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ゼノの追想譚 かつて不死蝶の魔導師は最強だった  作者: 遠野イナバ
第ニ章/後『海霧の怪人編』

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78 赤髪の紳士

チャプター(章)の関係で今日は短めです。

「おー、いらっしゃい。──って、嬢ちゃんその髪どうした?」


「グレンさん」


 店の階段をのぼり、二階へあがると、事務所の入り口にグレンが立っていた。


 食事を乗せたワゴンが彼の隣にあることから、今日はこれから夕飯なのかもしれない。


「どうした? じゃないわよ! 髪切り魔よ、髪切り魔!」


「髪切り魔? まさか嬢ちゃん、髪、切られたのか?」


「そうよ! だからここにきたんじゃないっ」


「いやー、それでうちに来られても困るんだけどなぁ。それに今日は祭りの当日だ。もう店じまいの時間なんだよ」


「知るかっ、うっさい!」


「おっと。暴力は駄目だぜ? 嬢ちゃん」


 拳を振り上げ、間合いをつめてうなるミツバをグレンがどうどう宥める。


(はぁ……、だから言ったのに)


 髪切り犯との戦闘後。

 怒り狂うミツバに引きずられ、ラパン商会まで走ってきた。


 あとからモニカを連れたリィグが来る予定だから、全員が揃うまで店の前で待っていようとミツバには話した。


 いったん落ちつけとも。


 だけど彼女は道場破りのごとく扉を蹴破るように商会の門をたたいてしまった。


 そのままどすどすと、悪人面で階段を駆け上がり、今に至る。


「アルスの奴はいるかしら?」


「居るには居るけど、ちょっといま客が来ててな。もうすぐ帰るとは思うから一階で待っててくれや」


 グレンがそう言うと、ガチャリとドアが開く音がした。


 半分ほど事務所の扉が開き、その隙間から声がはっきりと聞こえてくる。


「最後にもう一度言うが、あの子がここへ来たら縛ってでもいい。屋敷まで連れてこい」


「わかっています」


「いいか? くれぐれも怪我はさせるな。来月には見合いが控えているんだ。顏にすり傷でも作られては困る。ではな」


 部屋から男が出てきた。


(あれ、この人って……)


 おとといの晩にアルスを訪ねてきた男だ。

 あの時は暗がりでよく見えなかったが、思っていたよりも若い。


 おそらく四十代前半、ロイドと同じくらいの年齢だろうか。


 くすんだ赤髪をオールバックにし、高そうな服を身にまとっている。


 ひとめで質のよいものだと分かる灰色のコートに、臙脂のベストと細身のズボン。


 町で見かける商人たちと比べても、どこかの大きな商会の重役といった雰囲気だった。


「……グレンか」


「よお、ヒューゴさん。夕飯食ってくか?」


「いや遠慮しておこう。それよりも娘が来たらわかっているな?」


「ほいほい。鎖で縛って、あんたのところに連れていけばいーんだろ? 任せておけって、おとーさん」


「……おまえに父と言われるいわれはないと、何度も言っているはずだが」


「冗談だよ。クレハの父ちゃん」


「ふん。ではな。私は失礼する」


「はいよ~」


 グレンがひらひらと手を振って男を見送った。


「なんだ、お前たち来て──、……っ、その髪は……」


「アルスさん」


 事務所からアルスが顔を出して息を呑む。


 凍り付いた表情でミツバの髪を凝視しているようだが、その顔はひどく青白い。

 今朝もそうだったがさらに翳りの色を増している。


「お前に話があるんですけど!」


「ミツバ……」


「わかっている。中に入れ」


 アルスが踵を返し事務所の中へろ戻る。

 ちょうどそこへ、モニカを連れたリィグがやってきた。

 これで犯人以外の役者はそろった。

 ゼノたちはアルスとグレンを交えて、さきほど目にした話をした。

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