異色パーティーの昇格試験2
1つの話を週に1度終わすのが目標
今現状の仕事ではちょっと厳しいのが本音だったりします
1日目、彼らの護衛の旅は何事もなく道中を進める、本来何事もなければ半日で辿り着く距離ではあるのだが、指定経路はやけに遠回りや蛇行を繰り返す為思うように距離を稼いでいなかった。
「リーダー疲れたぁ、そろそろ休ませてよ。」
「そぅだねぇ、そろそろつっかれて来る頃、休んで置くのもたぁいせつだぁね。」
2人のやり取りに休憩を挟む事になった一行。
荷馬車は止め、スティッドは桶を馬の前に置き、樽に入った水を注いで与え始める。
「てかさ、このあぜ道進む意味ってあるの、私補助職何だけど、運動苦手何だけど。」
「ただこねないでぇよ、私だって戦闘職とはまぁたく程遠いんだからぁさ。」
森林地帯に囲まれる辺り、洞窟系ダンジョンが点在する地域であり、初級冒険者向けの低ランクダンジョンを多く存在する比較的安全な地域である。
木陰になった岩に座りながら休息をとる2人、そんな2人をチラ見しながら馬の世話をするスティッド。
今回の試験依頼に付属された上の思惑、それは新たな流通経路の選定であった。
最短距離の確立された流通路はあるものの、近隣のダンジョン難易度も高く、ダンジョン外にもモンスターが出現する為被害もそれなりに出る。
ならば何故、彼らがいるこの場はモンスター出現率が低いのか、これにはダンジョンの特性が大きく関わる。 ダンジョンとは魔力により魔の者を引きつける習性があり、難易度が高いほど範囲が広くなる。
その為、ある水準を超えてしまうとダンジョン内だけに閉じ込められるモンスター達がダンジョン外での行動も可能になってしまうのである。
現在の流通路にランクが上昇したダンジョンが出来てしまい、危険度が増した為、新たな流通路を作らなければならない状況になった。
丁度良く使える冒険者が現れたので、本部は彼らの昇級の対価に付属の依頼をつけて足元を見たのだった。
「ねぇ、これってギルドの要請依頼よね、私達都合良く使われてるじゃない。」
マーティンが何となく察した真意にスティッドを睨む。
「しょうがないさぁ、私達の試験ゴリ押しするためぇの仕方ない事だったのさぁ。それに、試験依頼とは違い報酬もそれなりに出ているんだかぁらね。」
「俺に言っても何も無いぞ、支部長にでも後で文句言えよ、俺はお前らの査定しか仕事に入ってないんだ。」
嫌味を含んだ擁護にスティッドが責任を求めるなと言葉を告げる。その通りであるからそれ以上言わないロンド。
ただ、支部へ戻った時、マーティンの殴り込みを止める事が無いことだけは確定した。
「まぁ、良いわ、それは後で文句言うとして、リーダー、そろそろ情報頂戴よ、あんたがいつも冒険者は情報が命って言ってるんだから隠しはしないわよね。」
「あららぁ、マーティンもやぁっと情報の大切さに気付いてくれたぁね。」
何時も通りの変な伸ばしをいれる口調でにこにこ笑うロンドにマーティンが青筋を入れて睨む。
「分ぁかってるさぁね、この辺りかぁな、ここら辺で、最近異様に行商が狙われる噂が流れてるのぉさ。」
十中八九盗賊の仕業なのだが、流通路の迂回路として最適な箇所であり、護衛冒険者によって襲うか判断している節があり、荷だけを盗み人的被害は出ていない。
「ただの狡がしいこい盗賊じゃない。」
「商人も冒険者も揃ってモンスターの群に襲われたと言っているらしいぃよ。」
「迂回路にモンスターっておかしくない?ここもそれ程ダンジョンランク高くないし、徘徊モンスターなんて。」
地図に示された場所、中から初級冒険者が好んで依頼を受ける為に足を運ぶダンジョンが多い地域であり、危険区域をやり過ごせる使い勝手のいい迂回路が存在する。
そんな場所でモンスターの群に襲われるというのも疑問だが、人的被害が無いのもどうにもおかしな話ではあった。
「モンスターの討伐迄あるなんて、試験難易度高すぎじゃないの。」
「面白そうだから良んじゃなぁいかな。ソーイの鬱憤ばらしにはもぉってこいだし。」
「まだ、何か隠してるわね、まぁ、良いわ、あんたの事だから全部掌の上何でしょ。」
依頼中のロンドより頼りになる存在が居ない事をマーティンは知らない、武力は兎も角、知略戦略においてこの男の能力に疑う余地はないのだ。
「おぉい、そろそろ動き出さないと今日中に関所までつけなくなっちまうぞ。」
不穏な気配を漂わせるきな臭い試験に面倒くさいと毒を吐くマーティンを引っ張り、ピエロパーティーとスティッド一行は先へ進み始める。
休息から1時間程歩くと問題の現場は目と鼻の先である。
森林を抜けた先、砂に埋もれた瓦礫後、所々に見える柱だったであろう建造物の後、遺跡ダンジョンが多く、冒険者の影も少ない非人気地域がこの辺りの特徴である。
不人気の原因はモンスターの種類にあった、遺跡ダンジョンに高確率で出現するのが不死者なのだ。
実入りにばらつきもあり、それなりの準備も必要となれば冒険者の数も自ずと減少する、悪巧みをするなら絶好の場所なのだ。
足を取られる砂に埋もれた交通路、時折舞い散る砂が目に襲いかかって進む者達に嫌がらせをする。
「もうやだ、服の中に砂入る、どうにかならないの。」
「どうにもならないの、あぁたの膨らみじゃそこまで入らないじゃなぁいさ。」
ガンッ、と鈍い音をさせてマーティンの持つ錫杖型の杖がロンドの頭へとめり込んでいる。
「イッタイ、おいっ、少しは手加減しろよ。」
これにはロンドも頭を抑え、素の口調に戻りながら抗議する。
「はぁ、あんた同じ事ナーネルさんに言ってみなさいよ、こんなんじゃすまないわよ。」
ごもっともと、スティッドが頷く、ロンドも想像しただけで身震いしながら両腕で自身を抱き締め左右へ頭を振る。
「冗談がすぎたぁね、悪かったぁよ。」
「謝るつもりあるのか分かんないのよあんたのそのキャラ。」
「キャラ作りは大事なのぉさ。」
和気あいあいと言えるのかはさておき、順調に道中を進む一行、そんな彼らの前方に揺らめく影がちらりと目に入る。
近づくに連れてその正体が明らかに、柱の影から奇怪な音を立てて歩みで出来たもの、それは死者の骸、スケルトンの群れであった。
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