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鉄腕ラリアット 第二部・咆哮篇  作者: 鳩野高嗣
第三十四章 束の間の安らぎ
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束の間の安らぎ【Aパート】

この作品は『エンターブレインえんため大賞(ファミ通文庫部門)』の最終選考まで残ったものを20余年の時を経てリライトしたものの続編となります。

「準決勝の相手が決まった。

 栄村(さかえむら)学院中等部だ。」


 三浦が帰り支度をしている部員たちに告げた。


「順当な勝ち上がりですね。」


 松浦が納得の表情を浮かべる。


「それはそうと、明日、試合出来ますか?

 天気予報では雨だそうですよ。」


 岡田が三浦に問う。


「順延の可能性は大いにある。

 もし順延になったら松浦に連絡を入れる。

 そこからは野球部の新しい連絡網で回してくれ。」


 三浦は松浦にコピーの束を渡した。


「各自、取りに来い。」


 松浦は取りに来た部員たちに次々に渡していく。

 そうした中、直実(なをみ)は焦っていた。


(どうしよう‥‥。

 取りに行かなかったら私がもう持ってるってバレちゃうし。)


 直実には取りに行く以外の選択肢はなかった。

 しかし、予想だにしなかった事態が起こる。


鷹ノ目(たかのめ)、日曜に渡した物と同じだぞ。」


 三浦の台詞(せりふ)にビクッとする直実。


「え‥‥あ‥‥そうなんですか、あはは‥‥。」

(ごまかせたかな‥‥?)


「鷹ノ目~、連絡網を持ってるって、どうゆう事かなぁ?」


 金森がジト目で見つめる。

 ごまかし切れるはずがなかった。


「そ、それは‥‥なんちゅーか、本中華って感じでして。」


 目が泳ぎまくる直実。


「部員の連絡先、知らなかったんじゃなかったっけ?」


 藤本もジト目で見つめる。


「なのに、羽野(はの)を選んだ、と。」


 竹之内(たけのうち)(しか)り。


「ほ、ほら、私バカだから、もらってた連絡網に気付かなくて‥‥。

 だって赤点常習犯だし‥‥。」

(これでどうかな?)


「赤点常習犯じゃしょうがねぇか。

 俺もよくうっかりする事ってあるしな。」


(金森さん、ちょろくてよかった‥‥。)


 直実は第一関門を突破し、ほっと胸を撫で下ろした。

 しかし、次なる試練が襲い掛かる。


「でも、この連絡網がなくて、よく私の家に電話が掛けられましたね。

 私、まだ先輩に電話番号、教えてなかったと思いますけど。」


 希望(のぞみ)が天然で問う。


(希望ちゃーん!?)


 直実は焦る。

 ひたすら焦る。

 金森たちには電話帳の事は言えない。

 どうにか、いい言い訳を思いつかなければならない。

 しかも、今すぐ!


粟田(あわた)道場の看板に番号があったんだよ!」


 直実は咄嗟(とっさ)に部屋にまだある看板を持ち出した。


「ああ、先輩が道場破りで持っていった看板ですか。

 でも、電話番号はなかったような‥‥?」


「そ、それがどっこいあったんだよ。

 裏に小さく‥‥。」


「裏にですか?

 気付きませんでしたよ、私。

 私もうっかりさんですね、あはは。」


 直実は第二関門を突破し、再びほっと胸を撫で下ろした。

 しかし、更なる試練が襲い掛かる。


「連絡網に気付かなかったとはどういう事だ?

 観戦チケットを入れた封筒の中に入れたと伝えたはずだぞ。

 ――お前、ちゃんとチケットは使ったのか?」


 三浦が圧を掛けてくる。


「はい、それはもうバッチリ。

 いい勉強になりました!」


 直実は笑みを浮かべて答えた。


「だとすると‥‥もしかして、俺が入れ忘れたのか‥‥?」


 三浦が斜め左下を向き自問する。


「そんな事はありません!

 ちゃんと入っていました!」


 三浦を庇った事で、はっとする直実。


「やっぱ、しっかり持ってんじゃねぇか。」


 金森がツッコミを入れると最初の質問をぶり返す。

 嘘をつき通すのに耐え切れなくなった直実は全ての事情を話した。

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます。

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