クラン【冒走族】の新人教育3
お休みにアップさせるつもりでしたが、久しぶりに遊びに出れば5万負けと打ちのめされ、現実逃避に妄想へ、気づけばやはり財布に金はなく夢オチしてくれませんでした。
更新を確かめに来てくれた読者様には。本当に申し訳なく
ローリングからのスライディング土下座
ドタバタドタバタッ、バンッ!
「はっ!なんだなんだ襲撃かァ、コラァ。」
まだ人は寝静まり、まどろみの中にいる時間、ヤーさんの部屋のドアが勢いよく開かれる。
何事かと辺りを見渡し警戒する彼の目の前には、見知った少年が目を輝かせて迫ってくる。
「アァ、カルト、朝っぱらから煩くするんじゃないっすよ、常識を持つのも冒険者にとって必要だって言ったじゃないっすか、コラァ。」
「あのさ、あのさ、俺にも魔法、使えないかな?」
「アァ?魔法だァ?辞めとけやめとけ、今はお前の長所を活かすことを考えろよ、コラァ。」
「考えたよ、命中率は高いってヤーさんも言ってたじゃんか、だからさ、次は威力を高めたいんだ。」
言っている事はヤーさんにも分かる、適性を見る為にどれ程の力を持っているか、それを調べたのはヤーさんであり、カルト少年の技量には感嘆したものだ。
「確かにそうだけどな、そりゃ、筋力の向上や弓の質でも充分補えるもんだ、無闇矢鱈に変なもんをつめ入れても逆効果だぞ、コラァ。」
「ちゃんと何時もの訓練もする、弓だって疎かにしないからさ。」
「待てってよ、どうしたよ急に、今のお前にそんな時間あんのかよ、ただでさえ夜まで自主練してんだろうが、コラァ。」
晩の食事が終われば皆が寝静まるまで、弓を引き続けている事はヤーさんも周知の事実である、そんな彼にこれ以上打ち込む体力はありわしない。
「別に使えるかだけでいんだよ、使う方法のコツなんかは魔法使える奴らに昼にでも聞くからさ。」
その言葉にヤーさんが目を見開く、ただでさえこれまで人を寄せ付けず、交流も持たずに1匹狼を貫いていた、少年の口から出るとは思いもしない言葉であったから。
「まぁ、使えるかどうか位なら調べてやるが、俺だって魔法の基礎を理解してるだけで使うのが得意なわけじゃねぇ、教えるなんて事はできぇぞ、コラァ。」
「大丈夫、今はまだ出来ねえかもしれねぇけど、必ず使えるようになるからさ。」
ここまで明るく活発な少年の姿を初めて見るヤーさん、何があったのか、その答えは出ずとも、今のやる気を折るような事は教育者として過ごした彼の勘が、してはならないと警笛を鳴らす。
「仕方ねぇ。午後の授業で調べてやらぁ、取り敢えずお前は顔を洗って朝食の準備でもしてろ。これはペナルティーだ、コラァ。」
「分かった、総長の手伝いすりゃいんだよな。俺、今日も頑張るからさ、約束は守ってくれよ。」
意気揚々と部屋を離れ食堂へ駆けて向かう少年を見送る。
(やる気が出たのは良いけどよ、俺としてはあんまりお勧め出来ねぇな)
走り去る彼の背中を眺め、取り敢えず約束は約束と、魔法を担当するもう1人の教官の元へ、教材を取りに行くのだった。
朝の訓練が始まる、総長自ら体力向上訓練を指導する中、ヤーさんが彼に近づき話しかける。
「総長、カルトの件、どういうつもりっすか、今は基礎が大事っすよ、やる気を出させる為でもあれは悪手じゃないですかね。」
「仕方ないだろ、熱い思いに感化されちまったんだ。」
仁王立ちで腕を組み、不動の姿勢を貫く彼、悪い癖が出たと自覚はしていてもそれを外部には出さない。
「何時ものやつっすね、分かりやした。フォローは全ておまかせするっすよ。」
「お、おぉ、任せておけ。」
総長の良いところでもあり悪いところでもある生粋の熱血漢がまた暴走した結果と分かれば、ヤーさんは苦笑しながら授業内容の見つめ直しをする為、先行して教室となる部屋へ移動するのだった。
その日の訓練を終えた後、昼食は何時もとは少し違う事が起きた、1匹狼だったカルトが1つの新人パーティーへと話しかけた。
「なぁ、お前らの所って魔法使える奴が居たよな、聞きたい事があるからさ、良かったら飯一緒していいか?」
3人組の彼等を前に、思いも寄らない提案をしてくるカルト少年。
そんな彼を見て最初お互いに視線を送り、戸惑う彼等だったが彼を快く向かい入れることにした。
「良いぜ、その変わりお前の事殆ど知らないから教えろよな。」
「君すっごい弓上手いよね、僕盾職だから羨ましいよ。じゃあ、4人分貰ってくるから皆は場所とっててよ。」
「魔法って事は私に用があるの?」
ガキ大将気質のフォート、小太りで穏和な気質のフット、真面目な優等生な感じがするフルーネの3人に混ざり、昼が終わる頃には打ち解け歓談する様を見る総長。
(何だ、カルトの奴ちゃんと上手く意思疎通が取れるんじゃないか)
1人でいる事が当たり前過ぎた為、心配の種であったが、きっかけさえあれば年相応の少年である、友を作り仲良く出来るのだ。
そんな彼を眺め、まだまだ未熟を痛感する総長であった。
さて、彼がこんな風に変わった話、それは強弓の探索者ドーテル、彼についての昔話である。
今でさえ弓を使わせれば、彼の右に出る者はいないと言われるほど。
しかし、彼にも未熟な時期はあった、弓という少年にとっては地味な武器、そんな武器に劣等感を持っていた彼も孤独を選んだ。
そんな、彼を変えたのはパーティーを組む相手となる者達、彼等のその固定観念を打ち消せとの言葉が今の彼のスタートとなった事を語った。
そして、もうひとつ、Sランクへと押し上げた弓と魔法を掛け合わせる、彼のスタイルを話が盛り上がり話してしまった。
ただ、彼もそれに気づくまでにはそれなりの時間と経験、そして彼の規格外と言えるセンスがあってのものだったのだが、希望を持たせた手前強く無理だと言う事も出来なくなり後に引けなくなったのだ。
だが、総長は過ぎたことは気にしない、それが漢であると信じているから、今は静かに見守るのだった。
前書きの妄想、実は長編の話でプロットも進みました、それだけが1日だけの休みの救いでしたね。




