第一話 旅立ち
駄文ですが、時間に余裕のある方はお付き合い下さい。
「ワオーン。」
群れ中の狼がいっせいに集まり遠吠えをする。
俺もみんなに負けないように「わおーん」と幼い声を振り絞って吠える。
蹂躙の合図である。
俺はこの時間が大好きだ。なぜなら仲間と同じになった気がするからだ。
俺も種族で見たら狼だ。
しかし仲間と違うところがある。
色だ。仲間は灰色なのに対し俺は白色と明らかに違う。
長老が「わしもお前と同じ白色だったぞ!心配するんじゃない」と慰めてくれたが嘘だろう。
第一、長老は灰色だ。
嘘にも程がある。
嘘も方便とは聞いたことが、バレる嘘はやめた方がいいだろう。
しかし長老の厚意が嬉しかったためそのことは口に出せなかった。
ちなみに長老は人間という知恵ある種族に飼われていたため賢いそうだ。
長老は博識だしあながち間違っていないのかもしれない。
長老が教えてくれたのだがアルビノという先天的に皮膚のメラニン要素と言うものが欠如しているそうだ。
メラニン?先天的?なにそれ !!
あまりよく分からなかったが「うんうん」と頷いておいた。
必殺、知ったかぶりである。
努力をせずとも自分を賢く見せるハイスペックな技なのだ。
長老はなんでもしっているのだと関心してたら母さんに長老のいっていることは半分以上デタラメよ。
あの人100年前からここに住んでて人間に飼われたことなんて無いはずだわだから話半分で聞いた方がいいわよと言われた。
100年かぁー俺も長老みたいに長生きできるかな?
長老に聞いてみると..
「お前も強くなればできるんじゃあないか?」と言われた。ちなみに平均寿命は10年らしい。
長老めっちゃ長生きじゃん..
うん ! これからは長老のことを何でも信じよう!
長老だって歳を無駄に食ってるだけじゃないだろうしきっとすごいオオカミだからね!!
俺が長老のことを考えているといつも通りやればいいとサリーから言われた。
サリーは俺と同年代なのだがやけに落ち着いている。
元々1人でさまよっていた所を俺の群れが拾ったらしいからそれが理由なのかもしれない。野生は厳しく赤ちゃんすら変えてみせる。
また思い出に浸ってしまう。
俺の悪いクセなのかもしれない。
俺は気持ちを切り替え爪を土に立てる。
そして全力でかけ出す。勢いが大事なのだ。
今襲っているのは人間。
人間の武器は強い。しかし人は臆病なのだ。
狩人、ハンター、熟練、プロ、などと言われている人でも恐怖感には勝てない
知恵でも力でもかずでも劣るオオカミが取れる手段は一つだけ人間より強い勇気で戦うだけだ。
ワオーンとひと吠えし村を見る。今吠えるの必要ない思ったでしょ?こういうのは気分が大事なの!!
話を戻そう。
今日も俺達の圧勝だ。やっぱり長老はすごいと思った。
人間の長所や短所まで全て長老が知っている。作戦も全て立てる。人が臆病だと知ったのも長老のおかげだし、長老があっての群れだと思った。
母さんも実は長老のおかげだと思っているようで感謝を伝えていた。
俺たちは強いんじゃないか。そう思ったのは俺が1さいになった頃だ俺が始めて人を攻めた時から数ヶ月が経過し大人の狼と同じ大きさになった。俺は人一倍努力し戦いに励みみんなに頼られるようになってきた。
今日も取った獲物で生肉パーティーをしていた。人を襲うのは時々、俺は遠吠えは好きだが別に人を殺したいわけではない。それは村のみんなも一緒なようで人は食料がない時のみ!と決めていた。
幸せな一時は突然に終わりを告げる。
「「バンッバンッバンッ」」銃声音が聞こえる。
「ガゥゥグルゥ!!」
発砲音を聞き大柄なガイ兄が吠えたのだ。群れのボスは長老となっているが群れを動かすのはガイ兄である。
長老がガイ兄にボスを譲ろうとしたのだがボスは賢い方がいいといって頑なに引き受けなかったのだ。ガイ兄は頑固なのだ。でも優しい。
群れを襲撃されたことなんてない困惑したが俺は自分の意見を口にする。
「母さんその足を退けてくれ」と俺はガイ兄の所へ行くべく声をあららげる。
「後ろが空いてるわ」
「後ろじゃダメなんだ。俺は前に行く!!ガイ兄は俺の兄だし頼れるリーダーだ!!行かせてくれよ」 言葉による説得ができず強行突破も考えたが母さんは群れで上位に入るほどの力持ちだ。
厳しいだろうと諦めるしかない。
バンッ。発砲音が轟く。
ガイ兄が打たれた。幸い足が撃たれた。まだ助かる。
母さんが動揺したが歯を噛み締めて我慢しているのがわかった。母さんの目線が俺でなく襲撃者に向いたのだ。
俺はわれも忘れて飛び出した。
俺は駆ける幸まだ気づかれてない!!
行ける 。そう思った。
しかし現実は無常だった。
俺に弾丸がとんできた。弾丸を見てなくても鉄砲が俺に向けられ音がなったことで理解した。
死を覚悟した。何も出来なかった兄を救うことどころか時間稼ぎすらもできなかった。
直後 え?と俺から戸惑いの声がもれる兄が打たれたからだ。ガイ兄が鉄砲に打たれ動かぬ足に力をいれ鉄砲に向かったのだ。目が薄い赤色に変わっていた。
火事場の馬鹿力だろうか兄は間に合い、「逃げろ」といい倒れた。
群れのみんなが俺を生かすために襲撃者へ向かっていく、俺は逃げることしか出来なかった
誰も救えなかったのだ。白色というみんなとは違った色でも迎え入れてくれた仲間。
色々な悩みをきいて一緒に考えてくれた長老
どんな時も一緒にあそび相談を聞いてくれたサリー
強くなるために何時間だろうか向かっていく俺を受け止めてくれたガイ兄
いつも寄り添ってくれた両親
長老の「お前は次の群れのリーダーだ生き延びろお前さえ生きていればこの群れは蘇る」という言葉を言い訳に使い、俺は身近な人が死んだ恐怖に抗えず覚悟もないまま群れから逃げ出した。
俺の反対方向に長老が駆け出し、襲撃者共がそれを追っかけていく光景が俺の真紅に変色した瞳に反射した。