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鉄腕ラリアット 第二部・咆哮篇  作者: 鳩野高嗣
第六十六章 秘策
222/264

秘策【Aパート】

この作品は『エンターブレインえんため大賞(ファミ通文庫部門)』の最終選考まで残ったものを20余年の時を経てリライトしたものの続編となります。

「いやぁ、参ったね、どうも。」


 三回表、ファーストゴロに倒れた竹之内(たけのうち)が左打席に向かう直実(なをみ)にこぼした。


「どんな感じでした?」


 直実が竹之内に(たず)ねた。


「なぁんか、バットに当てたっつー気がしねぇんだいね。

 上手く(てのひら)の上で転がされてるっつーか、打球をコントロールされてるっつーか。」


「打球をコントロール?

 そんな事、出来るんですか?」


「いやまぁ、なんとなくそう感じただけだよ。

 まるで操り人形にでもされたかのようにさぁ。」


「はあ‥‥。」


鷹ノ目(たかのめ)(ツー)ストライクになる前に何とかした方がいいぞ。」


 竹之内はそう告げるとベンチへ走って()った。



(こいつには足がある。

 転がさせるんじゃないぞ、吉野。)


 有綱(ありつな)は左打席に立つ直実をチラリと見てサインを出す。

 (うなず)く静は初球のモーションに入った。

 そしてその初球はど真ん中に入ってくるスライダー。

 どう見ても失投だった。


(ツー)ストライクの前に何とかしろって事は一球目から打ってもいいんだよね!)


 直実は思い切りバットを振り、軟球をミートする。

 が、想定外に回転が掛かっていた為、打球は高く(あが)ってしまう。


「オーライ!」


 直実の打球は一塁手(ファースト)江田(えだ)のミットの中にすっぽりと納まった。


「ああっ、もうっ! いい球だと思ったのに!」


 一塁(ファースト)ベース上で悔しがる直実に、


「あの冷静な鉄仮面が失投なんかするかよ。

 お前は打たされたんだよ、思い通りにな。」


 江田が半笑いの表情でそう告げた。


「思い通りに?」


 ベンチへ引き上げる静を見つめながら直実がつぶやく。

 直実にはどうしても納得がいかなかった。

 五月の時の熱い投手戦の続きを思い描いていた直実にとって、この試合の静は別人に思えた。


「吉野さん!

 また練習試合の時のように三振、取り合おうよ!」


 直実が声を掛ける。


「アウトを取り合う、の間違いではなくて?」


 立ち止まった静はおもむろに顔を直実に向けて答えた。

 その冷たい目の中に闘志を感じ取った直実は、自身の背中に何かが走ったのを感じた。


「何を敵と話している。

 とっととベンチへ戻るぞ。」


 景清(かげきよ)がグローブで静の背中を叩く。


「はい。」


 再び走り出す静を見て、直実も三塁側のベンチへ向かって全力で走り出した。



「鷹ノ目、羽野(はの)。」


 直実がベンチに戻るや否や三浦が鋼鉄バッテリーに声を掛けた。


「はい、なんでしょう、先生。」


 直実が問う。


「おそらく全力の鉄腕ラリアットに対応出来るバッターは四番の景清、五番の駿河(するが)、六番の江田の三人だけだ。

 他のバッターは力でねじ伏せろ。

 自分たちの本来のスタイルを貫くんだ。

 付け焼刃の緩急が通じたのは前の回だけと思え。」


「は、はい!」


 ● ● ●


 三回裏、白鳳(はくほう)学院の攻撃は一番の金売(かねうり)からだった。

 しかし、そんな好打順も、


「ストライーク! バッターアウト!

 チェンジ!」


 全力の鉄腕ラリアットの前には三者連続三球三振。

 直実は意気揚々とベンチへ戻って()った。

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます。

1990年という時代なので、ストライクとボールのコールの順番は現代(2023年)とは違っています。

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