺える唯一の手段を視線に捉え、安堵しながら彰は彼女を庭へと誘うのであった。


 夜、彰が使用人室で1人ベットへ寝ていると扉が静かに開く。


 「アキラ、眠れない、一緒に寝て。」


 「リリアナ様、またですか?分かりました、では、お嬢様のお部屋に戻りましょう。」


 末娘であるリリアナ・フォン・ラクシリオン。


 彼女は12歳と甘えたい年頃であるが、貴族のお嬢様とは成熟も早い、しっかりしなければならない貴族教育が甘えを許さないが、彰にだけは甘える事が出来るらしい。


 父であるラクシリオン子爵も、リリアナには甘えて欲しいが、職務に多忙な彼が甘えさせてやれず、彰に任せる事にした。


 普通は使用人の部屋に2人っきり等、貴族として許されない事であるが、リリアナの大人び過ぎた態度を悲観的に思う屋敷の者全員が、彼らの黙認する事にしている。


 「今日は何のお話してくれる?」


 「そうですね、それでは色んな不思議な道具が出てくるお話をしましょうか。」


 彼女をベッドへ寝かし、眠りにつくまで元の世界のアニメ等の話をしてあげるのは今では彰の日課となっていた。


 それから半年、エリアナが急遽、赤蓮華隊を休隊、タチアナと共に冒険者になり、鍛える為5年の猶予を与えられる。


 条件として彰も同行する事になるが、そこへ彰と離れたくないリリアナが、初めて駄々を捏ねるという騒ぎが起こり、彼女も参加する事になる。


 これが、Cランクパーティー青蓮華の結成であった。





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