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SAND LAGOON  作者: ユニ
5/5

武器とは、




やっとこさ椅子に縛り上げたユフィ・ローグと名乗る金髪のアンダーステイツの少女。



多少の抵抗を見せたものの、2人にとって命を狙われるハメになった元凶であるユフィの口から語られた最高に下らないジョークとしか思いたくなくなるような今回の事の真相は噴火する勢いの怒りが跡かもなく雨散霧喪してしまう程にくっだらねぇ内容のオンパレードだった。


そのジョークの内容と言えば、

笑いどころがまるで分からず1から10まで解説を入れたくなるような、徹底解剖してやっと意味を理解してそしてやっぱりつまらなかった時のような、最早求められているハズの笑いなんてものは微塵も検出されず後に残った言い知れぬ虚脱感に襲われた時のような。


そんな気分に陥るものだった。


全ては、

全ての原因はユフィの知的好奇心と行動力に端を発するらしい。


時は遡る事三日前。


ここから北東に一週間ほど行った場所にある大森林。

俗に森海とも呼ばれ、全容のほぼ全てが解明されてないパンドラの箱のようなこの森林は不確かながらモンスターが生まれる場所と言われ、中にはアンダーステイツすら太刀打ち出来ない科学技術を持った古代の遺跡群があると噂される自然の大迷宮である。

と、信じがたい内容ながらそこまでは地上でも知られた事であったが、どうやら長年アンダーステイツはその規模も分からない森林に眠ったあるかも分からない古代遺跡群のロストテクノロジーの回収を目的に何度か探索を試みていたらしい。


調査は進み、どうやら大体の検討がつき今回の探索で見つかるかも!?という段階であると聞きつけた一女学生であるユフィは探索隊に紛れて禁止されている地上へと出てきたのだが案の定途中で発見、逮捕され、護送してる余裕もないので前々からサポーターとして囲っていたエルゴに荷物代わりに護送を依頼。

後は知っての通り至る現在。


という訳らしい。



「…アホらし……、」


自分たちが命を狙われるハメになった大本の理由が小娘の家出だったと知り、こんな理由で命を狙ってくる奴も、そんなルールがあるこの世界も全てが下らなく感じられた。

しかもエルゴに限ってはルール違反と知りつつ前からアンダーステイツと繋がっていたなら今回の件は正に自業自得だがカイト達はこの最高にくだらない事件に奇跡的確率で巻き込まれただけだった。


「オレ達の運の無さは誰かの呪いか?」


「だとしたらかけたのは神様ってヤツかもね。ボク達は正義とか平和とかそういう物にヘドを吐き過ぎたらしい」


「自分が捨てたゴミに大事なもん汚されて怒ったってか?そりゃオレ達だけじゃないだろうに……」


「まぁ、とりあえず逃げる準備はしないとね」


あまり愚痴を吐いてる暇も彼等には残されていない。とりあえず奥から持ってきた巨大なリュックにそこら辺に有るもの全てを大胆に、いや、雑に詰め込み、銃火器は丁寧にしまい始めた。

「なんか、……すいません…」


ボソッと呟いたユフィに気付いたカイトは両手に持った荷物を置くと嫌みったらしい顔を近づけて

「あぁ、テメェの好奇心にオレ達は殺されるかもな」と言い放った。


「くだらねー欲を満たすためなんかに地上に出てくんじゃねぇよ」


「な、知識欲は人の最大の武器です!!あなた達に迷惑をかけたのは素直に謝りますが、知りたいと思う探求心をバカにされるのは我慢なりません!」


「武器?知識が武器?このキャンディは何を言い出すかと思えば知識が武器だって!?」


腹の底から込み上げてくる物を我慢せず解放するとそれは爆笑となって隠れ家の中に響き渡った。腹を抱え、無防備に笑うカイトを見て自分がまるでおかしな事を言ったかのように恥ずかしさがこみ上げてきたユフィは顔を赤く染めて叫んだ。


「何が可笑しいんですか!?」と、

それを聞いたカイトは何の前触れもなく抜いたベレッタの銃口を赤く染まった額に押し当てた。

金属の冷たい感触がした、


途端に入ってきたそれは突きつけられた額から血管を通り、血流に乗って全身に隈無く広がると、ユフィの心臓を弄ぶように握りしめた。潰さないように、でも緩めすぎないように、


あぁ、私の命は今、この人に握られている…

そんなボンヤリとした考えが遅れて満ちた頃何が自分に入ってきたのかが分かった。

それは恐怖、しかも死の恐怖とくれば、経験のない者からすればそれはもう見えない鎖となって全身を締め上げて震える以外、動くことすらままならなくしてしまう。


「知識が武器?笑わせてくれるなお嬢さん。いいか、お嬢さん?知りたがりなその頭に刻んでおくといい、アンダーステイツでどんな教育受けてるかは知らないが、ここ(地上)で武器とは力だ。そして力とはコイツ(銃)の事を言うんだよ。人を殺せない武器はそりゃただのクソだ。ここにいる間はテメェの命は保証してやるよ。オレ達はカリバニズム(人肉嗜好)でもネクロフィリア(屍体嗜好)でもないからな、だがよ、もう一回今みたいなコメディをやるなら次はテメェの頭ポップコーンにしてやる」


冷酷な眼は暗示でもかけるかのように、一回のまばたきもないまま怯えた眼を直視し続けたが、言葉が切れると同時に銃口と共に離れていった。


額にはまだそいつの跡が残ったままだったがユフィは震える口で言葉を紡いだ。

カイトがどうしようもなく可哀想に思えた。可哀想というのは大分上からな感じでイヤだったが、でもそう思えた。

伝えたい事ができた。

どうしてもだ。


「た、…確かに…知識で人は、殺せません……でも、ですね、………人を護る事は出来ると思います……、」


震える口で一言一言、一字一句紡いだ遺言になるかもしれないその言葉。

振り返ったカイトの眼は相変わらず冷ややかで、やっぱり銃口はユフィを向いた。

どうやら届かなかったみたいだ。


「戯れ言だな……、綺麗に死にたいなら顔は止めてやるよ、」


心臓を向いた銃口。

指は躊躇いなしに引き金へ向かったが、突然隠れ家中に鳴り響いた警報でそれが引かれることはなかった。


「敵だ!」


今起きてたことなんか丸で知らないエドが別室からパソコン片手に飛び込んできた。

場には重たい空気と銃口を突きつける人と突きつけられた人。


「なんかあったの?」


怪訝な顔はジロッとカイトを見て離さない。

「何でもない。つか敵だろ。何人だ?」


ベレッタをしまい、エドのもとに行き向けられたパソコンには隠れ家の見取り図の上を動く三個の赤いマーカーの姿があった。

過去の遺産、赤外線装置を備えたこの隠れ家では敵の動きは筒抜けである。


「トライグルの追っ手か?」


「いや、多分違う。動きが洗礼されている。トライグルは名うてのマフィアで強者も多いけど個人主義で連携行動は苦手なはずだ。この侵入者は恐らくアンダーステイツ……」


カイトはユフィに近づくとあらゆる場所を確認し始めた。別にセクハラ目的ではなく、頭から順に服の上から叩き、脇腹辺りに感じた違和感を確認するとそこにあったのは1cm大の丸い発信機。


「舐めたマネするぜ」


踏みつぶされた発信機。

外に大挙していたアンダーステイツ特殊部隊の面々の中、軍用車の中で必死に耳を傾けていた隊員はヘッドフォンの突如発した雑音を確認すると、盗聴がバレた事を横に待機する隊長である、ゴツい顔にデカい体。無精ひげを右手で触りながらにやける男、キース・バーンへと伝えた。


「ほう、中々やるなぁ〜地上人のクセして可愛げのない猿どもめ、さては赤外線装置でも持っていたかな?」


「一気に殲滅しますか?」


「バカ野郎かテメェはよ〜それじゃあつまんねぇだろうが、表も裏も兵で固め、これだけの軍備を未だに前時代の骨董品振りかざす猿相手に使ってハイ殲滅、じゃあつまんねぇだろうがよ〜オレ達は折角人間を自由に狩れる仕事をしてるんだぜ?ここは一つ人狩りと洒落込もじゃねぇか」


「了解しました」


「あっ、そうだ。例の女、あれは殺すなと伝えとけ。一応今回の任務は女の救出が目的だ。情報部のクソミソ共の命令を聞くのは癪だが仕事はしないとおまんま食い上げはキツいからな」


「了解」


闇夜に紛れるように事を進めだした特殊部隊。

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