第三話 危険地帯
「おいどうなっていやがる。」誰かが声をあららげる
「俺が聞きたい管理番号929、白狼のシルが死んだ?有り得ねえだろ」
「おまいさんは機材の故障だとでも言うんかい?それこそバカな話ってもんようん100万は軽く超えるんだぜ?」
「我が国にとっては利益しかないな」
その言葉にヘイナムの代表は悔しそうに無言で俯く
これは愉快だヘイナムよ。小国ながら対策本部を作り、財政面でかなりの力を持ち、金を利用し発言権を得ていた大国にとって目の上のたんこぶのような存在。その権力が落ちたのだ。厄災の一つであるシルが死んだよりも朗報だ。
そう思い笑みを隠せないダムインの代表に気付けるものはいなかった。
軽い調子で談笑しあう代表たちへと声が降り注ぐ「これより議会を開始する」
この一声で場が一気に静寂に包まれる。
さっきの雰囲気など消し飛び誰もが真剣そのものの表情になっていた
「おいおい嘘だろ..なんで来たんだよ..」
誰のか分からないつぶやきが議員からもれる。
「厄災の一体が死んだのだ。相当な会話をするべきではないのか?」周りのざわめきなど気にせず支配者は告げる。
呟いた議員は一気に硬直し、挙動不審へと陥る。
しかし仕方の無いことだと思っているためか、その代表は放置され次の話が始まる。
「情勢をばらした方が楽だからバラそう。我が国は商業大国だが貴様らと商業せぬとも成り立つ故。経済制裁などできると思わぬ方がよい。」
ごく自然な、当たり前のことを言うように発せられる一声。
話の最中に物事を申すのは非常に無礼なのだが..話の途中で発言を始めた愚か者があった。
手をあげて発言する。議題をきく。 議長の話を聞いた後に発言権が得られる。
そのようなルールなど忘れダムインの代表はいう。
「お、お待ちくだされ!!た、確かに商業大国である貴方様からしたらその程度なんてこのないように存じます。しかしながら我々にとっては...だ」
ここまで躾がなっていないとは...議長は呆れながらそう考える。ヘイナムの議会だったらいいのかもしれぬ。ヘイナムはほかの国からの対策援助金で成り立っているので他に強く出れぬのだ。
財力があっても権力がない国。そう呼ばれている。しかしヘイナムの元は一般の村。それを大きくし国をつくった賢王がいることは周知の事実誰もが敵対はしたくないのである。
そして愚か者へと制裁が下される。
「食料品が乏しく、軍が養えないのであろう?豊富なカルシウムもなければストレスが溜まるのも無理は無い餓死者も続出しておるそうでは無いか。民の不安は反乱の前兆もうおこっていると耳にしたが...その事については我が国がどうにかしてやる故落ち着くが良い」
ヘイナムの代表は次第に顔が青くなっていき何かを振り払いように首をふる
これは事実上死刑宣告みたいなもんだ。
戦争どころか内乱が勃発している所を晒されれば他の国の言いなりになるしかないのだから。抵抗しても殺される。
だから抵抗できないのだ。それは仕方がない。
しかしなんだこれは..災厄を前にしているかのような威圧感だ。
もしかしてと思うが慌てて振り払う
最初はカルシウム不足という突拍子もない話題に笑っていた代表もしだいに黙っていく。なぞの恐怖感を覚えたのだ。
議会は掌握され議長の言うことが全て通る。
対策金の削減。
対策本部の権能を削減。
小国の力の減少
気付かぬ間に災厄の有利なように局面が変わっていく。
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賢王は呻く..やりやがったなと。
元々商業大国で議会を行うことが異質なのだ。
しかし商業大国は巨大で膨大な富を保有している。
議会の場所くらいで逆らうのは危ないからこそ承諾したのだ。
その結果より危なくなった。
報告を聞いた途端頭が痛くなったのは言うまでもない。
小国はバカなのか!?
東側の小国が参加しない時点で違和感があった。メデゥーンや東和光がいれば何とかなった。とは言えないがここまで馬鹿げたようにはならぬだろう。
そもそもこの時期に対策金を減らすという考えは良いと思うのだが小国の力の減少というのが嘆かわしい。
ここまで馬鹿だったのかと嘆きたくなる。
少し考えればわかるだろうと思うが代表は所詮代表だ。
代表という制度に問題があるのではないか。次の会合で我々が出すことはこれか..しかし一筋縄では行かぬな。
反論は来るだろう。
「各国の王は忙しいのだ。」という意見を何度も修飾し行ってくるのだろう。
またそれが建前であるのがまた....
王は暇である。
民は書類作業に没頭する王を想像するだろうが現実は違う。
最初の頃はそうだが慣れれば書類など楽だ。
重臣に内容を確認させ最終調整を行うだけだから。バカな王は重臣を育てないためできないだろうがここは違う。賢いバカ意外に育てないと終わるのだ。
数万枚を超える日もある。
その時全て1人でやるなど自分でもできる気がしない。
そもそもやりたくない。
各国もそれを知っている。
だから重臣に任せているのだ。各国の王は賢い。
賢くない王は淘汰されるため必然的に賢い王しか残らぬのだ。
そうして賢王はバカの言い訳を破る策を考えるのであった。