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鉄腕ラリアット 第二部・咆哮篇  作者: 鳩野高嗣
第七十二章 夢の入り口
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夢の入り口【Bパート】

「‥‥席、座ってもいいかな?」


 通路を塞いだ状態になっていた直実(なをみ)希望(のぞみ)は背後からの羽野(はの)の声にびくっと反応した。


「ああ、お邪魔だったね、ごめんごめん。

 ――じゃ、そーゆーコトで。

 行こ、希望(のぞみ)ちゃん。」


 直実は作り笑顔で退散しようとしたが、


「話の途中みたいだったし、よかったらこの席で肉を焼いたら?

 この席、俺と和田、新井の三人しかいなかったから二人増えても問題ないよ。」


 事情を知らない羽野の台詞(せりふ)に直実と希望は逃げ場を失い固まった。


「じゃ、じゃあ、お邪魔します‥‥。

 バランス的に私が羽野くんの隣り、でいいのかな?」


 小柄で細身の直実はそう言うと奥の席に座った。


「じゃあ、私は新井さんの隣りで。」


 希望が座る。

 そして羽野は直実と少し離れて座った。


「さて、作戦の前に状況整理と好きになった理由を聞かせてもらおうか。」


 尋問風に和田が新井に問う。


「あ、それ聞きたい!」


 直実と希望がユニゾンで反応する。


「えーと‥‥何の話?」


 一人乗り遅れた羽野がカルビをトングに挟みながら(たず)ねた。


「お前ら、面白がってるだろ、絶対!」


 新井が赤面して怒る。


「面白がってなんかいない。

 ただ、データが足りないんだよ、現状では。」


 和田は至って真剣だ。


「俺はカルビが一番好きだけど、新井は何が好きなんだよ?」


 羽野は精一杯空気を読んで新井をフォローしたつもりだが、見事に空振りした。


「ちょっと羽野くん、今は新井くんとアケについて語ってるんだよ。」


 直実が少し叱り口調でツッコミを入れた。


「えっ‥‥そうだったんだ。

 俺、てっきり焼肉の話だとばかり‥‥。」


「私はつくねハンバーグかな。

 カルビもロースも好きだけどね。」


 しかし、ツッコミを入れたはずの直実も肉の話に乗っかってしまう。


「直実先輩、真面目に。」


 今度は希望がしっかりとツッコミを入れた。


「はぁーい。」


 直実がてへっという表情で返事をする。


「では、新井さん、どうぞ。」


「理由は‥‥って、言える空気じゃないだろ、粟田(あわた)さん!」


「じゃあ、少し食べてから続きを聞こうか。」


 和田が仕切った。


 ● ● ●


「‥‥‥‥あの、そっちの二人、いつまで食べてるんですか?」


 餓鬼のように焼肉を食べまくる直実と羽野に、呆れたように希望が(たず)ねた。

 和田も希望もそれなりの枚数の皿が積み上がっているが、直実のはタワーに、羽野に至ってはタワーが二つ出来上がっていた。


「ん? ああ、そうだったね。

 そろそろ本題に入ろっか。」


 羽野はそう言うと、皿の上に一枚残っていた上ミノを食べ切った。


「――で、アケのどこに惚れちゃったわけ?」


 興味津々の顔で直実が(たず)ねた。


「‥‥一緒にいて楽しかったってのが一番かな。」


 新井は重い口を開いた。


「うんうん、それでそれで?」


 希望が更に先を聞こうとする。


「可愛いし、マッシュルームカットも似合ってるし、声もいいよね。

 それから‥‥」


 新井の打ち明け話を聞いている全員が赤面した。


「ストップ。

 もうそこまででいい、それは。」


 和田が制止させた。


「今のでお腹いっぱいになったよ、俺。」


 羽野が軽く左手で自分の腹を二回叩いた。


「私は逆に今のでごはん何杯もいける感じかな。」


「直実先輩、ホントにごはん取りに行っちゃ駄目ですからね。

 今は新井さんの現状報告とこれからの対策を練る時間なんですから。」


「は~い。

 ――で、どこまで進んでんの?

 手とかつないだ?」


 直実の質問に新井は首を横に振った。

 間髪入れずに今度は希望が質問を投げ掛ける。


「下の名前で呼んでるとか、あだ名で呼んでるとかはどうですか?」


「それもまだだよ、『新井くん』と『山吹さん』のまんま。」


「ちゃんとデートとかしてるのか?」


「あのなぁ、全国大会までほとんど練習漬けだったのは和田も知ってるだろ?」


 新井が和田にツッコミを入れた。

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