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鉄腕ラリアット 第二部・咆哮篇  作者: 鳩野高嗣
第二十五章 焼肉
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焼肉【Aパート】

この作品は『エンターブレインえんため大賞(ファミ通文庫部門)』の最終選考まで残ったものを20余年の時を経てリライトしたものの続編となります。

「やったぁ、焼肉だあっ!

 先生、ありがとう!」


 直実(なをみ)が夕暮れのタフネス太郎の店前ではしゃいだ。


「約束した以上は守らなければな。

 みんな、今日はよく頑張ってくれた。

 県大会出場のささやかな褒美として、九十分食べ放題のコースをおごらせてもらう。」


 三浦が部員たちを前に語った。


「太田行きのバスで行けたんですね。

 いい情報が手に入りました。」


 和田がニッコリ笑って言う。


「食い放題だ!

 食って食って食いつくすぞ!」


 金森がガッツポーズを取る。


「あ~あ、太刀川(たちかわ)さん、ホント勿体ない事をしたっスねぇ。

 焼肉も食い逃すなんて。」


 星野が嘆く。

 部員がワイワイしている中、三浦は咳払いを一つ――


「これから入店するが、一つ言っておく。

 食べ放題だからといってドカ食いはするなよ。

 明日は決勝戦だ、その事を忘れるな。」


「はいっ!」


 ● ● ●


 などと返事をしたものの、やはり食べ盛りの中学生。

 いざテーブルに就くと、群れなす餓鬼の如く、我先にと肉を取り皿の上に山盛りにする。


「先輩は何にします?」


 希望(のぞみ)が肉と野菜をバランスよく盛った取り皿を持ちながら直実に(たず)ねた。


「私はとにかく牛を‥‥ロース、カルビあたりをがっつりと!

 肉を付けるには肉っきゃないよね。

 目には目を、肉には肉をってね!」


 さすがに本当の理由までは言えない。


「ミノにタン、ロース‥‥ミノタウロス完成っス!」


 星野が牛肉で役を作った。


「俺はこのサシの入ったワイルドカットステーキってのをいくぜ!」


 金森は豪快にトングで一度に大量の肉を取る。


「この肉、持ち帰りは有料なのかな‥‥?」


 松浦がしげしげと盛った肉を見ながら岡田に問う。


「ははっ、気持ちはわかるけど持ち帰りはダメだと思うよ。」


 岡田は松浦の家庭の事情を知っているだけにツッコミが入れられなかった。


 ● ● ●


「一、()ぃ、三‥‥八皿かぁ。

 結構食べたなぁ。」


 直実が感慨深げに食べた皿を数えた。


「先輩、まだ三十分しか経っていないのにペース早過ぎです。

 あとの一時間、どうするんですか?」


 希望がワイルドに食べていた直実に問う。


「まだまだ食べるに決まってんじゃない!」


「ええっ、まだ入るんですか!?

 ――ちゃんと野菜やフルーツも食べてくださいよ?」


「あはは、希望ちゃん、なんかお母さんみたい。」


 直実が笑うと希望が膨れる。


「だって先輩、ハラハラする事ばかりするんですもん。

 道場破りに始まって、八幡との練習試合のジャーマン・スープレックス。

 白鳳(はくほう)戦では野次った人にボールをぶつけるし。」


「ああ、それはちょっと反省。」


「『ちょっと』ですか!?」


「もとい、海より深く反省~。

 ――って事で、私、食料調達に行ってくるね!」


 直実はそう言うと席を立つ。



「あ、鷹ノ目さん、食べてる?」


 取り皿にがっつりと盛った肉の上に更に肉を盛っている羽野が話し掛けた。

 これはもう食べ物というより餌の領域だ。


「うん、食べてるよ!

 ‥‥羽野くんほどじゃないけどね。」


「今、親分のテーブルのチームとどっちが多くの皿を食べられるか競争してるんだよ。」


「競争って皿の数なんだよね?

 そんなに盛ったら不利なんじゃない?」


「ああ、そっか。

 空腹だったから気がつかなかったよ、あはは。」


 羽野は大らかに笑った。


「じゃあ、対決に戻るから、俺。

 鷹ノ目さんもたくさん食べなよ。」


「う、うん‥‥そうだね。」


 直実は山盛りの肉の皿を三皿、赤いトレイに乗せて運んでいく羽野に圧倒された。


(女子プロレスラーになるなら、あれぐらい食べないとなぁ‥‥。)


 遠い道のりにも思えたが、千里の道も一歩からという(ことわざ)もある。

 直実もがっつり肉を盛り始めた。

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、誠にありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 中学生の焼肉光景がリアルだと思いました。
[良い点] がっつり肉を盛った羽野くんの姿が目に浮かびました。 私も中学生の頃が一番食べたかなぁ。 [一言] 大げさなんですけどリアル。その微妙な線引きが上手いですよね。
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