爆裂【焔】のドラゴン討伐2
戦闘の描写描くのが1番の好きかもしれないですね
楽しんで頂ければ良いのですが
「あれがドラゴンか、レッサードラゴンよりはデカいか。」
寝転んでいるレッドドラゴンの、4メートル程の全長を目算で見て少し安堵するオーレン。
「一応幼年期らしいけど、成体だと私達じゃ、まだ力不足だろうね、受ける事も出来なかったよ。」
「ちょっと寝顔が可愛い…倒すの可哀想になってきたよぉ。」
「取り敢えず寝ている今がチャンス、1発お見舞いしてやる。」
草場の陰から覗く【焔】のメンバーが各々に観察する中、先走るレリラが杖を掲げ呪文を唱え始めようとする。
「待て待て、せめて体勢整えてからにしろよ、何時もそれで掻き回すんだからよお前は。」
レリラの服を引っ張り、慌てて呪文を中断させるオーレン、そんな彼を邪険そうに見返す彼女の表情には不満な顔色が伺える。
「レリラ、オーレン、夫婦漫才してる場合じゃないみたいよ。気づかれた。」
オーレンの声に気づいたのか、浮島で眠っていた幼体のドラゴンが、彼らが隠れる草場を見つめ口を大きく開く。
「あんたが邪魔するから!折角のチャンス逃したじゃない。」
「はぁ?俺だって連携とかを考えてだな。」
レッドドラゴンに視認されるのも構わずに口喧嘩を始める2人、彼等の姿を捉えた相手が口腔に炎弾を作り出す。
「パルレ、付加頼む。」
「もう、2人ともいい加減にして下さいですよ。我らに水の祝福をウンディー。」
何時もの事とロトンが、皆の前に立ち塞がり大盾を前方へ構え腰を据え構える。
彼の声に反応し、2人へ抗議の言葉を投げ掛けながら開いた本のページを開き、水の精霊へ呼び掛け盾へ強化を施すパルレ。
レッドドラゴンから放たれた50センチ程の炎弾が、大盾を構えるロトンに迫る。
しっかり大盾を支えるロトン、炎弾が着弾すれば彼の腕には予想以上の衝撃が伝わる。
後方へ広がる熱風の熱量に、痴話喧嘩を続ける2人も押し黙る。
「流石にこれは余裕こいてる場合じゃ無さそうだな。」
「文句言わないわよね 、行くわよ。豪雨の刃で敵をうがて。レインショット。」
省略呪文を唱え放つ魔法、レッドドラゴンの上空に現れた、魔法陣から無数に無理注ぎだす水の矢が、相手の強固な鱗に弾かれながらも所々でダメージを与える。
「ギャウウ、グワァァウ。」
「鱗の隙間ならまだダメージは通る、しっかり確認したわね。」
威力は小さいものの物量で相手の弱点を探る、何時もの調子に戻るパーティーの定石、それぞれがどう動くかを個人個人に再認識し行動を開始する。
魔法に苦痛を露にし、その行為を行ったであろう相手に憎悪の視線を向けるレッドドラゴン。
瞳にしっかり映るレリラを映し、翼を羽ばたかせ宙へと浮かび、彼女へと1度羽ばたけば滑空しながら向かい始めた。
「荒ぶる意志を一筋の閃光へ、我の敵をうち貫け。ラフゥド。」
翼を広げ向かう相手へパルレが雷の下級精霊の力を借り、雷光の一筋の光が敵を貫く。
雷光を受けた翼には小さな穴が空きその周りを黒色へ焦がし、バランスが崩れたレッドドラゴン慣性に従いながらもレリラへ届く前に墜落、地面を滑り彼女へその体を突進させる。
しかし、レリラは動こうとせずに次の詠唱を続けたまま、敵と彼女の間に割り込む大盾が、地面を削り迫る相手を受け止め完全に停止させる。
「オーレン、1発見舞ってやれ。」
「任せやがれぇぇぇ。」
地面へと伏せる形になったレッドドラゴンの背後から大剣を高らかに掲げたオーレンが、跳躍で高く飛び上がった体の体重を大剣の一振に載せ、尻尾へ振り落とす。
鱗を数枚剥がし、大きな傷を尻尾に刻まれればレッドドラゴンが悲痛な雄叫びを辺りへ響かせる。
「あれだけ力任せでこの程度かよ、伊達じゃないなドラゴンの鱗?」
「馬鹿、鱗の隙間狙いなさいよ。このイノシシ男。」
「イノシシ男だと、俺が直進しか出来ない馬鹿とでも言いたいのか!」
叫ぶオーレンを尻目に翼の付け根に近い隙間を狙い、短剣を突き刺すシャーシャ、しかし度重なる攻撃に叫ぶレッドドラゴンは体を捩り、彼ら振り払いに掛かる。
短剣を突き刺したまま身の危険を感じた彼女が、獲物を放棄し後方へ飛び退避、その次いでに2本の投げナイフを背中へ投擲、小さなナイフを短剣が刺さる傷へと更に突き刺さらせる。
「お前達はいつもいつも…」
レッドドラゴンの暴れる様に1番の被害を被るのはガーディアンのロトンであった。
凪払われる尻尾の衝撃をいなし、後衛職のレリラとパルレを庇いながら呆れ顔をする。
「一気に決めてやるわ、私がね。アクアスピアー。」
詠唱を終えたレリラの声が響き、敵の全面に浮かぶ水の塊が鋭く鋭利な三角錐を描き形を変え、その切っ先を相手の瞳を貫く。
吹き上がる血しぶき、目を貫通され、空気を震わせる程の雄叫びをあげるレッドドラゴン。
「ウガァァァァァ。」
今までと異なる低く憎悪を込めた声、聞くだけで身を震わせるその音に、その場の全員に緊張が走る。
最後の悪足掻きの威圧、全員の体が一瞬、恐怖を感じ反射的に相手との距離を取らせ硬直させる。
身構えるオーレン達、臨戦態勢を崩さず相手の様子を伺う。
しかし、何も起こらない。
ただ宙へ消えていく雄叫びが辺りへ広がり消えていく。
「何だ…ビックリするじゃねぇか。」
雄叫びの後には静寂、瞳から頭を貫かれたレッドドラゴンはそのまま沈黙し、パーティー内の不安が一気に解ける。
しかし、それがいけなかった。
終わったと安堵し全員の緊張感が解ける事で見逃す、未だ動く心臓の鼓動に…。
異変に気づく頃に彼等は後悔する、何故彼処でもう一太刀追撃しなかったのかと…