ナーネルの墓参り
今回は少し短めです
「んっ?ナーネルちゃん、何で居るの?」
「何ですか、新手のパワハラですか、支部長。」
「ちょっ、やめてくれよ、今そういうの厳しいんだからね、減給じゃ済まないんだから。」
ストレラがギルドへと出勤してみれば、いつも通りのギルドの風景。
いつも通りであるのが、彼からすれば、おかしな点であった。
「今週は休暇だろ。」
「はい?何故でしょうか、そんな話はしておりませんでしたが。」
どうにも話が噛み合わない、嫁さんも言っていたし、日付を見ても間違いはないのだが、例年恒例の日は確かにもうすぐである。
「墓参り、今週末だろ、今日入らないとトロイのダンジョンは入れなくなるぞ。」
「トロイのダンジョンの開門期間は今日明日だったかと、ですから明日から休暇は頂いているはず。」
理解した、冒険者へしか流布を行わなかった訳だ、ナーネルちゃんは受付嬢、まさかダンジョンへ潜れるとは誰も思いはしまい。
「今年はダンジョン内が活発化している。早々に入場制限をする為に今日入らないといけないらしいとメルちゃんが朝慌ただしくしていたが?」
「うっ、仕方ありませんね、今年は諦めましょう、毎年行ってるのです、1度ぐらいサボっても問題ありません。」
「いや、メルちゃんが待ってるから、休暇申請なら出しておくから、たまにはそのお堅い考え捨てなさいよ。」
ひらひらと用意した休暇申請書を片手に彼女に告げる。
「しかし。私の業務の振り分けが。」
「大丈夫よナーネル、何時も過剰な仕事しているんだし、サボりの支部長が全てやってくれるって。」
「えっ?俺は俺で仕事してるよ、ねぇ、してるよ。」
「そうそう、こんな時こそ役に立たない支部長が体を貼るべきよ。」
「後はおじさんに任せるですぅ。」
受付嬢三人娘が、俺の精神ゲージをすごい笑顔でえぐりまくる。
「やるやる、やれば良いんでしょ。出来損ないの支部長がやらせて頂きますよ、とほほ。」
「申し訳ございません、お言葉に甘えさせて頂きます。」
綺麗なお辞儀で三人娘へ礼を述べ、一瞬にして姿をくらますナーネル。
「えっ、俺には何も無いんだ、なんだろ、特に最近の俺の扱いがどんどん雑になってる気がする。」
忽然と姿を消す彼女のいた場所を眺め、溜息を漏らしながら愚痴を零すのだった。
「それにしてもナーネルって謎よね、ただの受付嬢じゃないにしても、身のこなしとかさ。」
「あの、シュバって消えるのとかどうしてるんだろ。不思議だねぇ。」
「支部長は何か知ってるんですか?人事って支部長の管轄ですよね?」
三人娘の視線が一挙に俺に集まる。
「さぁ?俺も良く知らないんだよね、メルちゃんと仲良しって言うくらいしかね。」
全くの嘘だ、色々知っている、知っては居るが、これに関して口を割れば、俺の命に関わるのでごめんこうむりたい。
「そうよね、支部長が知るはずないか、期待はしてなかった。」
「ダメダメ支部長だもんね、大体、トラブルの時に役に立たない支部長に期待するのが間違いか。」
「役立たずですぅ。」
週始めから俺のSAN値がゴリゴリ削られる、最早限界突破である。
「受付は任せたよ。他の雑務は俺がやっとくから、取り敢えず仕事に戻ろうか。」
『はぁい』
既に胃がキリキリしているが、やる事やらないと結局首を絞められるのは俺、彼女の休暇申請を受理し、膨大なナーネルの業務を思い出しながら溜息を漏らしながら業務に当たる。
「せめて平穏でありますように、頼むからこれ以上のストレスだけは勘弁願いたい…」
淡い希望でも、願わずにはいられない、儚い夢を見ることで現実から目を背けるのであった。




