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鉄腕ラリアット 第二部・咆哮篇  作者: 鳩野高嗣
第二十八章 体育祭に勝利の女神は微笑むか
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体育祭に勝利の女神は微笑むか【Aパート】

この作品は『エンターブレインえんため大賞(ファミ通文庫部門)』の最終選考まで残ったものを20余年の時を経てリライトしたものの続編となります。

「部活対抗リレーに私が!?」


 六月十四日の柔軟後、三日後に控えた体育祭に向けて緊急ミーティングがグラウンドで行われた。

 その席で直実(なをみ)が素っ頓狂な声を上げた。


「何か問題でもあるのか?」


 ホワイトボードの前に立っていた松浦が(たず)ねた。


「ありって言うか、モハメッド・アリって言うか‥‥。

 私、体育祭(たいくさい)で結構走るんですよね。

 体力が残ってなかったら足引っ張うちゃうかなぁ、なんて。」


「珍しく弱気じゃないか。

 体力なら大丈夫だと思うぞ。

 このところ、罰でグラウンド走らされているのはお前が一番だからな。」


「松浦さん、そういう事を真顔で言わないでください。」


 直実がむくれたような表情を浮かべた。


「ははは、すまない。

 だが、俺と岡田、星野、新井、そして鷹ノ目ならば優勝も狙えると思ったんだ。」


「私が誰よりも速いのは5メートルまでですって。

 あんまり期待されても。」


「ンな事言ったら、俺もベース間までしか保証出来ないっスよ?」


 星野も直実に便乗してくる。


「おいおい、二人とも。

 宮中(みやちゅう)野球部の新・一二番コンビが何を言ってるんだ。」


 岡田が二人を(たしな)めた。


「そう言えば星野が一番に()わるまで、ここの一番は誰だったんだ?」


 太刀川がふいに質問をかましてきた。


「ああ、俺だ。

 俺が出て岡田が送り親分が返す。

 これ以外の得点が全く見込めなかったからな、自然とそうなった。」


 松浦が感慨深げに答えた。


「ははは、それじゃ八幡(やはた)に負け続ける訳だ。」


 容赦なく太刀川が笑う。


「そうだ、私の代わりにあんたが走りなよ。

 ベースランニング、そこそこ速かったし。」


「そこそこで悪かったな。

 ベースランニングにはコツがあんだよ、コツが。

 リレーで走るんとは訳が違う。」


「まあまあ。

 ここは公平にくじにしたらどうかな?」


「岡田~。

 お前、自分が出たくねぇからって汚ねぇぞ!」


 太刀川がキレかかる。


「くすっ、バレたか。」


 岡田がペロッと舌を出した。


「とにかくだ!

 リレーはこのメンツで行くぞ。

 やるからには勝つ、これが俺の流儀だ。」


 松浦の強権発動でホッと胸を撫で下ろす羽野と金森の鈍足コンビ。


「まあ、やるからには勝つってのは私も賛同しますけど。」


 直実も覚悟を決めるしかなかった。


「ちなみに野球部はバトンの代わりにバットを持って走る。

 受け取り易いようにグリップを向けて次のランナーに渡してくれ。」


「ええーっ、何でバットなんスか?

 グラブの方が走り易いんじゃないスか?」


 星野が松浦の説明に不満を漏らした。


「誰が決めたか知らないが、毎年恒例になってるんだ。

 でも、野球部はまだマシな方だぞ。

 男子体操部は跳び箱の一段目を担いで走るんだからな。」


「決めた人、頭おかしかったんじゃないですか?」


 呆れたように希望(のぞみ)が左手の人差し指を頭の近くで回した。


「えーと‥‥ちなみに陸上部は何を持って走るんですか?

 ハンマー投げのハンマーとか?」


 伊藤が至極(しごく)真っ当な質問をした。

 松浦は答えるのを躊躇(ちゅうちょ)しながら、


「――リレーのバトンだ。」


 そう答えた。

 静寂が流れる。

 その直後、


「勝てっこないじゃないですか!?」


 新入生部員全員がツッコミを入れた。


「だよね。

 それには僕も同意見だよ。」


 岡田が同調する。


「おっ、いい事、思いついたぜ。」


 太刀川が声を上げた。


「で、どんな悪いコト思いついたワケ?」


 直実は辛辣(しんらつ)だ。


「おい、人の事を悪の権化みたいに言うな!」


「カンニングの前科者だって事、忘れてないかんね。」


「太刀川も鷹ノ目も、それ以上いがみ合うならグラウンド十周させるぞ。」


「まあまあ、松浦。

 まずは太刀川のアイディアを聞こうじゃないか。」


 岡田が松浦をなだめる。


「要はバットなら何でもいいんだろ?

 (うち)にまだガキの頃に使っていた素振り用の竹バットがある。

 重さも五百グラムちょっとと軽めだ。

 これなら対抗出来んじゃねぇか?」


「グレーゾーンだがハンディキャップを埋めるにはいい手かもしれない。

 練習では金属バットを使い、本番ではその竹バットを使おう。」


「ま、あんたにしちゃマトモなアイディアじゃない。

 バットの代わりにチョコバットにしようなんて言ったら即ジャーマンだったのに。」


「うっせーよ、プロレスバカ一代が。」


「何をー!?

 あんたこそ野球バカ一代じゃない!

 人生引く野球イコールゼロのクセに!」


「あンだと、コラ!

 ノシ付けて返してやらぁ、そのセリフ!」


「二人ともバットを持ってグラウンド十周だ!」


 松浦の雷が落ち、二人はバットを持って走らされた。

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、誠にありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ありましたよ、うちの中学にも、部活対抗リレー。 当時を懐かしんで読ませて頂きました。
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