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鉄腕ラリアット 第二部・咆哮篇  作者: 鳩野高嗣
第二十二章 それぞれの役割
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それぞれの役割【Aパート】

この作品は『エンターブレインえんため大賞(ファミ通文庫部門)』の最終選考まで残ったものを20余年の時を経てリライトしたものの続編となります。

「ストライーク! バッターアウッ!

 ゲームセット!」


 六月六日、松浦-加藤-直実(なをみ)の完封リレーで宮町(みやまち)中は準々決勝を勝ち進んだ。

 これで準決勝に進出する四チームが出揃い、対戦カードが決まった。


 準決勝第一試合

 八幡(やはた)中学(深谷(ふかや)市)-宮町(みやまち)中学(熊谷(くまがや)市)


 準決勝第二試合

 彩央(さいおう)大附属中等部(吹上(ふきあげ)町)-小前田(おまえだ)学園中等部(花園(はなぞの)町)



「よっし、あと一つ勝てば焼肉だーっ!」


 帰りのバスの中で直実が歓喜の声を上げる。


「それと県大会進出だね。」


 羽野がすかさずフォローを入れる。


「しかし、相手が八幡とは厄介(やっかい)ですね。」


 和田がこぼした。


「リベンジの機会としちゃあ最高だろ?

 八幡を倒して焼肉食おーうって!」


 金森が和田の肩をポンと叩いて豪快に(さと)す。


「しっかし、今日のダブルヘッダー、四番が大ブレーキだったっスね。」


 星野が羽野を責めた。


「‥‥みんな、ゴメン。

 全打席空振り三振じゃ本当に申し訳ないとしか言えないよ。」


 羽野は(こうべ)を垂れた。


「あーあ、太刀川さんがいてくれたら、もっと楽勝だったんスけどねぇ。」


 星野は調子づいて言葉を続けたが、次の瞬間、直実にV1(ブイワン)アームロックを()められる。


「カンニングしたヤツなんかと比べるなっての!」


「いてててて‥‥ギブギブ!」


「こらそこ! バスの中で何をやってる!?

 帰ったらグラウンド十周だ!」


 二人に三浦の雷が落ちた。


 ● ● ●


 宮町中に着いてグラウンドを走らされる直実と星野。

 この二人の他に、羽野、松浦、加藤が三浦に居残りを命じられた。


「羽野、お前はプロテクターを着けてミットをはめて打席に立て。」


「えっ? あ、はい。」


 羽野は三浦の指示に従った。


「松浦は加藤のリードに合わせて球を投げろ。

 羽野はバットを思い切り振り切る感じで投げられた球を補れ。

 加藤は羽野に球を捕らせないようにリードしてみろ。」


「はい!」


 三人は声を揃えて返事をした。


 フォン!

 バスッ!


 初球、羽野のミットを下を松浦のカーブが通過する。


「羽野、球をしっかり見ろ。」


 三浦は指示を与える。


「はい!」


(バットほどのリーチはないから、加藤さんは当然外角に球を要求してくるはず。)


 羽野は外角低めにヤマを張った。

 だが、来たのは内角低めのストレート。


 ビシッ!


 羽野の左腕に軟球が当たった。


「何をやっている!?

 ヤマを張るのとヤマ勘で動くのとでは意味が違うぞ!」


「はい!」


 羽野は考える。

 バットで打つ事とミットで捕る事の違いを。


(そもそもキャッチャーは何で変化球を捕れるんだろう?

 ミットの大きさとバットの太さとはあんまり関係ないよなぁ‥‥。)


 加藤のリードが冴えわたる。

 松浦の制球力も球威も以前の八幡中戦の時より格段に増している。

 しかし、羽野だけは何の成果も得られない。

 そして、ミットにかする事も出来ないまま三十球が過ぎた。


「よし、みんな、今日はもう上がれ。」


「はい!」


「羽野、八幡との試合は次の日曜だ。あと三日しかない。

 それまでに今やった練習の成果を出せ。

 いいな?」


「‥‥はい。」


 羽野は四番の重責に押し潰されそうになった。

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、誠にありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 四番の重圧感がよく出ていると思います。
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