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鉄腕ラリアット 第二部・咆哮篇  作者: 鳩野高嗣
第二十九章 ミニ合宿・初日
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ミニ合宿・初日【Cパート】

「待て、まだ誰も入るなよ。」


 煩悩(ぼんのう)魔王が浴室に入ろうとする松浦たちを制止した。


「どうしたんだ、親分?

 早く汗を流したいんだが。」


 松浦が(たず)ねる。


「毛が落ちてないか探すから、少し待っててくれ。」


「頭、洗えば毛ぐらい落ちるんじゃないっスか?」


 星野が冷めた目で見つめる。


「わかっちゃいねぇな、星野は。

 俺が欲しいのは縮れた毛なんだよ。」


「縮れた毛? 天然パーマ(てんパー)の子っていたっスか?」


「ホントにわかっちゃいねぇな。

 誰かコイツに説明してやってくれ。」


(イヤな役割だ‥‥。)


 金森と星野以外の誰もがシンクロした。


「陰毛だよ、陰毛。

 英語で言うとアンダーヘア。

 要するにアソコの毛。」


 誰も説明しないので(しび)れを切らした金森が自分で説明した。


「そんなもん探してどうするんだ?

 とっとと入るぞ。」


 松浦が浴室に入ると、


「いや、女の人のアソコの毛は大事なお守りになるって爺ちゃんから聞いた事があるぞ。

 親分は県大会の優勝を願って探してたんだんべ?」


 竹之内がいいように解釈してくれた。


「えっ?

 ‥‥ああ、そうそう! まさにそれだよ、うん、それ!」


「でも、まだ中学生っスよ?

 中学生にそんなもん生えてるんスかぁ?」


「ええっ!?」


 全員が星野を注目した。


(こいつ、まだ生えて‥‥。)


 星野以外が全員シンクロした。



 男子がバカな事をやっている一方で、女子は宿題を黙々とやっていた。


「先輩、この問題の解き方、教えてくれませんか?」


 希望(のぞみ)直実(なをみ)に化学の問題を()いてきた。


「どれどれ‥‥。」


 見た途端、直実はパニックに陥った。

 一年前にやってきたはずの問題がとてつもない難問に感じられた。


「えーと‥‥今年の一年は難しい問題をやってるんだねぇ。

 教科書、変わったのかなぁ、あはは‥‥。」


「ちょっと見せてくれるかしら。」


 割り込んできたのは長谷川だった。

 長谷川は希望にわかり易く説明をしながら解かせていった。


「ありがとうございます、長谷川さん!」


 希望は深く頭を下げた。


「‥‥いえ、困っている後輩がいたら助けるのが先輩の務めですから。」


 少し照れたようでもあり、直実に対するイヤミでもあるような複雑な口ぶりだった。


「それで、鷹ノ目さんの方は宿題終わりましたか?」


 長谷川は矢継ぎ早に直実に質問を投げ掛けた。


「はい! 今日は英語だったので楽勝でした。

 数学の方はユッコ‥‥神長さんに()いて何とか。」


「鷹ノ目さんに体育以外の得意科目があったなんて知りませんでした。」


「プロレスラーになって、アメリカとかカルガリーで修業なんて事があっても困らないように頑張りましたから。」


「なるほど。

 ちなみにカルガリーがどこにあるか知っていますか?」


「いやだなぁ、カルガリーはカルガリーって国ですよ。

 名前からして、ハンガリーの隣り辺りにあるんじゃないですか?」


「カナダ西部にあるアルバータ州の都市です。

 地理の勉強もしておくべきでしたね。」


 長谷川の言っている事は厳しかったが、いつものような冷たさはなかったように感じられた。


 ● ● ●


 そして就寝。

 布団の中から希望が直実に話し掛けてくる。


「ねえ、先輩。

 先輩の好きな人っているんですか?」


 希望は田上(たうえ)事件を知らなかった。


「野球部のみんなの事、大好きだよ。

 もちろん希望ちゃんも含めてね。」


「そうじゃなくって、異性で特定の人ですよ。」


「‥‥今はいないかな、そういうの。」


 どことなく寂しそうな直実の声。

 希望は何となく訊いてはいけない領域に踏み込んだ事を本能的に察した。


「じゃ、じゃあ、好みのタイプは?」


「嘘をつくのが苦手な人。

 外見は‥‥もうどうでもいいかな。

 欲を言えば、こないだも言ったけど、私より強い人。

 いろんな意味でね。」


「‥‥先輩、悟ってますねぇ。」


 希望には直実が枯れているように感じた。


「なになに、恋バナ?」


 裕子がそこに割り込んできた。



 三人のガールズトークは夜中まで続いた。

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、誠にありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
長谷川さんもいい先輩ですね。
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