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クラン【冒走族】の新人教育6

 走り出したカルトが小柄な体を駆使し木々を避ける、追ってくる相手は木々をなぎ倒し彼へと詰め寄る。


 圧倒的に身体能力の違うモンスター、B級指定、魔の森の中堅冒険者でも油断すれば全滅も有り得る相手、黒く硬い毛並みに覆われ、赤い瞳、赤いたてがみ、ルージュグリズリー。


 巨体から分かる通りのパワーを誇り、直進においてのスピードは馬よりも早い。


 そんな相手に追われるカルトが持ちこたえられている理由、それは、小回りでの方向転換、たかが1週間の走り込みが、ギリギリの線での逃走劇を成立させていた。


 (くそっ、なんであんなのが居るんだよ、そんなに奥にも行ってないのに、ヤーさん授業が無かったらとっくに昔にやられてる)


 ルージュグリズリーの知識がなければ、とっくの昔にミンチになっていただろう彼、彼に知識を根気よく叩き込んだ相手に感謝の言葉しか出ない。


 (でも、これじゃあ何れ限界が来ちまう。どうすりゃいい、木にぶつかってもスピードが落ちる気配もないのに…)


 足場の悪い森の中、1つミスをすればそれまで、そんな緊迫した中、彼の耳に街道方面から爆発音が聞こえる。


 息は荒く、足は地面を踏みしめている感覚が殆どない、他パーティーから引き離す為に、南方面へ逃げていた筈だが逃げるのに精一杯で今では方向も分からなかった。


 しかし、必死に逃げるうち、防壁付近の街道近くまで逃げてきていた彼、一縷の望みをかけ音のなった方へと方向を一気に変える。


 ルージュグリズリーも意識が1度音に誘われる、そんな時にカルトが方向転換したものだから、対応出来ずに地面を重い体重が滑る、一瞬の判断で少しばかり彼との距離が広がる。


 「グオォオ。」


 追い詰めかけていた獲物が、また手の届かぬ範囲へ逃げる事に苛立ち雄叫びをあげ、再び彼の背中目掛け突進を開始する。


 木々の合間からチラチラと防壁が目に入る、上がりにくくなった足を無理矢理前にだし、走り続け森を抜ける。


 その先では訓練を共に受けた仲間達が集まっていた。


 「カルト、そのまま合図するまでまっすぐ走れ、合図したら横に飛べ。」


 フォートのめいいっぱいの叫ぶ声が聞こえる、必死な彼が返答出来はしないが意味だけは理解出来た。


 「あと少し引き付けて、みんな、いま!」


 フルーネの声と共に、カルトへ迫るルージュグリズリーの進行方向に土壁が立ち上る。


 初級のアースフォール、魔力制御もまだ未熟な初心者魔法使いでは強度もなくあっさりと粉砕される。


 「グガァァァ。」


 だが、フルーネ達の用途は足止めではなく粉砕される前提での目眩し、視界を塞がれたルージュグリズリーは街の強固な防壁へと突っ込み、我が身の力を自身へ受け呻き声をあげる。


 「カルトあれやれ、盾役が一瞬抑える、それで決められるだろ。」


 未だ死地に立たされた緊張感と、限界を超えて走り続け、息切れたカルトへフォートが問い掛ける。


 カルト自身は何故全員が集まっているのかの方が疑問ではあったが、今のチャンスを逃しては全員の命に関わる事の方が重要であると判断し、つがえた矢に狙いを定める。


 「フルーネ、エアロカッター頼む。」


 カルトの息切れた声に頷き、つがえた矢の前に魔法陣を浮かべる。


 発動する魔法は風の刃となって衝撃に喚くモンスターに向けて放たれ、はしなかった。


 鏃の前に螺旋を描き、風の刃が鋭利な刃を纏った槍のように伸びる。


 魔力同士は干渉し合う、混じり合う事はなくとも形を変える程度に、操作出来る事を彼らは2日の訓練で知り、実践で使える程度ではないにせよ成功させていた。


 窮地が招いた偶然の産物、完璧なまでに絡み合い形状をなした今回はただの奇跡だった、だが、今はその幸運を引き寄せられた事が幸いだった。


 「今だぁ、抑えろぉ!」


 何時もの間延びした口調だが真剣な面持ちでフットが叫ぶ、盾を構える彼を含めた3人がのたうち回るルージュグリズリーにシールドバッシュは同時に3方向からぶち当てる。


 結果は目に見えて明らか、まだまだ未熟な彼らの体格で敵を抑えられる筈もなく、ほうぼうへとあっさり吹き飛ばされた。


 ただ、一瞬ルージュグリズリーの動きを止めるだけの働きを残し。


 その一瞬にルージュグリズリーの頭部に何かが駆け抜け、それは街の防壁にも穴を開け南側へと突き抜ける、角ばった防壁の厚い壁を貫き、凄まじい威力である事を物語る。


 目から貫かれ脳天に風穴を開けるルージュグリズリー、仁王立ちで動きを止めるモンスターだが、その後、地面へとその巨躯を崩れさせる。


 場に広がっていた緊迫感が、そこでやっと解け、未体験の経験に彼らは、喜ぶ事も出来ずに満身創痍で崩れていくのであった。


 騒ぎを聞き付けた衛兵がその場に着いた頃には、その場には満身創痍、緊張感がとけ腰を抜かす少年達と、絶命するルージュグリズリーの死体だけが残され、何があったのかと騒ぎを大きくする事になった。


 その夜、訓練生達を前に威圧感ダダ漏れで仁王立ちする総長。


 何時も以上に恐ろしい形相の彼に睨まれ、萎縮する彼らは震える声で事の顛末を語る。


 「言いたい事は多々ある、何より無謀と勇気を履き違えて居たからこそお前達はここにいる事を忘れているようだな。」


 「総長、俺が悪いんだ、皆は俺を助けようと…」


 「でもさ、結果皆無事だったんだしさ、時間には遅れたけど依頼はしっかりこなしたんだぜ俺ら。」


 「だまれぇぇ!」


 日もくれた訓練場に総長の声がこだまする。


 「全て偶然による結果論だ、緊急事態であれお前達の行動は何から何まで褒められたものではない。」


 総長の最もな意見、新人だけでルージュグリズリーを相手取る等、無謀を通り越して、ただの自殺に等しい行為である。


「カルト、お前は今回の件で自分の経験の無さを身に染みて自覚しろ。」


「は、はい!総長。」


何処かいつもと違う迫力に背筋を伸ばし答えるカルト少年。


「他のもの、お前達は大馬鹿だ、仲間の為に命をはれる程に。だが、助けを求める事が最善策、二次災害を未然に防ぐ事も冒険者にとって大事なものだと心得ろ。」


『はいっ!』


他の少年少女達もキレイにハモって返事を返している。


「この教訓を忘れるな説教はここまで、最後に1つ、良く生きて帰った。」


「よぉし、真面目な話はここまでだ、コラァ、依頼が終われば馬鹿騒ぎが冒険者の流儀、食って飲んで騒いで、ここからの門出を祝え。」


しんみりした空気も一変、ヤーさんの景気づけの言葉で場の空気を変える。


ラズベリーが指を鳴らせば組み立てられた焚き火が勢いよく燃え上がる。


最後の夜は彼等の成長を祝い、彼等の冒険者と踏み出した1歩をお互いに称え会いながら過ぎていった。

締めくくり方が苦手で、どう克服したら良いものか

自分のを読見返すとぼやきたくなってしまいますね。



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