束の間の安らぎ【Aパート】
この作品は『エンターブレインえんため大賞(ファミ通文庫部門)』の最終選考まで残ったものを20余年の時を経てリライトしたものの続編となります。
「準決勝の相手が決まった。
栄村学院中等部だ。」
三浦が帰り支度をしている部員たちに告げた。
「順当な勝ち上がりですね。」
松浦が納得の表情を浮かべる。
「それはそうと、明日、試合出来ますか?
天気予報では雨だそうですよ。」
岡田が三浦に問う。
「順延の可能性は大いにある。
もし順延になったら松浦に連絡を入れる。
そこからは野球部の新しい連絡網で回してくれ。」
三浦は松浦にコピーの束を渡した。
「各自、取りに来い。」
松浦は取りに来た部員たちに次々に渡していく。
そうした中、直実は焦っていた。
(どうしよう‥‥。
取りに行かなかったら私がもう持ってるってバレちゃうし。)
直実には取りに行く以外の選択肢はなかった。
しかし、予想だにしなかった事態が起こる。
「鷹ノ目、日曜に渡した物と同じだぞ。」
三浦の台詞にビクッとする直実。
「え‥‥あ‥‥そうなんですか、あはは‥‥。」
(ごまかせたかな‥‥?)
「鷹ノ目~、連絡網を持ってるって、どうゆう事かなぁ?」
金森がジト目で見つめる。
ごまかし切れるはずがなかった。
「そ、それは‥‥なんちゅーか、本中華って感じでして。」
目が泳ぎまくる直実。
「部員の連絡先、知らなかったんじゃなかったっけ?」
藤本もジト目で見つめる。
「なのに、羽野を選んだ、と。」
竹之内も然り。
「ほ、ほら、私バカだから、もらってた連絡網に気付かなくて‥‥。
だって赤点常習犯だし‥‥。」
(これでどうかな?)
「赤点常習犯じゃしょうがねぇか。
俺もよくうっかりする事ってあるしな。」
(金森さん、ちょろくてよかった‥‥。)
直実は第一関門を突破し、ほっと胸を撫で下ろした。
しかし、次なる試練が襲い掛かる。
「でも、この連絡網がなくて、よく私の家に電話が掛けられましたね。
私、まだ先輩に電話番号、教えてなかったと思いますけど。」
希望が天然で問う。
(希望ちゃーん!?)
直実は焦る。
ひたすら焦る。
金森たちには電話帳の事は言えない。
どうにか、いい言い訳を思いつかなければならない。
しかも、今すぐ!
「粟田道場の看板に番号があったんだよ!」
直実は咄嗟に部屋にまだある看板を持ち出した。
「ああ、先輩が道場破りで持っていった看板ですか。
でも、電話番号はなかったような‥‥?」
「そ、それがどっこいあったんだよ。
裏に小さく‥‥。」
「裏にですか?
気付きませんでしたよ、私。
私もうっかりさんですね、あはは。」
直実は第二関門を突破し、再びほっと胸を撫で下ろした。
しかし、更なる試練が襲い掛かる。
「連絡網に気付かなかったとはどういう事だ?
観戦チケットを入れた封筒の中に入れたと伝えたはずだぞ。
――お前、ちゃんとチケットは使ったのか?」
三浦が圧を掛けてくる。
「はい、それはもうバッチリ。
いい勉強になりました!」
直実は笑みを浮かべて答えた。
「だとすると‥‥もしかして、俺が入れ忘れたのか‥‥?」
三浦が斜め左下を向き自問する。
「そんな事はありません!
ちゃんと入っていました!」
三浦を庇った事で、はっとする直実。
「やっぱ、しっかり持ってんじゃねぇか。」
金森がツッコミを入れると最初の質問をぶり返す。
嘘をつき通すのに耐え切れなくなった直実は全ての事情を話した。
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