プロローグ〜支部長の憂鬱な週末〜
ほのぼのやってくので更新は稀になるかと、ストーリー性は殆ど無いものですので面白そうな題材があれば読んでもらえれば幸い
冒険者の大原則
冒険者の生死は自己責任である、冒険者は冒険する事なかれ
冒険者規約
1つ、冒険者はどの国の権力に属する事を禁ずる
1つ、国同士の争いにおいて冒険者が介入する事は1部の例外を除き禁ずる
1つ、依頼の受理はギルドを必ず通す、甲と乙の間で個人的な受理を禁ずる
(緊急時、事後ギルドへ両者が報告する事)
1つ、緊急時又は依頼調査の不備があると判断した場合依頼放棄を認める
1つ、依頼者の生命が危険に晒された場合、自らの生命が脅かされるとしても依頼者の生命を優先する
1つ、ギルドからの緊急招集依頼時、指定された階級以上の者はこれに応じる義務が課される
上記内容に違反したものは冒険者資格を剥奪する
「はい、此方がギルド誓約書となります。」
数多くの夢を持つ少年少女がギルドの門を叩く、今日も新たに冒険や夢を求めて足を運ぶ新たな新人が冒険者の道へと足を踏み入れる。
「よぉし、冒険の始まりだ。お姉さん、討伐依頼出してよ。」
「討伐依頼ですか?では、平原兎の肉確保の依頼はどうでしょう。」
受付嬢は笑顔を絶やさず少年の要望に応え狩猟系依頼の中から1枚を提示する。
「何だよ、討伐って言ったら魔物だろ、魔物の討伐依頼を出してくれよ。」
「魔物の討伐依頼はEランクからになります、1つ上の階級は受ける事も出来ますが…おすすめする事ははばかられます。」
ギルドとは依頼の斡旋が業務が主目的であるが、抱える冒険者達のリスクマネイジメントも大事な仕事である。
「大丈夫だって、狩猟ならずっとやってきたんだ、魔物だって狩れるさ。」
忠告に耳を傾けない彼、1度忠告を無視すればギルド側はそれ以上彼を止める事が出来ない、これが自由である冒険者とギルドの暗黙のルールなのだ。
「分かりました、今ある依頼は此方になります。」
提示した中から選び、受注手続きを終わらせた少年は意気揚揚と冒険へ出かける。
「ナーネル、変わるから支部長へ報告書提出お願い。」
「えぇ、分かりました。」
ギルドを出て行く少年を目で追いながらも、掛けられた声に書類を纏め彼女は支部長室へ向かう。
「失礼します、支部長、今週の報告書です。」
「ありがとう、次いでに胃薬と水用意して貰ってもいいかな。」
報告書の束を抱え入る支部長室、部屋の中では煙草を咥え、机に項垂れる髭面の枯れた中年男が1人、ボサボサの髪を掻きむしりながら憂鬱そうに受け答えを返す。
この優男、これが支部長ストレラ、私の事である。
「あっ、それと報告ですが、新人さんが冒険に出ました。」
「ナーネルちゃん、胃の穴が広がる様な事サラッと言わないでよぉ。」
「ちゃんとお止めはしましたよ、ですが彼らが後追ってましたし大丈夫でしょう。」
ギルドで冒険に出るとは依頼へ行く事ではない、冒険者は冒険をする者ではない、古参の冒険者達が主張する言葉がある。
それは冒険するという事が死線を潜るという事だからだ、ギルドの管理体制がまだ曖昧だった頃の冒険者達ならばそれで良かった、彼らはただの博打打ちだったからだ。
だが今の冒険者は職業である、彼らの名残から引き継がれただけで冒険者と呼ばれているに過ぎない。
「あぁ、そう…また悩みの種が芽吹くかもしれないのね…」
他ギルドと違い、このダンジョン都市トロイヤ東門支部の新人冒険者の死亡率は低い、いや、皆無と言っても過言では無いほどに報告が上がらない。
しかし、その殆どが何かしらの不名誉な二つ名を持っている事でも有名である、詳しい事は後々分かるだろう事だ省略しよう。
「まぁ、問題ないならいいや、問題なのはこっち…」
彼の前へ積み重ねられる報告書の山、数件分の筈の報告書は彼のデスクを何故か埋め尽くす。
「ねぇ、依頼の報告って紙1枚だよね?なんでこんなに分厚いのかな?」
1つの報告にまとめられた鮮明に描写される、詳細の書かれた紙束がぎっしり積み重なる、事細かに書かれては報告書と共に回ってくる何時もの光景にうんざり顔で私の胃がキリキリしだす。
「勤勉で何よりです、皆しっかりと初心を忘れていない証拠でしょう。」
「さいですか、くそっ、また休み前に徹夜かよ。」
読み飛ばす事が是であるのなら問題は無い。
しかし、彼らの緻密な報告が重要な情報収集に貢献している為、私に読み飛ばすという選択肢を与えてはくれなかった。
「ナーネルちゃん、今回の報告おすすめはある?」
受付嬢の筈の彼女がこれ程重宝されるのには理由があるのだが、割愛させてもらおう、今は終わらない仕事を少しでも進めたい。
「そうですね、本部が遂に折れまして、彼らのC級昇格試験の報告が上がって来ていましたね、中々面白い内容でありましたよ。」
「何時もの事ながらナーネルちゃん全部読んだのね、丸暗記してたりしない?」
「申し訳御座いませんが、私も暇では御座いませんので、これで失礼します。」
胃薬と水をデスクへ用意し終えた彼女は無表情だった先程までと打って変わった美貌をフル活用した微笑みを浮かべ支部長室を後にする。
「読み聞かせてくれないかな、おじさんもう目が衰え…居なくなるの早くない?」
残された私と依頼報告と共に数百ページはあるであろう詳細説明、その1つを手に報告書と言うなの冒険譚を読まされる私であった。
「はぁ、読む前から胃が痛い…」
辛辣でも何でも向上させる為に評価、コメント頂ければ作者のやる気に火がつきますので何卒宜しくお願いします(>人<;)