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鉄腕ラリアット 第二部・咆哮篇  作者: 鳩野高嗣
第六十七章 アクシデント
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アクシデント【Dパート】

()(ざか)しい手がこの俺に二度通用すると思うなよ?」


 景清(かげきよ)は小声で羽野(はの)に話し掛けた。


「わかってます。

 ――それより、吉野さんの手、大丈夫でしたか?」


 お人好しの真面目男が景清に話し返す。


「‥‥お前にゃあ関係ねぇ。」


「そりゃあまあ、そうなんですけど。」


 羽野はそう言い終えるとミットを外角低めに構えた。


「うおおおおおっ!」


 バス――――ン!


「ストライーク!」


 景清は初球を見逃した。


(百六十二、三ってところか‥‥。

 球数が少ないとは言え、よくここまでこのスピードが続く。

 それに下手にバットを出せば割れる威力‥‥このキャッチャーの手も異常な頑丈さだ。

 『リーサル・ウェポン』ってのはこのバッテリーのような事を言うんだろうな。)


 景清は心の中でつぶやいた。


 続く二球目、羽野は内角低めにミットを移した。

 (うなず)く直実はセットポジションから鉄腕ラリアットを繰り出す。


「うおおおおおっ!」


 キ――――ン!


 百六十七キロの球に景清はバットを当ててきた。

 打球はバックネット後方に大きく打ち上ったが。


(当てるのか、アレを!?

 しかもバットを割らずに‥‥!)


 羽野は景清のポテンシャルに驚愕(きょうがく)した。



「あれが景清(かげきよ)光朗(みつお)というバッターだ。」


 滝口(たきぐち)が腕を組み直してベンチの選手たちに言い聞かせた。


(よもやここまでの男になるとは、この俺にも予測出来なかった。

 ――俺が景清と知り合ったのは、まだアイツが小三の時だった。)


 ● ● ●


 カキ――――ン!


 バッティングセンターで『ホームラン』と書かれた的を連発で当てる景清。


(あの噂は本当だったのか!)


 滝口はホームランを連発する『愛子(あやし)神童(しんどう)』の噂を聞き、話半分で視察に来ていた。

 そして、汗を流し終えた景清に話し掛けた。


「君、(とし)はいくつ?」


「九歳だけど、おじさん誰?」


「俺は白鳳(はくほう)学院中等部で軟式野球の監督をしている滝口という者なんだけど、君の噂を聞いて来たんだ。」


「俺の噂?」


「どんな球でもホームランにする神の子がいるってね。」


「人違いじゃない?

 俺、どんな球でも打てるワケじゃねぇし。」


「だって、さっき全球、すごい当たりだったじゃないか。」


「‥‥でも、静の球はホームランに出来なかった。」


「静? 君のライバルなのかい?」


「ライバルっていうか、幼馴染っていうか‥‥。」


 景清は視線を逸らして答えた。


「白鳳学院に来ないか?」


「えっ?」


「初等部‥‥つまり小学校だな。

 そこには軟式野球部がある。

 俺は君みたいな子を探していたんだ。

 天性の四番バッターをね。」


「俺に転校しろってこと?」


「‥‥そういう事になるかな。」


「‥‥‥‥一つだけお願いがあるんだけど。」


「それさえ聞けば考えてくれるのかい?」


 滝口の問いに一拍置いて(うなず)く景清。


「言ってごらん。」


「静と一緒に転校したい。

 アイツと一緒に野球がもっとうまくなりたい!」


 ● ● ●


(吉野がまさか女子だとは思わず承諾してしまったが、結果的には最高の形となった。)


 心の中でそうつぶやくと、滝口は再び腕を組み直した。

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます。

1990年という時代なので、ストライクとボールのコールの順番は現代(2023年)とは違っています。

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